31.最後の闘い
【ヴァンパイア城・最上層/第二形態・総力戦】
ドクン――
空間に、心臓の音が響く。
ヴァンパイア
「ならば――」
ゆっくりと、腕を広げる。
ヴァンパイア
「こちらも、“王”として応えよう《妻への祈り(ノクターン・オブ・ラメント)》」
ドクン――
ドクン――
空間が、脈打つ。
血が、集まる。
一点に。
そして――
“裂けた”。
ズグァァァァァッ!!!!
血が爆ぜる。
そこから現れたのは――
“怪物”。
雪
「……なんだ……あれ……」
光
「……嘘…ですよね……」
背に広がる、血の翼。
全身を走る、赤い亀裂。
そして。
胸の奥で――
鼓動する“核”。
ドクン。
ドクン。
拓弥
「……心臓……?」
ヴァンパイア
「美しいだろう?」
声が、重なる。
二重に響く。
ヴァンパイア
「これが“王の姿”だ」
腕を広げる。
血が、周囲に渦巻く。
拓弥
「来るぞ!!」
次の瞬間。
消えた。
雪
「……消え――」
遅い。
ズバァッ!!
光
「がっ!!」
一撃で吹き飛ぶ。
ジール
「速すぎる……!!」
ズバァッ!!
麻里奈
「きゃあっ!!」
肩を裂かれる。
光
「くそっ!!」
リーナ
「私が止める!!《水牢葬》」
水で拘束を試みる。
だが――
血が、水を“侵食”する。
リーナ
「え、……飲まれる……!」
ジール
「散開しろ!!《王墓鎖獄》」
鎖を広げる。
全方向防御。
だが――
バキィン!!
鎖が、砕ける。
ジール
「……は!?」
麻里奈
「《ストーンウォール》!!」
壁を展開。
だが。
スッ……
貫通。
麻里奈
「嘘でしょ!?」
ヴァンパイア
「無駄だ」
どこからともなく声。
ヴァンパイア
「その力では――届かない」
だが。
その“無駄”が――
時間を作った…
拓弥
「……今だ」
雪
「……ああ」
黒炎が、膨れ上がる。
光
「……これなら!!」
白い光が拳に集まる。
今までで、一番強い光。
誰もが思った。
「決まる」と。
光
「うおおおおおっ!!」
一直線。
ヴァンパイアへ踏み込む。
ヴァンパイア
「……その光は!」
初めて、ヴァンパイアが警戒する。
そして――
拳が届く、その瞬間。
パッ……
光が消えた。
光
「……っ!?」
ただの拳になる。
ゴッ!!
鈍い音。
ヴァンパイアは少しよろけるだけ。
ヴァンパイア
「……なんの真似だ」
光は目を見開く。
光
「どうして……」
ヴァンパイア
「脅かしやがって」
吹き飛ばされる。
それでも――
光
「まだまだぁ!!」
ジール
「一瞬でいい……!」
鎖を絡める。
わずかに――
動きを“遅らせる”。
リーナ
「今!!」
麻里奈
「足止めする!!」
石と水で空間を固定。
一瞬。
ほんの一瞬だけ。
“動きが止まる”
拓弥
「行くぞ、雪!!」
雪
「合わせろよ!!」
二人が同時に踏み込む。
黒炎が、唸る。
この戦場で。
唯一――
“通る力”。
拓弥・雪
「《黒炎双牙」
黒炎が、二つ。
一つは――
雷を纏い、
空間を裂く“牙”。
一つは――
氷を纏い、
空気ごと凍らせる“牙”。
相反する力が、
同時に放たれる。
交差する。
重なる。
そして――
融合する。
ズドォォォォォォォン!!!!!!
黒炎が、爆ぜる。
血の領域を、
真正面から――喰い破る。
ヴァンパイア
「……!!」
血が、蒸発する。
黒炎が、
“血そのもの”を否定する。
ドクン――
胸の核が、揺れる。
拓弥
「……あそこだ!!」
雪
「分かってる!!」
二人がさらに踏み込む。
狙いは――
“心臓”。
拓弥
「終わらせる……!!」
雪
「貫けぇぇぇ!!」
二人の黒炎が、
一点へ。
心臓へ。
一直線。
ズバァァァァァッ!!!!!!
