13.グリフォニア王国へ
【人魚の湖】
光「急に二人でどこ行ったのかと思いましたよ」
拓弥「悪い、ちょっとな……。ここか?」
キール「ああ。この湖の底に“入口”がある」
皆、ノラから貰ったスキューバダイビング用の装備を手に取った。
光「本当に湖の底に行くんですか……?」
麻里奈「怖がってんの? 光くん♪」
光「いえ、別に……ちょっと冷たいかなって……!」
キール「行くぞ。あまり時間はない」
バシャン! キールが真っ先に飛び込む。続いてジール、光、麻里奈が次々に湖へと身を沈めていった。
最後に残ったのは、拓弥と雪。
拓弥「……行こう」
雪「この先も敵が待ち構えてるかもな。ちゃんと用心しろよ」
それだけを交わし、二人も静かに水の中へと潜っていく。
【人魚の湖・水中】
皆、どんどん奥へと潜り続けていく。
水は次第に暗く、冷たく、静かになっていく。
やがて、淡い光の中に巨大な影が現れた。
──水中に、まるで竜宮城のような美しい城が浮かび上がってくる。
光「(竜宮城……?)」
光はその幻想的な光景に、思わず心の中でつぶやいた。
キール「(あそこに、リーナがいる)」
キールは皆に手で合図を送り、城へと進む。
皆も頷き、静かにその後を追った。
──しかし、城に近づいたその時。
突然、周囲の水流がざわめいたかと思うと、人魚たちが現れた!
人魚たちはみな、鋭い槍を手に構え、警戒心をあらわに取り囲んでくる。
老婆の人魚「貴様ら、何者だ!」
キールはすぐに両手を広げ、敵意がないことをジェスチャーで示す。
だが──
老婆の人魚「ここは人間共が来るべき場所ではない! すぐに立ち去れ!」
キールが尚も何かを伝えようとした、その瞬間──
老婆の人魚「やりなさい!」
命令と同時に、人魚たちが突進してきた!
鋭い水流と槍の衝撃で、皆の酸素ボンベが破損する。
水が肺を満たし、意識が遠のいていく──
その時。
???「──バブル」
透き通るような声と共に、ふわりと泡が現れた。
その泡に包まれた瞬間、呼吸ができるようになり、声までもが水中に響くようになる。
泡の中に立っていたのは、美しい人魚の少女だった。
リーナ「やめなさい。」
彼女──リーナが、一喝する。
人魚たちは一斉に動きを止めた。
キールは咳き込みながら、息を整える。
キール「……リーナ。久しぶりだな」
リーナ「キール……!
この者たちは、私の“友人”です。城へ案内してあげて」
リーナの言葉に、人魚たちはようやく警戒を解き、静かに隊列をほどいた。
こうして一行は、湖の底の人魚の城へと招かれることになる。
【人魚の城】
美しい貝殻と珊瑚で作られた廊下を進み、一行は広間へと案内された。
泡の中の空間はどこか幻想的で、声も普通に届く不思議な空気が満ちている。
リーナ「ごめんね。みんな今ちょっとピリピリしてて……」
老婆の人魚「先ほどは、大変失礼をいたしました。私は姫様付きの女官、マリアと申します」
キール「気にするな。こっちも突然押しかけた身だ」
光「……すごい。立派な城ですね……!」
リーナ「ふふ、でしょ? 自慢のお城なの」
(皆が感心する中で、ジールはやや警戒した表情のまま沈黙している)
リーナ「あれ? ジールくんじゃない。久しぶり!」
ジール「子ども扱いはやめろ」
リーナ「相変わらず可愛くない子ねぇ~」
キール「……それより、紹介しよう。そこにいるのが、リーダーの生まれ変わり──拓弥だ」
リーナ「えっ!? リーダーなの!? ほんとに!? ……覚えてる? 私のこと」
拓弥「……すまない。まだ……思い出せないんだ」
リーナ「えぇ~~!? うっそ……! 私を助けてくれたんだよ? 一緒に旅もして……エキドナも倒したのに!」
キール「リーナ、あまり詰めるな。こいつ、まだ記憶が完全じゃねぇんだ」
リーナ「うーん……そっかぁ。ちょっと寂しいけど……しょうがないね」
拓弥「……ごめん」
キール「さっき、城の警備が厳しかったが……何かあったのか?」
リーナ「……うん。実はね、城の家宝──“トライデント”が盗まれたの」
一瞬、空気が張り詰める。
雪「トライデント?」
リーナ「この城に代々伝わる神具でね。人魚族にとっては象徴みたいなものなの。
……それが、つい数日前に忽然と消えたの」
キール「犯人の目星は?」
リーナ「……実はヴァンパイアの仕業だと思ってる」
キール「何かあったのか?」
リーナ
「確証はないの。でもね、事件の夜──“誰か”が城の中にいたの」
リーナ
「その姿を見た瞬間、急に意識が遠のいて……気がついたらベッドの上だった」
リーナ
「見たのが夢だったのか、現実だったのか……今でも分からない」
雪
「侵入者を見たのか」
リーナ
「うん……」
リーナ
「暗くてよく見えなかった。でも黒い服を着ていて……すごく冷たい雰囲気だった」
