表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/14

17.惨劇

【1670年 エクストラ王国・国立20周年記念パレード】


 空はどこまでも澄み渡り、金の装飾を施した王城の尖塔が朝日を反射して輝いていた。

 広場には数百人の民が集まり、王家の旗が風にはためく。

 子どもたちは花を手に笑い、大人たちは王と王妃を称える声を張り上げた。

 ――エクストラ王国、建国20周年。歴史に残る晴れ舞台だった。


 先頭には、白銀の鎧に身を包んだ近衛騎士団。

 続いて王妃エンジェル、王シン・エクストラ、そして王太子アンジェラが金色の馬車に乗り行進する。

 沿道の民が歓声を上げ、花びらが空を舞った。


観客「陛下ー!万歳ー!」

観客「アンジェラ様、お美しい!」


 まるで夢のような光景だった。

 だが――その夢は、唐突に、音を立てて崩れ去る。


 ――ドンッ!!


 轟音が広場を揺らした。空気が震え、鳥が一斉に飛び立つ。

 煙が立ち上り、続いて悲鳴。

 王妃の馬車のすぐそばで、突如爆発が起こったのだ。


衛兵「敵襲だっ!!」

観客「きゃああああっ!!」


  群衆が逃げ惑う中、その先にはヴァンパイアの配下ジェネラルが姿を現す。


 そして――


 カタカタカタ……


 不気味な音と共に、大地が盛り上がった。


観客「な、なんだ……?」


 地面から突き出る白い腕。


 一本。


 二本。


 三本。


 やがて無数の腕が土を掻き分け――


 骸骨兵が現れた。


 朽ちた鎧。


 空洞の眼窩。


 錆びた剣。


 それらが何百、何千と広場を埋め尽くしていく。


観客「ひっ……」


観客「化け物だァァァ!!」


ジェネラル

「さあ、始めようじゃないか――ヴァンパイア様のために!」


 兵士たちが次々と立ち向かうが、敵の力は圧倒的だった。

 炎が広場を包み、悲鳴と咆哮が入り混じる。


アンジェラ「父上!母上をお守りします!」

シン「下りなさい。アンジェラ、母さんを連れてここから離れなさい。私は民を守る!」


 王が剣を抜くと、雷光のような斬撃が走る。だが、敵は数を増やし、王妃の護衛たちは一人、また一人と倒れていく。


【同時刻・城内】


 静かな寝室。

 カーテンの隙間から差し込む光が、ベルの頬をやわらかく照らしていた。

 だがその穏やかな時間の外で、王都は炎に包まれていた。


 遠くの爆発音がわずかに響く。

 ベルはうなされながら、浅い息を吐く。


ベル「……母さん……兄貴……?」



 【回想・1670年 エクストラ王国・王都中央広場】


 広場は地獄と化していた。

 王妃の馬車が爆炎に包まれ、空には黒き翼を持つ怪物たちが舞う。

 燃え盛る旗、泣き叫ぶ民、倒れた兵士たち――そこはもはや「祝典」ではなく「戦場」だった。


 王シン・エクストラは民を背に立ち、剣を構えていた。

 その刃は雷を纏い、振るうたびに閃光が闇を裂いた。


シン「国を……民を守れ! 一人たりとも通すな!」


 【1670年 エクストラ王国・パレード会場周辺】


 炎と悲鳴が街を覆っていた。

 つい先ほどまで祝福に満ちていた通りが、一瞬にして戦場へと変わっている。

 空には黒煙が渦巻き、地面は瓦礫と血で染まっていた。


エンジェル「アンジェラ! お父さんのもとへ戻るのよ!」

アンジェラ「でも、……!」

エンジェル「私は大丈夫。」


 母の声には震えがあったが、目には確かな決意が宿っていた。

 アンジェラは頷き、駆け出す。


エンジェル「……どうか無事でいて、シン……」


 その願いも虚しく――影が地面に落ちた。

 熱気を裂くように、頭上から冷たい風が吹きつける。

