#15
少女と凶器。
急変した空気は体内にまで侵食し、指先どころか瞬きさえも許さない。辛うじて機能した視覚は、じんわりと熱を帯び、小刻みに震える眼球越しに零祓の姿を映していた。
私が彼女に歩み寄っていたのではなく、彼女が私に歩み寄ることを赦していたのだと知った____。
不覚にも、そんな事が脳裏をよぎった。それでも、あの時の少女の仕草・言葉・表情を演技だと思いたくない自分がいたのも事実。
だからこそ、こうして頭に浮かんだ仮説を必死に否定していた。
「____な_ん__で___」
枯れた声を絞る様に出し尽くす。
「それは____」
零祓の言葉を聞きたくなかった。もし、聞いてしまえば答えがどうであれ、会話をする機会は二度と来ないと直感で悟ってしまったからだ。
____唇が次の発音の予備動作を開始する。
耳を塞ぎたい。
私は声を荒げて、彼女の声をかき消そうと喉に力を込め____
「や____め_______」
間に合うはずのない時間に飛び込んだ。
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「なんてねっ! あの時はああでもしないと引き受けてくれないと思ったからさ・・・・・・まさか、ここまで驚かれるとは思ってなかったけど・・・・・・・・・あはは・・・・・・」
息が詰まりそうな圧迫感に押し潰されそうになっていた時、彼女から発せられた声に硬直が解ける。パァッ_!っと明るくなった雰囲気が逆に気味が悪い。これも、彼女の能力の一つなのだろうか。
どちらにせよ、精神を大きく乱されたのは確実だ。急激に襲う、吐き気と目眩が血糖値を波立たせ____
「・・・・・・こ、怖い・・・こと・・・・・・・・・言わないでよ・・・うぅ____」
バタッ_
力が抜け落ちた。恐怖心から強張っていた全身の筋肉が一気に柔軟性を取り戻し、その場に膝をついて座り込んだ。
口調はいつもの彼女に戻ってはいた。それでも少しの間、私は零祓の瞳を直視ることができなかった。
「ご、ごめんっ・・・! 私もこんなになるなんて思ってなくて・・・・・・」
焦りなのか、予想外の反応に反省する素振りを見せ顔を俯かせる少女。
キッ____!
突発的な生理現象で目尻に浮んだ水滴を隠す為に細めた瞳で少女を睨んだ。
「ひっ____! れ、麗亡~?」
思わず息を止め後退する零祓。
「こ、怖い・・・よ? 女の子がしちゃいけない顔してるよ~・・・・・・・・・。 機嫌直して____」
____ッ!
その一言が私の何かを切った。条件反射とはこういう事を指すんだなと頭の片隅で考えながらも、半ば制御不能な感情を行動に変えた。
「どの口がぁーーーー!!!」
荒げた声をそのままに「あっ、ヤバい・・・」っと引きつった顔が言っている少女めがけて低姿勢から風の速さで立ちあがり、両手で頬をつねった。
「ごめんなひゃい~!」
「いつも、いつも、そうやって謝れば済むと思ってるんでしょっ!」
「ひゅるしへぇ~れいな~~~~!」
ぐにぐにと、力を込めて零祓の頬を揉みしだく。「いひゃい、いひゃい、いひゃいっ~!!!」と半泣きになりながら抵抗する少女。ここまできたら、ちゃんと分かるまで続けるつもりだった。
「もう、しにゃいきゃら~~~! ぎゃっこう~おくれひゃうよ~~~~」
「知るかっ_! 大体、それは零祓の問題でしょっ_! 私には関係ないんだからっ_!」
「うぅ・・・・・・いみゃ~しょれいう~~~? みゃもってあげにゃいよ~~~?」
「どうせ、それも「嘘でしたっ!」とか言うんでしょっ_!」
「うひょじゃ~にゃいよ~~~」
私と彼女の朝はこうして幕を開けた。
騒々しいスタートだ。
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「騙されないんだからっ_!」
____ありふれた展開に目まぐるしく移り変わる場面
「しんじて~~~」
____どんな時間を切り取っても、画になる様な
「今回ばかりは、泣いても許さないんだからっ_!」
____そんな、少女たちの歪な関係は
「ひゅるして~~~」
____姿形を変えて続いていくものだと
「反省するまで、やめないっ_! ____ふふっ」
____そう、思っていた。
「れいにゃ~? にゃんか、わりゃってにゃい~~~? にゃぁ~」
____でも、都合のいい解釈は不都合に寝首を掻かれる
「にゃぁ~って、何よ・・・・・・・・・猫のつもり?」
____それがどれだけ、贅沢な独りよがりで
「はぁ~はぁ~、しょろしょろ~はなして~ほっぺ、もどらなくなっひゃう~」
____決して願ってはいけない事だと
この時の私は知らなかった、いや、知る由も無かったんだ。
だって____
【自分が ▇▇した▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇ だから】
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