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叙事詩の進行  作者: あいすに刺さる茶葉
第三章  『迷宮区グラン』

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【閑話】在りし日

ごめんなさい!

ちょっと全然最新話が書けないので、これで許してください泣

今回は閑話です!本編の時間軸よりもかなり昔の話です。

それではあとがきで!

楽しんでくれたら幸いです!!



 周囲は歓声で賑わい、そこらかしこで人々が踊りだす。

 これは毎度の事であるため、周囲で一行を見ていた冒険者達は嫉妬からか、辟易していた。

 ガシャガシャと、鎧や、剣等、揺さぶられるいくつもの音が、前へ前へと進んで行く。

 一行が辿り着いたのは一つの大きな家。この区で一番の豪邸と言っても過言では無かった。

 

 扉の前には一人、青年が一行を待つように仁王立ちしていた。


 「おいっ! アルフ! 今日こそは俺が勝つ!!」


 「……はぁ、そろそろ辞めにしませんか? 恒例行事みたいにされるの嫌なんですけど。ほら、見てくださいよ。こいつらの目」

 

 アルフ、と呼ばれるエルフは親指を後方に突き出す。

 凛々しい青髪が風に揺られ、蒼穹を映す瞳が青年を見据える。


 青年は言われた通りにアルフの後方を覗いてみると、6人の冒険者がこちらを見ており、中には笑っている者もいた。更にその後ろには大勢の冒険者達がおり、彼等は6人の冒険者に白い目線を流していた。


 「ガッハッハ!! 見ろよ、また来やがったぜ! あのクソガキ!」


 「それにしたって、懲りないねぇ……」


 「ふふっ、可愛いじゃない」


 「うっわぁ、ババアがなんか言ってら─ ─ァァァァァァ!!」


 「……邪魔。……さっさと殺せ。……時間の無駄」


 各々が好き勝手言う様に、青年は唖然としていた。

 豪快な肉体を見せつけ、青年を笑う茶髪のドワーフ、呆れる鬼人、妖艶なエルフに殴られている小さい人間と、ローブで顔を隠す毒舌な人間。

 そして─ ─


 「いーじゃねぇか。ボコして発破かけときゃ、迷宮区(ここ)も成長すんだろ」


 二振りの剣を持つ黒い短髪の人間があくびをしながら青年達を見ていた。


 「はぁ……私もこんなことはしたくないのですが……」


 「うっせぇ!! 問答無用ッ!!」


 呆れているアルフを見て苛ついたのか、憤怒を軸に青年が彼に向かって駆け出す。その速さは神速とも呼べる速度で、一介の冒険者如きなら何も出来ず、何も気づかずに終わってしまう時間。

 だが─ ─


 「がッ?!」


 「─ ─あまりにも脆弱。毎回よくそれで私に刃向かってこれますよね……」

 

 勝負は一瞬にして終わってしまう。青年がアルフに剣を放とうとする三歩前に、既に地に伏せられていた。

 何も出来なかったその無力さから、青年の瞳に涙が滲む。


 「くっ……そぉぉぉ!!! 覚えとけよっっ!! 次こそは……次こそはぁぁぁぁ!!!!」


 「いや、もう来なくていいんですが─ ─聞こえてないですね……」


 倒れた青年にアルフが声をかけようとしたが、既に青年は駆け出しており、路地をとんでもない速度で突っ走って行った。

 その様子すら、冒険者達は笑い、アルフは疲れたように嘆息した。


 一行は笑い合いながら(一部心底呆れ)、家の中へと入っていくのであった。






※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※






 「お、お帰り、みんな!」


 「おう、坊主。留守番助かったぜ」


 扉を開き、出迎えてくれたのは一人の少年。歳は8歳程で、とても気弱そうな印象が見て取れる。

 ドワーフが彼の頭にぽん、と豪快な手を置きながら褒め讃え、すぐに自室へと入っていく。その他大勢も、少年に帰還の旨を告げて自室へと入る。

 だが、最後まで双剣を持つ男はその場を離れなかった。

 彼は目線を合わせるためにしゃがみ、ニヤニヤしながら少年を見詰める。


 「ほぉーん、お前に女ねぇ……」


 「?!?!?! えぇっ?! 何言ってるんですか、『団長』!?」


 図星なのか、とても分かりやすく少年は動揺し、ドタバタと軽く暴れる。そのせいか、上から彼に怒号が飛び、大人しくなる。


 「ほら、さっさと出てこいよ」


 団長と呼ばれる男性が、そう呼びかけると少年の後方にある物置の扉がゆっくりと開き、二人の華奢な少女が出てくる。彼女達は顔が信じられない程そっくりで、美しい白い髪と、瞳を有しており、誰でも見惚れてしまいそうな程綺麗だった。