 そしてその風の中心に、艶やかな女が舞い降りた。


エキドナ「母と子の逃避行……ふふ、いいじゃない。愛情深いほど、壊しがいがある」


 ゆっくりとエキドナはエンジェルに近づいてきた。

 その足元では花びらが焦げ、まるで血のように赤く散っていた。


エンジェル「……あなたが、この惨劇を……!」

エキドナ「ええ。けれどあなたの死は無駄じゃないわ。新しい時代のために、貴方の命を捧げてもらうだけ」


 エンジェルは恐怖を押し殺し、腰の短剣を抜いた。

 その小さな刃先に、母の覚悟が宿る。


エンジェル「ベルも、アンジェラも……誰にも渡さない!」

 

 【同時刻・王都中央広場】


 黒煙が晴れた時、そこに立つのは二人の男だった。

 一人は雷を纏う王、シン・エクストラ。

 もう一人は、漆黒のマントを纏い、巨大な鎌を肩に担ぐ男――キール・クライシス。


シン「……誰だ、貴様は」

キール「名乗るほどのもんじゃねぇよ。ただの“処刑人”さ」


 キールが大鎌をゆっくりと構える。

 その刃が空を裂き、黒い火花が舞い散った。


キール「ヴァンパイアの頼まれごとでな。アンタには悪いが殺しに来た」

シン「……そうか。ならば、ここで終わるのは貴様だ」


 稲妻が王の剣を包む。

 轟音とともに地面が砕け、雷鳴が戦場を貫いた。


シン「《雷閃・グランストーム》!」


 無数の雷光が天から降り注ぎ、キールに襲いかかるが

 キールはそれを上手く回避し続けた


キール「王様、やるじゃねぇか。」


 キールは不敵に笑っていた。

 そしてキールが刃を振り下ろす。

 闇の波動が地を這い、雷光と激しくぶつかり合う。


【1670年 王都中央広場】


キール「王様……思ったよりしぶといな」


シン「貴様のような者に、国を穢させはせん!」


 シンの剣が光を放つ。

 雷鳴とともに放たれる剣閃――《ライトニング・ドライブ》。

 空を裂く雷撃が地面をえぐり、焦げた大地が煙を上げる。


キール「チッ、避けきれねぇか!」

 肩を掠めた雷がマントを焦がし、火花が散る。


シン「この国を——民を——守る。それが王の務めだ!」


 王が渾身の力で剣を振り下ろす。

 雷光が一閃し、確かにキールの身体を切り裂いた――かに見えた。


シン「……終わったか」


 だが、斬り裂かれたキールの体がふっと霞のように揺らめく。

 残像が弾け、空気が震えた。


シン「なっ……幻影だと!?」


キールの声が、背後から聞こえる。

冷たく、低く、まるで死神が耳元で囁くように。


キール「俺は“死神族しにがみぞく”の血を引く者……幻影を創るなんざ、朝飯前だぜ」


 その瞬間、黒い風が背後から吹き抜けた。

 気づいた時には――キールの鎌が、王の背を裂いていた。


ザシュッ――!


シン「ぐっ……!」


 鮮血が宙を舞う。

 それでもシンは膝をつかず、剣を杖のようにして立ち上がった。


シン「……見事だ。だが……まだ……終わっては……いない」


キール「ハッ……王様、アンタ……本当に人間かよ」

 

シン「……民を……守らねば……」

 膝をつきながらも、王は剣を離さない。

 その眼にはまだ、王の誇りが宿っていた。


キール「もうやめとけよ。王様。」


 キールの声は冷たく、それでいてどこか哀れみを含んでいた。

 だが、シンはわずかに笑った。


シン「……私の魂は……尽きない。民がいる限り……この国の灯は……消えない」


 その言葉とともに、折れかけた剣が再び光を帯びる。

 雷光が最後の輝きを放ち、シンは立ち上がった。


シン「これが――王としての最後の務めだ!」


 渾身の力で剣を振り抜く。

 天から一条の光が走り、キールの身体を飲み込む――


ドォンッ!!