核が――
砕けた。
ドクン――
鼓動が、止まる。
血の領域が、
音を立てて崩れていく。
空間が、元に戻る。
ヴァンパイアの体が、
ゆっくりと倒れていく。
ヴァンパイア
「……まさか……」
膝をつく。
ヴァンパイア
「この私が……」
胸を押さえる。
信じられないという顔。
だが。
どこか――
“安堵”も混じっている。
ヴァンパイア
「……やっと……」
かすれた声。
ヴァンパイア
「会えるのか…」
ヴァンパイア
「……ルーシー…」
視界が、滲む。
世界が、遠ざかる。
【回想】
暗い部屋。
鎖に繋がれた一人の少女。
その身体には、赤い亀裂のような紋様が走っていた。
ルーシー
「……来ないで……」
震える声。
ルーシー
「……壊れるから……」
沈黙。
だが、男は止まらなかった。
ゆっくりと歩み寄る。
ヴァンパイア
「……大丈夫だ…」
少女の瞳が、わずかに揺れる。
ルーシー
「何をするのです…わたしなど助けたら…貴方が…」
ヴァンパイア
「私はドラキュラート・ヴァン・パイア。父上は私がやることは少しぐらいは目をつぶってくれるさぁ」
――時間が流れ
数年後。
彼女は一人の子を抱いていた。
ルーシー
「アルカード。」
ドラキュラート
「私の子。コレで父上もルーシーを認めてくれるだろう。」
ドラキュラート
「父上、アルカードを抱いて下さい。」
カーミラ
「………。」
ドラキュラート
「父上?」
カーミラ
「お前は“あの失敗作”を助けたかと思えば――」
カーミラ
「今度はその血を、繋いだか」
カーミラ
「お前いったいどれだけ私の顔に泥塗るつもりなのだ!」
――そして。
血が、暴走すし、
赤い亀裂が広がり、
彼女の身体が崩れ始める。
ルーシー
「……ごめんね」
男が手を伸ばす。
ドラキュラート
「やめろ……」
ドラキュラート
「やめろ……!!」
届かない。
崩れ落ちる光。
その中で――
最後に見せたのは、
穏やかな笑顔だった。
――視界が、戻る。
ヴァンパイア
「……ルーシー……」
名を、呼ぶ。
もう、届かないと分かっていても。
ヴァンパイア
「……お前を……」
声が、震える。
ヴァンパイア
「もう一度……」
言葉が、途切れる。
そのまま。
笑った。
寂しそうに。
でも――
どこか、安らかに。
ヴァンパイア
「……会いたかった……」
涙が、一筋。
頬を伝う。
身体が崩れ落ちる
【沈黙】
誰も、動かない。
拓弥も。
雪も。
仲間たちも。
ただ、その最期を見ている。
【ヴァンパイア城・外/荒野】
崩れかけた城を、遠くから見下ろす影。
荒野の高台。
そこに、二つの存在。
ヨーク
「……終わったか」
淡々と。
ヴァンパイア城を見つめる。
その隣。
イフリート
「どうするんだ?博士。杖(蘇りの杖)あいつらがもってるんだろ。奪いに行くか?」
炎のように揺れる存在。
ヨーク
「手に入れたものをわざわざ手放し行くことはなかろう。」
イフリート
「ああん?……」
目を細める。
イフリート
「どうゆうことだ?」
ヨーク
「そのままの意味だ」
笑う。
イフリート
「このままほっといていいんだな。」
ヨーク
「当然だ。それに今日のお前は運が悪い」
イフリート
「俺がやられるってか?
へ〜そいつはどうんな奴だろうな?」
ヨーク
「行くぞ」
風が吹く。
城の崩壊音が、遠くに響く。
ヨーク
「次は"頭脳"を頂くぞ。」
イフリート
「お!ようやくか。楽しみだな。俺は何をすればいい」
ヨーク
「お前してもらいたいことは……
【ヴァンパイア城・最上層/玉座の間・静寂】
静かだった。
戦いの余韻だけが、残っている。
崩れた床。
砕けた壁。
消えかけた黒炎。
そして――
動かない“ヴァンパイア”。
拓弥
「……終わった……のか……」
誰も答えない。
風が、吹く。
その時。
――ドクン。
雪
「……」
微かに、目が動く。
誰も、何も言わない。
もう一度。
ドクン。
リーナ
「……今の……何……?」
視線が、一点に集まる。
砕けた“核”。
黒炎で、確かに破壊したはずの場所。
そこに――
赤い何かが、蠢いている。
ジール
「……おい……」
違和感。
嫌な予感。
ドクン。
ドクン。
鼓動。
だが。
それは“生きている音”じゃない。
ただの――
反応。
拓弥
「……嘘だろ……」
血が、動く。
床に散ったそれが、
ゆっくりと――
一点に、集まり始める。
麻里奈
「……勝手に……動いてる……?」
誰も触れていない。
肉が、繋がる。
骨が、組み上がる。
翼が、再び形を取る。
リーナ
「……うそ…やめて……」
ゆっくりと。
“それ”が、立ち上がる。
首が、傾く。
ギギッ――
不自然な動き。
瞳が、開く。