 片方は長髪を二つに分け、もう片方はそのまま降ろしていた。


 「あー! クリフんとこのか!! でかくなったなぁ」


 「久しぶりです! おじさん!!」


 「……こ、こんにちは……」


 「おじさんって……あーでも、俺ももう32だしなぁ……」 


 急に弱点をぶん殴られたかのように倒れ、落ち込む団長を見ても、少女達や、少年はそこまで気にしていなかった。非道。あまりにも無邪気な非道であると、団長は更に項垂れる。


 「てことは、お前らがコイツのことを見ててくれたのか! ありがとよ」


 「ふふん! 私達凄いでしょ!!」


 「……頑張った……」 


 「─ ─うぅ……、僕だけでも留守番なんて余裕だった!!!」


 顔を真っ赤にした少年が団長に怒鳴りこむが、それを少女達が「何を言っているんだ」と言わんばかりの顔で止める。


 「あんた、初日で野良犬に襲われて泣きべそかいてたのに何言ってるのよ!」


 「……料理しようとして火傷しても大泣きしてた……」


 「っ───────!!!!!」


 今度は羞恥で顔を真っ赤に染め上げ、その場から退散してしまう。そんな普段の様子に何も無かったかのように、彼女達はちゃっちゃと身支度をする。


 「勝手に入ってごめんなさい!」


 「いや、アイツを世話してくれて感謝してるよ。またいつでも遊びに来い。クリフにもよろしく伝えといてくれ」


 「……わかった……。……ばいばい、おじさん……」


 「……。あぁ、気をつけて帰れよ」


 夕暮れ時、最後まで少年は顔を見せず、彼女達はこの家を後にした。最後の最後まで団長は弱点を突かれて心にダメージを喰らったが、子供だからしょうがないと思い、彼女達を見送る。


 「……良かったのか? 見送んなくて」


 「……いい」


 「はぁ……。─ ─お前一回アルフに教育されて来い」


 少年は目を真っ赤にしながら、彼女達が過ぎ去った後を眺めていた。そんな様子を呆れながら団長が見詰め、しばらくして家の中へと引きずり込む。なんたって、彼は2時間も眺めていたのだ。いい加減入れと団長がキレて少年の胸ぐらを掴み、家の中へと無理矢理入れさせたのだ。



 「……何? アルフ兄(にい)」 


 「私が呼んだわけでは……そもそも、色恋の沙汰が苦手と言われているエルフの私になぜこんな……、こんな雑事に呼び出されなければならないのですか……」


 日夜このクランに心底、し・ん・そ・こ、辟易しているエルフは今日も眠そうにしながら、深夜に少年の部屋で向かい合って椅子に座っていた。


 「ん゛、ん゛ん。……それで? 貴方は何時まで子供でいるつもりなんですか?」


 「っ……」


 「はぁ……、そろそろ軽蔑しますよ? 貴方は雑用とはいえ、世界最強クラン、『天(・)頂(・)の(・)円(・)卓(・)』の一員なんです。自覚を持ってください」


 彼等が掲げるのは『世界最強』の看板。それは栄誉であり、とてつもなく重(・)い(・)ものでもある。彼等の行動一つ一つには大いなる責任が伴い、ガナムンド大帝国や、魔国ベネムの抑止力にもならねばならない。

 その事実をアルフ・フリスターはしっかりと少年に伝え、自室へと戻って行った。


 少年は椅子に座ったまま俯き、ただ時間だけが過ぎていった。






※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



  



 「はッ! はッ!」


 「早いねぇ。まだ皆寝てるよぉ?」


 朝日が昇る前から大きな庭で剣を振るい、風を鳴らしている少年に声をかけたのは、赤い総髪を指で梳かす一人の鬼人。


 「! ユクル、おはよう!!」


 「ん、おはよう」


 ユクルと呼ばれる細目の鬼人は巷で流行っている『着物』という異世界から来たもの達が伝えたとされる服を着て、腰には『刀』という『剣』とは似ているようで、少し違う得物を所持していた。彼の右目はいつも髪で隠れていてよく見えない。