 轟音と閃光が戦場を包んだ。

 だが、煙が晴れたその中で立っていたのは――キールだった。


キール「……見事だ。けどな……それでも、届かねぇよ。」


 黒い影がキールの背後に立ち上がり、デスサイズの刃が闇を裂く。

 その刃先が禍々しい光を放ち――シンの胸を貫いた。


シン「……っ……!」


 血が滴り、雷が霧のように散っていく。

 シンは震える手でキールの鎌を掴んだ。


シン「……お前……名は……?」


キール「キール・クライシス。」


シン「覚えておこう……我が息子が、必ずお前を……」


 その言葉を最後に、王の体から光が消えた。

 鎧が崩れ落ち、剣が地面に突き刺さる。


 ――その瞬間。


アンジェラ「父上ぇええええっ!!」


 瓦礫を飛び越え、息を切らせて駆けつけたアンジェラが、崩れ落ちる父の姿を目撃した。

 金の髪が炎に照らされ、涙が頬を伝う。


キール「……チッ、間に合っちまったか。」


アンジェラ「この……化け物があああああっ!!」

 怒りと悲しみで我を忘れ、アンジェラが剣を抜いて飛びかかる。


 しかし――キールは振り向きもせず、手を一振り。

 黒い波動が放たれ、アンジェラの体が宙を舞った。


キール「悪ぃな。王子は殺すなって命令でな。……命拾いしたな」


 キールは背を向ける。

 燃え上がる王都を背に、夜の闇へと消えていった。


アンジェラ「……父上……!」

 地面に崩れ落ちたアンジェラの嗚咽が、静まり返った王都に響いた。


 【1670年 エクストラ王国・王城近く】


 夜の静けさが戻りつつある王都。

 遠くで騎士たちの怒号と、混乱の余波がまだ微かに響いていた。

 だが、炎も戦火もここまでは届かない。

 ただ――風が、どこか悲しい音を運んでいた。


アンジェラ(……父上、母上……どうか……ベルだけは)


 胸の奥に焦げ付くような不安があった。


 城門をくぐり、石畳を駆け抜ける。

 そこに――見慣れた部屋の扉が見えた。

 扉は半開きで、部屋の奥から淡い灯がこぼれている。


アンジェラ「ベル……!」


 息を切らしながら中へ駆け込むと、

 そこには小さなベッドに横たわる弟――ベルがいた。

 まだ幼さの残る顔で、浅い眠りの中にいた。


アンジェラ「……生きてる、良かった……」


 その瞬間、張りつめていた何かが切れ、アンジェラの肩が震えた。

 息を整えながらも、視線はどこか遠くを見つめていた

 

