#33
寝てるだけだよね?
ちょっと疲れただけだよね?
あっ! もしかして、死んだフリかぁ~?
それが、零祓の作戦なら・・・って、戦う本人がそれをやったら・・・・・・・・・。
「意味・・・ない・・・・・・でしょ・・・・・・?」
涙声でそう言った。
____ズサッ!
繋がれた糸によって引き抜かれたデスサイズは持ち主の元へと還っていく。
刹那、零祓の身体が力なくその場に倒れた。
すぐさま駆け寄りたい私と、それを物理的に止める自分が同居し、行動を硬直させる。
音が消え____私の世界から何かが失われて、真っ白な精神世界に吞み込まれてゆく。
「あーぁ、死んじゃった・・・でも、ただ殺すのは勿体ないよね」
戦慄。
ここまでして、まだ何かしようというの?
「やっぱり、これをしないとスッキリしないや____予備持ってて良かったよー」
(____ッ!)
いつしか手には高く握られた中華包丁が再度出現していた。
何をしようとしているのかは嫌でも分かる。
(どうするっ・・・?! 何か方法はっ____!? 飛び出して相手を止める? いや、私じゃ近づく前に殺されて終わりだ・・・。 じゃあ、このまま隠れて様子を見る?!)
「すぅーはぁー・・・すぅーはぁー。 なんか、イケない気分になってきちゃったぁ~♪ 今まで色んな子を観てきたけど、あなたはどんな、断面を観せてくれるのかなー!」
そうしている間にも切断姫は火照った体を落ち着かせるため、ゆっくりと深呼吸をして目の前の御馳走を満足そうに眺める。それほど、死神という存在を自らの手で切断できる事が嬉しいのだろう。理解出来ない価値観と分かっていても、彼女が特別だという点に関しては分かる部分があった。
でも、それは・・・死神としての彼女じゃなくて・・・・・・もっと違った____。
「じゃあ、いっくねー!♪」
楽しそうに振り上げた刃先が切断の初期動作に入った。
光景に意識を奪われて動けない私の目には何もかもがスローモーションで映り続け、じっくりと残酷な現実を突きつけれている感覚だった。
「これって____?」
最初からそこにあったのか、私が気にも留めなかったのか?
「零祓の____」
私が接触れていいモノなの?
私が直視てもいいモノなの?
私が使用っていいモノなの?
ジジジ・・・ジジジ・・・っと黒い稲妻を不規則に纏った大鎌。持ち主を失ってなお、異様な武器としての存在感は失われていなかった。
(考えてる時間なんてないっ_!)
「代償なら後でちゃんと払います・・・だから、今は・・・・・・今だけは私の武器になってください____!」
決意を抱いて、それを握った。
「がぁっ゛____ぎっ_」
全身を内側から無数の針で突き破られる様な痛みが襲う。無意識に目尻から溢れでる涙が頬を伝って、鎖骨に一滴_二滴三滴と短い感覚で浸っていく。
想像を絶する苦痛に落としそうになるデスサイズ。痙攣する全身を制御しようと抵抗する神経が私に両手で鎌を握らせた。
「はっ____」
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『わた・・・・・・しは・・・・・・・・・たい____』
『しに・・・・・・・・・ちから・・・れば____』
『つぎが・・・ある・・・・・・なら・・・・・・・・・その・・・ときは____』
『いっしょ・・・に・・・・・・うね____』
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「今のは____? 零祓の・・・・・・でも、何か_______」
流れ込んできた光景と途切れ途切れの言葉の数々。
デスサイズへの干渉によって地上から吹き荒れた突風が頭部に天を仰がせ、外套を引き剝がしていく。
(まっ_待って! それが無いと____)
必死に止めようと抵抗した手は死神の力の前には無に等しく、勢いよくソレを闇夜に飛ばした。
バサッ____!
厚い生地の重みで押さえられていた、私の髪を激しく靡かせる。
「なにっ_!?」
切断姫が反応した。すなわち、私の存在を察知した証だ。こうなってしまったら、後には退けない。戦っても、逃げても結果が同じだというのなら私は迷わず、前者を取る。
それが、死んでしまった彼女への手向けとなるのなら_______。
「・・・誰・・・・・・?! どこから____」
包丁は空を向いたまま停止まっていた。彼女の視界に映る少女によって。いっ時の誘導には私の外見は充分だった。
不慣れな武器を、そつなくこす。それが今の私に与えられた行動原理。いくら隙が出来たとしても、復帰を怠る様な相手ではない事は目に見えていた。
「白い髪・・・私の知ってる契約少女じゃない・・・・・・それに、その顔あんた一体____?!」
疑問に回答を出す義理なんてない。
「_______」
だから、仕掛けるなら一度きりだ。
鎌の使い方何て詳しくは知らない。けれど、デスサイズがどれほど危険で特別なモノなのかは分かる。
そう、これは『契約少女の願いと、その代償の証』
「待ってってね。 すぐに終わらせるから_______」
遠くて悲しい気持ちの結晶を零さないように一瞥した少女の眠ったままの素顔を記憶に残し前を向いて____
____鎌を握った右手を横に伸ばし、戦闘態勢に入った。