 「うーんとなぁ。ワイも、剣なんて滅多に使わんからあんまりわからんのだけどぉ……」


 ユクルは少年から剣を借り、構えようとしたその瞬間─ ─


 「─ ─っ!?」


 空気が変わった。


 少年が構えたときとはまるで別次元─ ─いや、比べるのも失礼過ぎる程の差が、そこにはあった。ただ、構えただけ。されど、構えただけ。『構え』その一つの動きで戦況すら変えかねない。

 冒険者にとって当たり前の動作であり、奥を知ると更に難しい動作でもある。


 それをいとも容易く行うのが、『最上位冒険者』達。

 鬼人─ ─彼の名はユクル・スラスト。


 又の名を─ ─『青嵐』と言う。



 「疾ッ─ ─!」


 「なっ?!」


 一振り。剣を振るうだけで、空が哭き、地が震えた。

 剣は軽い暴風を巻き起こし、散らかっていた落ち葉を一蹴する。


 「わかったぁ?」

 

 「……強過ぎることくらいしか分かんない」


 そんな答えを出すと、ユクルは呆れたように少年から目を背けた。 


 「じゃー駄目だぁ。見てる場(・)所(・)が違う」


 「?」


 「おめぇ─ ─自(・)分(・)に(・)は(・)出(・)来(・)ね(・)ぇ(・)って思ってるだろぉ?」


 「……! ─ ─」


 それは確信めいたものだった。

 少年は団長や、アルフ、ユクル達を『至高』だと思い込み、『凄い』としか思っていなかった。でも、それでは駄目だとユクルは彼に伝える。

 

 「おめぇは次の世代の看板になるかもしれねぇ……。俺達を越(・)す(・)想いで努力しないと駄目だぁ」


 「……はい」


 「まぁ、おめぇの代にはあの嬢(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)ら(・)もいるし、大鬼の子(きかん坊)だっているぅ。青(・)んとこのガキだって才能あるぜぇ? 噂の『暴虐』─ ─イカれた女もこれからどんどん伸びていくだろうなぁ」


 昨日の奴(あいつ)も見込みありだしなぁ、と彼は付け足した。どんな攻撃も防ぐ、絶対の防御を誇る双子の女子。犯罪クランを20人、たった一人でボコボコにした鬼の娘。『天頂の円卓』に必死に食らいついてくる『青龍団』の青二才。ハンマーをずっと握り締め、喧嘩ばかり行って噂が絶えず、最上位冒険者でもないのに『暴虐』という二つ名がついた小娘。毎度毎度うちにカチコミに来る馬鹿。

 そのどれもが類い稀なる才を有している。


 「後あれだなぁ、紫の髪のガキ。俺はあいつも伸びると思うぜぇ?」


 「? もしかして、ラ(・)ウ(・)ル(・)の事?」


 少年はいつも自分と仲が良い親友の事を思い浮かべる。

 ラウルは偶に練習相手になってくれるのだ。初めて出会ったのは、『鋼の心臓』という武器屋だった。

 そこで少年とラウルはどちらの剣がカッコイイかという理由で争い、店主にブチ切れられたと言う。その後彼等は度々喧嘩するようになり、いつの間にか仲良くなっていた。


 「ラウルって言うのかぁ。─ ─いいライバルになるなぁ……」


 「?」


 「……おめぇは才能もあるし、努力だってできる」


 「……嘘だ。本当にあるならもうとっくに強くなってる」


 少年は不貞腐れながら答える。

 そんな様子にユクルは苦笑し、言葉を続ける。


 「いーやぁ? おめぇは、ちゃーんと持(・)っ(・)て(・)る(・)ぜぇ? 足りねぇのは、アレだ」


 「アレ?」


 「『死ぬ気概』っつーもんが足んねぇのよ。いつまで経ってもなぁ」


 その言葉には、確かな重みがあった。まるで、自分も経験してきたかのような言い方。いつの間にか不貞腐れていた少年は、その話を真面目に聞いていた。


 「死ぬ……気概? それって、どういう─ ─」


 「─ ─助言(ヒント)はした。『至高』に届くに足る才も持ってる。後は、おめぇ次第だぁ」


 ユクルはそう言い残して、庭から去って行った。取り残された少年はその意味を噛み締めようとしたが、まだ幼いからか、それとも、『覚悟』が足りないからか、その真意を理解出来なかった。