 ベルの小さな手がわずかに動いた。


ベル「……あに……き……?」


 か細い声が漏れ、アンジェラの指先が震えた。

 弟の瞳がゆっくりと開く。

 まだ夢と現の境を彷徨うような瞳が、兄を映した。


ベル「母さん……は……? 父さん……は……?」


アンジェラ「…………」


 アンジェラは答えられなかった。

 喉の奥が焼けるように痛い。

 言葉にすれば、すべてが本当になってしまう気がした。


ベル「……兄貴?」


アンジェラ「……父上は、戦った。最後まで……民を守るために」


ベル「……え?」


アンジェラ「母上も……俺たちを守ろうとして……」


ベル「やめろよ……」


 ベルの声が震えた。


ベル「やめろよ、兄貴……その言い方……」


アンジェラ「……父上も母上も、もう……戻らない」


 ベル「……何言ってんだよ……さっきまで母さんが……」

 ベルの声が震え、視線が泳ぐ。

 理解が追いつかず、現実が歪んでいく。


ベル「嘘だろ……兄貴、嘘って言ってくれよ!」


 アンジェラは答えず、ただ弟の肩を掴んだ。

 その手は強く、それでいて優しかった。


アンジェラ「ベル。

 これからは――俺たちが、この国を背負うんだ」


 ベルは首を振る。

 目の前が滲み、世界が遠ざかる。


ベル「……なんで……なんで俺だけ……」



アンジェラ「……必ず、父さんの想いは守ってみせる。」


 【1670年11月 エクストラ王国・謁見の間】


 王シン・エクストラが戦死してから、まだ一ヶ月。

 王都は沈痛な空気に包まれていた。

 国中が喪に服し、民の顔からは笑みが消えている。

 若き王、アンジェラは玉座に座りながらも、その眼差しにまだ父の影を宿していた。


老臣「陛下……隣国アーディン領の領主、アウグスト様がお見えです。

 亡き陛下の古いご友人だと」


アンジェラ「……父上の、友人……? 通せ」


 重々しい扉が開かれ、灰色のマントを纏った初老の男が進み出た。

 穏やかな笑みを浮かべながらも、その眼差しは油断なく、計算された温度を持っている。


アウグスト「若き王よ、突然の訪問を許されたい。

 かつてシン陛下とは友として語らった仲、せめてそのご遺志を支えたく参上した」


アンジェラ「……父の遺志を?」


アウグスト「ええ。貴国は今、喪の中にあり、国力も疲弊しておられるでしょう。

 そこで、我が領より資金と兵糧の援助を申し出たい。

 見返りはただ一つ――貴国特産の“コーヒー”を、年間収穫量の半分、輸出させていただきたいのです」


アンジェラ「……コーヒーを?」


 王は少し驚いた顔をした。

 エクストラ産のコーヒーは芳香高く、国民に人気があったが、ほとんどは国内で消費され、

 輸出に回すほどではなかった。


アンジェラ「鉱石や金属ならまだしも、コーヒーでよいのか?」


アウグスト「もちろん。王の一杯が民を潤すと申します。

 いずれコーヒーは、世界を動かす黄金になるやもしれませんぞ」


 その言葉に、アンジェラの顔にわずかな希望が灯った。

 悲しみに沈んでいた国を立て直すきっかけになる――そう信じたのだ。


アンジェラ「……わかった。その話、受けよう。

 父上の遺した国を、あなたの助けで立て直すことができるなら」


 アウグストの笑みが深まる。

 それは慈悲にも見えたが、どこか底知れぬ影を帯びていた。


アウグスト「賢明なご判断です、陛下。

 貴国の未来に、必ずや光をもたらしましょう」


 【1671年1月 エクストラ王国・王都郊外】


 アウグストの援助により、国は一時的に活気を取り戻した。

 コーヒーの輸出が始まり、民もわずかに笑顔を取り戻す。

 だが同時に、主要輸出品である鉱石を運ぶ商隊が、次々と何者かに襲われはじめた。


兵士「陛下! また鉱石の輸送隊が全滅しました!」


アンジェラ「またか……! 一体誰が、何のために……」


 【1671年 エクストラ王国・国境付近】


 乾いた風が丘を吹き抜ける。

 ベルは簡易鎧を身につけ、

 「鉱石運搬の襲撃事件」単独で調査に出ていたのだ。


ベル(……また同じ手口だ。荷馬車の跡も、焼けたように黒い。だが炎の跡じゃない……爆裂魔法か?)


 地面にしゃがみ込み、手で焦げ跡をなぞる。

 その傍らには、血で汚れた銀貨袋が落ちていた。


ベル「……“A・F・A”。?」


 刻印が押されていた。

 アウグスト・フォン・アーディン――隣国領主の紋章だった。


ベル「……まさか……」


 ベルは王都へと駆け戻った。

 胸の奥で鼓動が荒ぶる。

 信じた相手が裏切っていた。

 ――いや、それ以上に、兄にこの真実をどう伝えるべきか、それが怖かった。



【1671年 エクストラ王国・謁見の間】


 重苦しい空気が漂っていた。

 アンジェラは机に広げられた書状を前に、深くうなだれていた。

 ベルが駆け込む。


ベル「兄貴っ!」


アンジェラ「ベル……どこに行っていた」


ベル「国境の輸送路を調べてきた。……あの襲撃は盗賊なんかじゃない。

 アウグストの奴が雇った傭兵どもだ!」


アンジェラ「…………」


ベル「聞いてるのか!? あいつは父さんの友人なんかじゃなかったんだ!

