#27
「否水、あなたは後方支援って言ったはずでしょっ__!」
慌てた様子で口早に振り返った咲凜。
「アレを狙っているのは分かるけどさぁ、今は止めといた方がいいんじゃない?」
溜め息混じりに咲凛の顔色を窺いながら、助言する否水。
「あ・・・あの・・・否水さんの話も一理あると思います・・・・・・」
「私は咲凜の作戦に賛成だけどな」
その言葉を皮切りに暗闇の中から、おどおどとした青髪の少女と堂々とした赤髪の少女が姿を現わした。
「二人も、ああ言ってるわけだしこ____」
「そう・・・で____」
____バンッ_バンッ_。
刹那、二発の銃声が鳴り響いた。
(銃声・・・? でも、咲凜の銃は____)
そして、現れた四人の少女の内、二人の少女が空を見上げていた。
零祓は反動をものともしない手際で、それをやってのけていた。
_______【天なんか仰いで夜空はそんなに綺麗?】
____冷たく黒い零祓の声が聞こえた。
「っ_」
咄嗟に声を上げた赤髪。
気づいたのはそれからすぐの事だった。
この状況で攻撃を仕掛けるのが相手側だと錯覚していた。
そう____私がいるのは倫理観の向こう側。それを思い知らされる。
「・・・・・・全青・・・!?」
「否水・・・・・・・・・!?」
硝煙の匂いを背景に額から出血する二人の名前を呼ぶ。力なくその場に倒れる体を急いで支え、地面に横たわらせた。
「全青・・・。 全青・・・? 全青全青全青ッ____!!!! ・・・・・・・・・お願い、目を開けて・・・ああ、あぁ・・・あぁぁぁ・・・・・・・・・____」
悲鳴を帯びた声色で連呼される名前。その顔には全青と呼ばれた少女の脳漿がベッタリと飛び散っていたが、それを気にも留めず、溢れる感情の揺れを全青を揺さぶることで相殺しようとしていた。
____だが、無慈悲にも別れが訪れる。
【依り代を失った事により、隠れていた存在が顕現したのだ____】
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「____否水」
瞬き一つしなくなった少女の瞳に手を置いた咲凜は、それをゆっくりと下げる。
時を同じくして、否水の元に現れた神聖で邪悪で禁忌な存在。形容しがたいその容姿は一言で表すなら黒い霧といったところだろうか。
それは依り代にしていた肉体の亡骸に触れると、心臓辺りに赤黒い粒子を発生させる。
恐らく、横たわった少女の身体から抜き取っているのだと感覚で察っした。
「まっ____待ってッ____!」
全青から離れようとしない、赤髪の少女が藁にもすがる思いで懇願する。
しかし、霧は声を聞こうとはしない。最も、人の言葉が通じるのかさえ分からない____。
「紅赤ッ____! やめなさい!!」
咲凜がそれを止めようと声を上げた。だが、紅赤の耳に届くには遅かった。
「・・・め・・・・・・ろ・・・。 め・・・ろ・・・・・・やめろおおおおぉぉぉッーーーー! やめろと言ってるのが聞こえないのかッ____!!!!」
泣き叫び、躓きながら駆け寄ろうとする少女に霧は手と思しきものを一振り遊ばせた。
瞬間、大気中の空気が消失する。
息が出来ない。
さらに、近くの壁に何かが勢いよく衝突った音がして、衝撃波が体を揺らす。
(今のはっ・・・?)
音のした方へと視線を向けると、ビルの壁に体をめり込ませ首を垂れ、口元から吐血しいる紅赤の姿があった。あれではもう、仲間を助けることは出来ないだろう。
霧は吹き飛ばした少女の顛末に微塵も興味を示さず、再び粒子を吸い上げる。身体と繋がっているのか胸元を起点に持ち上げられていく全青の体。耳障りの悪い異音が鳴り響き出した。
__・・・ブチ
__・・・ブチ・・・・・・ブチィ
__・・・ブチブチィ・・・・・・ブチィ
__・・・・・・・・・ブチイィッ__!
_______ピンッ____。
張りつめた弦が切れた。
限界に達し、粒子が少女から引き千切られ地面に叩きつけられる_______
「う・・・うぅ・・・・・・全青・・・? はっ_」
彼女にとっては眠っていた方が幸せだったかもしれない。閉ざされていた瞳が僅かな意識の覚醒と共に開けられていく。
「だ・・・ダメッ_! いっ・・・いや・・・・・・いやいや嫌ぁぁぁッ____!」
体をくねらせ、壁から抜け出そうともがく。少しずつ崩れていく壁の破片が隙間を作り彼女の身体を解放する。そのまま地面に落ち、両手を付いた。
「う、み・・・・・・?」
下に向いた顔を上げ、名前を呼ん____
____ドパアアアァァーンンンンッ!!!!
体内から盛大に爆散し、四方に彼女が咲き誇る。
それはまるで、薔薇の様に____。
人工物に付着した体液は微量の音を立てながら昇華されていく。水の蒸発を想起させるそれは、通常の人間の血液ではありえない現象だ。
(あれが零祓の言っていた処理・・・・・・? 血があんな風に・・・・・・____)
あまりに惨たらしい、少女の終わりに言葉を失い、処理という意味を理解しえなかった。
「あ・・・あ・・・」
「紅赤、あなたも契約者なら覚悟はしてたでしょ? だったら、やるべきことは分かるわよね」
咲凜が悟った口調で淡々と話す。
「・・・・・・」
目覚めてすぐに視界に映った全青の散り際に放心状態だった紅赤がゆっくりと立ち上がり、影を落とした顔で零祓の方へと向いた。服は所々が破け、掠り傷と土埃が付着し瀕死の状態だった。
皺を寄せた眉間に、鋭い目つき。無際限に湧き出てくる感情を身に纏い、明確な怒りを露にする。今にも飛び掛かりそうな少女に相対するもう一人の少女は涼しい顔で無言のまま立ち尽くしていた。
カチャッ____
けれど、そんなことはどうでもいいと言いたげに腰に付けていた、小型の刃物を取り出した。あれも、契約者の能力の一つだろう。普通のナイフと似ているが刃の部分が異質な形状をしている。特殊金属、あるいは地球外物質の類と仮定。
それを両手で握り、捨て身の覚悟で特効した。
「しいぃにいぃがあぁみいぃぃぃィィィィッーーーーーー!!!!」