リーナ
「それだけは覚えてる」
(場の空気が張りつめる)
キール「それは……十中八九、ヴァンパイアだな。」
リーナ「やっぱり……そうなんだ」
キール「俺たちはこれから、ヴァンパイアを倒しに行くつもりだ。リーナ、お前の力を貸してくれないか?」
リーナ「……もう一度、一緒に旅かぁ。でも私……」
マリア「姫様」
リーナ「マリア……?」
マリア「どうか、行って来てください。姫様がここに残って心を痛めるより、動いてくださった方が皆の励みになります」
リーナ「でも、城のことが──」
マリア「大丈夫です。姫様の留守の間、命を懸けて城を守ってみせます。だから……“トライデント”を取り戻してきてください」
リーナ「……ありがとう、おばあちゃん」
【人魚の湖・入り口】
──バシャン。
次々と湖面を割って、一行は地上へと戻ってきた。
リーナ「……久しぶりの地上、ね」
光「えっ?」
先ほどまで尾びれだったリーナの下半身が、今は人間と同じ足に変わっている。
その姿を見て、光は思わず声を漏らした。
リーナ「ああ、気にしないで。おばあちゃん──マリアが言ってたの。
大昔、人魚も地上に住んでいた時代があったんだって。
だから地上に上がると、こうして自然に足に変わるのよ。水の中に入れば、また尾びれに戻るけど」
光「そんなことまでできるんですね……!」
リーナ「最初は地上を歩くの、本当に大変だったけどね。今はもう慣れたわ」
キール「よし、これで仲間も揃ったな。グリフォニア王国を抜けて、一直線にヴァンパイアの領地を目指すぞ」
拓弥「その……グリフォニア王国って、どこにあるんだ?」
リーナ「ふふ、すぐそこよ。この森を抜けた先。昔、あなたたちと別れた場所──でもあるの」
拓弥「別れた?」
キール「リーナ」
リーナ「ごめん…気にしないで」
一瞬、沈黙が流れる。風が木々の葉を揺らす音だけが、会話の代わりに響いていた。
雪「(………何があったんだ?……何故隠すんだ?)」
ジール「……とにかくグリフォニアに行こう。」
拓弥「ああ、ごめんな全然、思い出せなくて」
リーナ「本当に……気にしないで」
【オパールの町】
光「ここは?」
リーナ「ここは『オパールの町』、グリフォニア王国に属する町よ」
麻里奈「なんかボロボロ……」
光「王国所属とは思えないですね……」
キール「チッ、グリフォニアに入るにも検問かよ……厄介だな」
リーナ「本当……あそこ、かなり物々しいね」
雪「どうやら王都に入るには“王国許可証”が必要みたいだな。普通の旅人じゃ通してもらえない」
拓弥「どうする?」
ジール「強行突破は……避けたいな。王国の騎士とやり合うのはまだ早い」
麻里奈「じゃあ裏道とかないの?」
キール「あるにはあるが……使えるかどうかはわからねぇ。昔と状況が違えば、通じない可能性もある」
リーナ「もしかしたら……知り合いがいるかも。昔、王国にいたとき助けたことのある人。もしかしたら力を貸してくれるかも」
雪「その人は信じられるのか?」
リーナ「今はそれに賭けるしかないよ」
キール「でも、どうやって中のそいつにコンタクトを取るんだ?」
リーナ「そうよね…私たちに伝手があるわけじゃないし…」
ゴッソッ。
拓弥「あっ、ごめん。大丈夫か?」
拓弥は通りすがりの小さな子どもとぶつかった。
子ども「………………」
子どもは無言のまま、素早く人混みに紛れていく。
拓弥「アレ?……財布がない!」
雪「……さっきの子、スリだったんじゃないか?」
拓弥「くそっ、ちょっと追いかけてくる!」
拓弥が人混みに駆け出していく。
キール「おい、待て光雷!……チッ、行っちまった」
【オパールのスラム街】
拓弥「ここは……うっ」
拓弥は急に頭痛がしフラッシュバックが起きた。
【過去】
光雷「ジールよりも小さな子供がこんな環境で暮らしてるのか」
ヴォン「俺はいつか立派風車を作ってこの町を豊かにするんだ!」
【現在】
拓弥「風車…」
そこにはたくさんの風車があった
ヴォン「エールこのお金はどうしたんだ」
エール「拾ったんだ!」
ヴォン「嘘つけ!盗んだんだろ」
拓弥「…………」
エール「げ!」
ヴォン「ん?」
ヴォンは後振り返り察した。
ヴォン「この人から取ったんだな。すいません。内の子が…」
拓弥「いや、このたくさんの風車は君が作ったの?」
ヴォン「え?まあはい私が作りました。」
拓弥「ヴォン?」
ヴォン「何処かで私とお会いしましたか?」
拓弥「いや気にしないでくれ」
ヴォン「私はヴォンです。もしかして違う町でも風車のヴォンは有名なのかな?ハハ」
ヴォンは笑った
ヴォン「たくさんの風車を作って私の子供頃よりはここも豊かになったのですがまだまだですね。でも今度王国に巨大風車の建設が決まって今もその設計図を作ってます。
良ければ見ますか?