 




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※






 「それでさー! ユクルがさぁー!」


 「……ま、あいつらしいっちゃ、らしいね」


 素振りを終えて家へと戻り、一度シャワーを浴びた後少年は朝食を取っていた。何せこのクランは60名も人が住んでいるため、机だって長い物がいくつもある。

 料理は紫髪のエルフ─ ─メイスト・ウェンベイラがいつも作ってくれる。そのどれもが絶品で、団員達は舌鼓を打つ。

 

 「……ババアのくせに飯は美味いんだよ─ ─ぁ」


 「ん? 何か言ったかしら? ウィン?」


 「ナ、ナンデモナイデスゥ……」


 椅子に座り少年と向かい合う小人─ ─ウィン・フルランドは、その短い緑髪から冷や汗を流しながら、メイストの質問に応えを返す。返答を聞いたメイストはうふふ、と嗤い──邪笑し──ながら、キッチンへと戻って行った。


 「……いいか? 俺からお前に言える事は一つ!」


 「?」


 「……女はコワイ」


 「─ ─ ─ ─」


 教えを聞いた少年は無言で即座に朝食を食べ終わらせ、退席した。聞く価値がないと思ったのだろう。ちなみに、ウィンは朝食後にっこにこのメイストに全ての皿洗いをさせられたと言う。

 団員達は日常茶飯事だと言い、その様子(拷問)を見ても華麗にスルーしていく。

 後ろから聞こえる「助けてェェェェェ!!!」とかいう悲鳴なんて聞こえない。振り返ってはいけないのだ。



 「なんだ、坊主? 今日は迷宮(ダンジョン)か?」


 「うん、第5階層まで行ってくるよ。あそこなら余裕だし」


 心配そうに聞くドワーフ─ ─ガアル・クルストに少年は行き先を答える。

 しかし、その様子にガアルは少し眉間に皺(しわ)を寄せる。


 「馬鹿か、お前は! 迷宮(ダンジョン)ってもんがどれだけ危険か分かっちゃいねぇ!!!」


 「っ! 第5階層くらいなら僕だって何度も行ってる!! 平気だよ!!」


 「ッ……! クソガキが……。どうなっても知らんぞ」


 最後に忠告を残してくれるあたりとても優しいのだが、少年はその優しさに気づかず、ただ自分が弱いと言われたと勘違いしてしまう。


 怒りで頭を真っ赤にしながら彼は自室から武器(長剣)を取って家を飛び出し、即刻迷宮(ダンジョン)へと向かった。



 「らっ!!」


 『グギャッ?!』


 横から飛び出してきた瞳之悪魔(メイザー)を叩き殺し、ずんずんと進んで行く。


 『キュン!!』


 「! 幸運兎(ハッピーラビット)!! 本当に実在したんだ!!」


 少年の目の前に現れたのは一匹の兎。数十年に一度しか見られない程稀少で、冒険者ギルドでとても高く買い取ってくれる。その額なんと約二千万ボルガ。逃す手はない。


 「まてーー!!」


 『キュキュッ!』


 兎は逃げる。迷宮(ダンジョン)の奥へ、奥へと。まるで誘うかのように兎(アルバート)を連れ込んでいく。


 「あれ? どこか行っちゃった……ッ?!」


 『ゥゥゥゥゥ……』 


 兎を追いかけて進んでいくと、いつの間にか彼の前に兎はもういなかった。あるのは見知らぬ場所と─ ─


 「なっ……! 暴虐大熊(ランペイジベア)?!」


 『ウウウウァァァ!!!!』


 こいつのランクは5。本来この階層には産まれない筈だ。つまり、迷宮(ダンジョン)のイレギュラー。少年のランクは現在3であり、更に幼い為、経験も少ない。つまり、勝てるわけが無いのだ。

 

 「や、やだ! あ、あっち行けぇっ!!」


 『ウウウウ!!!』 


 少年は必死に逃げ出すが、奴は逃がすまいととんでもない速度で追いかけてくる。ランク3が、ランク5の魔物の基礎能力に勝るわけもなく、数秒走ったところで追いつかれてしまった。