 最初から、この国を――!」


アンジェラ「わかってる。」


ベル「……え?」


アンジェラ「わかっているんだ、ベル。

 ……もうダメなんだ。俺がしっかりしてなかったから、この国はあいつらに奪われてしまう……」


 アンジェラは机の上の書状を指でなぞった。

 そこには、アウグストとの新たな契約が記されている。


ベル「……これ、まさか」


アンジェラ「国を……引き渡す契約だ。

 アウグストに統治権を委ねる代わりに、民の安全と、最低限の自治を保証する。

 このままでは飢えて死ぬ。もう……資金も兵も残っていない」


ベル「兄貴、それじゃ――この国は終わりだ!」


アンジェラ「そうだ。それでも民を生かすには、これしかないんだ!」


ベル「そんなの……そんなの、父さんも母さんも望んでないっ!!」


 拳を握り締め、ベルは震えていた。

 怒りと悲しみと無力感が胸を押しつぶす。


アンジェラ「……お前には、自由に生きてほしい。

 この国に残る必要はない。……ベル」


ベル「俺は逃げない。……兄貴がなんと言おうと、俺はこの国を取り戻す!」


 【1671年 深夜 アーディン領主邸】


 夜の帳が降り、月は雲に隠れていた。

 アーディン領主邸の周囲には、見張りの兵が数十人。

 それでも――ベルの足取りは迷いがなかった。


ベル(兄貴は……民を守るために屈した。

 でも、俺は……許せない。父さんと母さんの国を、汚した奴らを)


 風の中、雷光が一瞬閃く。

 次の瞬間には、前方の警備兵が崩れ落ちていた。

 剣を抜く音さえ、激しい雷鳴にかき消される。


警備兵「な、なんだ貴様――ぐぁっ!」


 ベルの瞳は冷たく、何の迷いもなかった。

 一人、また一人と倒れていく。

 やがて静寂が戻った頃、屋敷の奥の扉が開く。


アウグスト「……誰だ。夜更けに何の用だ」


 彼の手には金杯、机の上には契約書。

 その顔にはまだ“勝者の余裕”が残っていた。

 ベルはゆっくりと歩み寄り、短く答えた。


ベル「エクストラの名を汚した者の、末路を見せに来ただけだ」


アウグスト「はっ、子供が……王族の分際で――!」


 言葉の途中、雷鳴が轟いた。

 閃光が走り、屋敷全体を揺るがす轟音が響く。

 煙が晴れた時、そこに立っていたのは――血を浴びた少年だった。


ベル「……父さんの“友”を名乗るな」


 その声には怒りよりも、深い悲しみが滲んでいた。

 アウグストの手から金杯が滑り落ち、床に転がった音がやけに響く。



【翌朝 エクストラ王国・城前】


 夜明け。

 城門の前には、荷車が一台、静かに置かれていた。

 その中には奪われていた鉱石と、特産のコーヒー麻袋が整然と積まれている。

 だが、荷車を引いてきた者の姿は、すでになかった。


 衛兵たちが報告に走る頃、

 丘の上を一人歩く少年の背が、朝焼けに照らされていた。


ベル「……これで、少しは父さんと母さんの顔に泥を塗らずに済んだかな」


 呟いた声は風に溶け、誰にも届かなかった。

 その背中には、まだ14歳とは思えぬほどの孤独と覚悟があった。



「その日、エクストラ王国の歴史は静かに塗り替えられた。

 誰も知らぬままに――“少年王子の復讐”によって。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