だが――
“何も映していない”。
光
「……なんですか……これ……」
反応がない。
呼吸もない。
ただ――
存在している。
雪
「……意思がない……」
低く、呟く。
雪
「これはただの……現象だ……」
ドクン。
ドクン。
胸の核。
“砕けたはずのそれ”が――
再び、形を取り始める。
拓弥
「……黒炎で……壊したはずだろ……」
ジール
「……冗談だろ……」
麻里奈
「……そんなの……ありえない……」
リーナ
「……倒したのに……」
もう誰も、動けない。
その瞬間。
光輝
「お待たせ…」
その声。
静かすぎた。
戦場の音が、消える。
拓弥
「……っ……!」
振り返る。
そこに――
“立っていた”。
いつからいたのか。
誰も気づかなかった。
ジール
「……何者だ?……」
雪
「……兄貴?……」
光輝
「……やっぱり、か」
淡々と。
光輝
「黒炎では――完全には殺せない」
光輝は静かに弓を取り出して。
再生を続ける“それ”に構える
そして、彼の弓に光が集まっていく。
拓弥
「……兄貴?……それは?」
光輝
「僕は"キミ(拓弥)"がどうして子供頃から気になってたかやっとわかったよ」
光はやがて矢の形に形成されていく
光輝
「同じ境遇だからと思っていた。」
一拍。
光輝
「……違った」
静かに、告げる。
光輝
「僕は"キミ(拓弥)"を救いたい」
そして
光輝
「ベル」
拓弥
「…………」
涙が、こぼれる。
ヴァンパイアの身体が、
“拒絶するように震える”
光輝
「終わりだ」
――音が、消える。
光が、“そこにあった”。
次の瞬間。
核が、貫かれていた。
ドクン――
音が、止まる。
再生が、止まる。
血が、崩れる。
霧のように、消えていく。
今度こそ。
完全に。
“何も残らない”。
【ヴァンパイア城・最上層/玉座の間・消滅後】
静寂。
何も、残っていない。
ヴァンパイアの存在は――
完全に消えた。
拓弥
「……」
目の前の男を見る。
確信している。
拓弥
「……兄貴……」
一歩、近づく。
拓弥
「……シン(父さん)……なんだろ……」
空気が、止まる。
誰も口を挟めない。
雪
「……シン……?」
光輝は、答えない。
ただ――
わずかに、目を細める。
光輝
「……キミたちにこの世界の話をされるまで全然、わからなかったよ」
拓弥
「……」
光輝
「でも全て思い出した。」
光輝
「僕らはまた"家族"になれてたんだね」
拓弥
「……ああ」
少しだけ、笑う。
拓弥
「また……会えた」
その言葉に。
光輝の表情が、ほんの一瞬だけ揺れる。
魔佐
「一番最後登場して一番おいしいところもって行くんだもんな〜」
拓弥
「魔佐兄」
翔
「さぁ帰ろう」
拓弥
「おう」
その瞬間。
――ゴゴゴゴゴ……
床が、揺れる。
麻里奈
「え……なに……!?」
リーナ
「城が……!」
天井が、崩れる。
瓦礫が、落ちる。
暁斗
「この結界も城も持たないな急いででるぞ」
【ヴァンパイア城・外/荒野】
崩れ落ちた城。
瓦礫の山。
もう――戦いの気配はない。
夜が、明け始めていた。
光
「結界の入り口の扉が……半分消えてる……!」
麻里奈
「え……どうしよう……!」
外は見える。
だが――
“境界”が歪んでいる。
魔佐
「不味いな……」
空間を見渡す。
魔佐
「このままだと、結界ごと崩れて……」
一拍。
魔佐
「中に閉じ込められる」
リーナ
「そんな……!」
魔佐
「僕一人なら強引に抜けられるけど……」
全員を見る。
魔佐
「みんなを連れては無理だ」
沈黙。
崩壊の音だけが響く。
その時。
リーナ
「……これならどう?」
小さく、手を上げる。
全員の視線が集まる。
彼女の手には――
“ブリューナクの刃”。
鈍く光る、神秘の欠片。
拓弥
「……それ……」
目を見開く。
拓弥
「なんで持ってるんだよ」
リーナ
「エルフの里の近くに落ちてたの」
さらっと言う。
リーナ
「これ……ただの武器じゃないでしょ?」
刃が、わずかに震える。
まるで――
“応える”ように。
雪
「……空間に干渉してる……?」
魔佐
「……なるほどな」
少しだけ、笑う。
魔佐
「それなら――“壊せる”かもしれない」
拓弥
「リーナ、やれるか?」
リーナ
「……やるしかないでしょ」
強く握る。
刃が、光を帯びる。
崩壊が、加速する。
リーナ
「――いくよ!!」
空間に向かって思いっきり投げた。
パッリーン――!!
結界が、音を立てて崩れた。
道が、出現した。
光
「よし!!」
翔
「行くぞ!!」
全員、一斉に駆け出す。
崩れゆく世界の中を――
外へ。
振り返ると
崩れた結界の奥で、
空間が、わずかに歪んでいた。