 更に不運な事に、彼が走った先にあったのは壁。イレギュラーに出会い、更に逃げることも許されないとは、運命の女神─ ─セルフィナ様ですら見放したのかと、少年は思った。


 「だ、だれかぁぁぁぁ!!!!」


 『ウオオオオ!!! ?! ッ──────』


 奴の鋭利な鉤爪で自分の命を絶たれる、その寸前。自分の顔に何かが飛び散った。それは液体であり掌で触って確認してみると、赤黒い血液だった。

 ふと、目の前の巨体を見ると、動きを数秒静止させ、そのまま自分の方に倒れてきた。

 今度こそ終わりか、と思ったが奴は僕の真横に倒れ、そのまま壁に激突した。壁は真っ赤に染まり、地面には血溜まりが出来ていた。


 「あ、あれ……?」


 「おい、大丈夫か?」


 ぽかんとする少年に問いかける者がいた。熊を見ていた少年はそのまま声の主の方に視線を向ける。


 「あ、貴方は確か……」


 「お! もしかして、俺の事知ってる?!」


 「いつもいつもうち(天頂の円卓)に押しかけてきて決闘を申し込み惨敗した挙句敗者の戯言を吐いていく『クラウド・ヘルメリカ』さん、だよ……ですよね……?」


 「ちょっと黙ろうか」


 助けてあげたのになんて言われようだ、とクラウドは心の中で愚痴ったが、相手がまだ幼い為か、暴言は流石に吐かなかった。無論、天頂の円卓(こいつんとこ)の幹部には吐きまくるが。



 「助けてくれてありがとう……ございました」


 「おう、俺は傷を負ったがな」


 そんな言葉を普通に無視し、少年はその場から立ち去ろうとした。


 「おい、ちょっと話そうぜ?」


 「なんで……ですか?」


 「そりゃ、お前が迷ってるように見えたからよ」


 「っ……」


 事実を告げられた少年はその場から動けなかった。そのままクラウドに促され、背中を壁へともたれかからせてクラウドの横へと座り込む。


 「なぁ、少年。お前は─ ─何がしたい?」


 「?」


 急な問いに少年は困惑する。クラウドは笑顔で問いかけているが、彼の瞳は真剣だった。


 「なんで『冒険者』になろうとした?」


 「それは……」


 言葉に……出来なかった。自分が何を成したいのか、自分が何故、冒険者を始めたのか。クラウドは彼が理解出来ないと悟ると、呆れたように立ち上がった。


 「─ ─自分の魂に耳を貸してみろよ。そしたら、自ずと見えてくるかもしれないぜ?」


 「魂って……」


 頑張れよー、それだけ伝えて彼は去って行った。

 その後ろ姿を、少年はいつまでも見つめていた。






※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※






 「……ただいま」


 「おう、お帰り」


 夕暮れ時。少年は玄関の扉を開いて靴を仕舞い、リビングへと向かうとそこにはティーカップに紅茶を注ぐ団長の姿が見えた。


 「……? 団長彼女できたの……?」


 「違うわッッ!! いや、欲しいけどッ!!」


 今度は立場が逆転してしまった。

 少年からすれば、団長は普段紅茶なんかわざわざ自分で作って、わざわざティーカップまで出すなんてありえない!! 

 しかも二つも!!! 

 つまり、彼女が出来たんだ!! 

 と謎に納得してしまった。それほどまで、彼は大雑把で、馬鹿で、どうしようもない人だったのだ。


 ……まあ、尊敬しているのは事実だが。


 今日も弱点を抉られた団長はかなり苦しそうにしていたが、急に少年に真剣な瞳をぶつけたきた。


 「……まあ、ちょっと座れ」


 「? うん……?」


 団長と向かい合った少年の前にはティーカップが置かれ、いい香りがする紅茶を注いでもらった。少年は一口それを飲んだが、あまりに暑すぎて舌を火傷してしまう。慌てて団長が魔術を使用して口を水で潤わせた。その後、また火傷するのが怖いため、紅茶を冷やしてもらった。