どうぞ中に入って下さい。」
ヴォンの家に通された。
ヴォン「このデカい風車建てばグリフォニア王国だけでなくオーパルの町もしっかり電気が供給され豊かになるはずです。」
【ヴォンの家・作業部屋】
室内には図面や機械の部品があちこちに広がり、手書きの設計図が丁寧に壁に貼られていた。中央のテーブルには、大型風車の模型が置かれている。
ヴォン「この模型は王国に提出する予定のものです。建設が認められれば、風車のエネルギーで水の循環や照明、それに……医療設備の電力もまかなえるようになるはずなんです」
拓弥「すごいな……あの頃の夢を、本当に叶えかけてるんだな……」
ヴォン「……え?」
拓弥「あっ、いや……その……どこかで似た人を見た気がして」
ヴォン「そうですか?」
(ヴォンが少し照れたように笑う)
エール「おじさんたち、王国に行きたいって言ってたよね?」
ヴォン「ん……そうだ、君たち、王国に用事が?」
拓弥「ああ。実は王国の中に連絡を取りたい相手がいて……けど検問が厳しくて入れなくてさ」
ヴォン「それなら、ある方法があります」
拓弥「方法?」
ヴォン「……私には王国に入る許可証があります。もし良ければ、設計補助の同行者という形で、あなたと数名まで一緒に入ることができるかもしれません」
拓弥「本当か……?」
ヴォン「ただし、人数や装備品は厳しく制限されるし、あくまで“技術関係者の同伴者”って形です。警備が厳しいから……目立たないようにお願いしますね」
拓弥「十分だよ。ありがとう、ヴォン。すぐ仲間に伝えてくる」
【オパールの町】
拓弥「おーい! こっちこっち!」
麻里奈「あ、いたいた。どこ行ってたのよ」
拓弥「この人、ヴォンっていうんだけど、王国の中に案内してくれるって」
キール「お、見覚えある顔だと思ったら……あん時の悪ガキじゃねぇか!」
ヴォン「……あなたは。あれから20年も経つというのに……まったく変わっていないとは」
キール(ニッと笑って)「リーナの次に長生きする種族だからな。年くっても若く見えんのさ」
ヴォン「あなた方に再びお会いできて、しかも今度は案内役として……光栄です。
では、こちらへどうぞ」
ヴォンが先導し、一行は検問所へと向かう。大きな門の前では、重厚な鎧に身を包んだグリフォニア騎士団の衛兵たちが厳しく目を光らせていた。
衛兵A「止まれ。通行証を見せろ。」
ヴォン「私です。ヴォン・クレア風車計画の責任者。彼は私の同行者でります。」
衛兵B「ただちに通してください!」
門がゆっくりと開いていく。軋む音と共に、グリフォニア王国の街並みがその向こうに広がっていた。
麻里奈「すごい……こんな大きな門、見たことないよ」
拓弥「やっぱり本物の王国って感じだな……」
キール「変わってねえな。ここの空気も、人間たちの顔も。」
ヴォン「ようこそ、グリフォニア王国へ。おそらく、あなた方の旅にとって重要な一歩になるはずです。さあ、行きましょう。」
そして一行は、ヴォンに導かれながら王都の中心部へと歩き出した──。