 「お前には将来、このクランの団長を継いでもらおうと思ってる」


 「?! なんで?! 僕はこんなにも弱くて、惨めで、みっともない奴なのに!!!!」


 「……」


 ふざけた発言をした団長に、少年は久しく激怒した。何をほざいているのか意味が分からなかった。なぜこんなにも弱い自分がそんな旗(世界最強)を背負わなくてはならないのかと。自分がなれるくらいなら、団長に足る資格の人なんて沢山いると。その思っていたありのままを伝えると、団長は終始笑顔で聞いてくれた。


 「そうだな、お前はまだ弱い。でも、俺たち(第一部隊)が見てるのはそんなとこじゃない─ ─強さなんかじゃないんだよ」


 「じゃあ、何を─ ─」


 「それは……自分で考えるべき事であって─ ─」


 「ッ〜〜~!!! またそれだ!!! 自分で考えろ! 自分で考えろって!!! なんだよ!! 少しくらい教えてくれてもいいじゃないか!?!? ッ……!」


 「お、おい!」


 「もう知らないっ!!」


 少年は心の内を吐露した後、泣きながら走って自分の部屋へと入り、施錠した。

 恐らく今頃ベッドを浸しているのだろうと、団長は俯きながら思った。







 「おい!! 全員起きろッッ!!!」


 「っ?!」


 下の方から聞こえる大声に、僕はベッドから飛び上がった。時刻は深夜二刻。緊急とも言える喋り方に僕は即座に服装を整えて、自室の外へと飛び出た。

 吹き抜けから下の広間を見渡すと、そこには既に武装した団員達が揃っていた。


 「遅い。もっと早く準備しなさい」


 「ご、ごめんなさい!!」


 アルフ兄に叱られ、落ち込む僕を軽くメイスト姉が宥めてくれる。

 彼女に何があったのか聞くと、どうやら街に英龍が飛び降りてきたという。奴のランクは文句無しの10。今までの目撃情報はたったの三回なのに、それほどまでの強さが付けられている。ていうか恐らく奴を見かけた大半は死んでいるのだろう。それで目撃情報が極端に少ないのだ。


 現在、街の中央部─ ─【セントラル】で暴れ回っており、『氷結の庭園』と、『青龍団』を軸に、その他大勢のクランが応戦してくれているという。 

 もちろん、世界最強クランも当然向かう。ちなみに他のクランよりも遅れているのは、場所が一番遠いということもあり、情報伝達が遅れていたのだ。


 英龍が【セントラル】に降り立ってからまだ数十分しか経っていないが、それでここまでの対応は素晴らしいと言えるだろう。

 ほんの僅かな時間でアルフ兄は作戦を皆に伝え、部隊毎に固まって現場へと走り出した。


 僕は部隊にはまだ所属しておらず、街の住民の避難を任せられた。

 ちなみに「英龍がいる所へは絶対に行かないでくださいよ?」、とアルフ兄に言われた。


 ……もちろん、そんなこと知ったこっちゃない。


 住民の避難なんて格好の悪いことなんて僕はしない!

 僕だってみんなと一緒に英龍を倒すんだ!!


 その考えの元、持ち場へ着いた後こっそりと抜け出した。


 

 『おおおおお!!!!』


 「───あ……ぁぁぁぁぁああああああああ!!!」 



 僕が見たものは─ ─ただの絶望だった。



 蒼い龍鱗と翼を持ち、全長は約十M(メール)。漆黒の獄炎(ブレス)を口から吐き出し、一気に数十人の冒険者達や、この国の騎士達を簡単に蹂躙していく。彼等だって、決して弱いわけでは無い。寧ろランクで言えば、5……、いや、6はあった。それが、一瞬で殺されたのだ。

 持っている翼はとても美しかったが、人の血で染まっており、とても見ていて気持ちの悪い物でもあった。


 奴の瞳は本能しか宿っておらず、殺意を向けられただけで、常人なら即死しかねなかった。僕も人目見た瞬間、戦意喪失と共に、その場で漏らしてしまった。


 奴の周辺3K(キド)は焼け野原だけが残り、至る所に死体が転がっていた。それは、この辺りに住んでいた人々や、奴と戦って死んだ者もいた。

 放つ紫色の魔力の瘴気はその範囲すらも越し、10K(キド)程に届いていた。冒険者でもない人間が急にそんな魔力を浴びたら間違いなく死ぬのだが、そこはアルフ兄が戦いながらも極限まで浄化している。後方では、血塗れとなった冒険者達を、ペルカ・クレーティア─ ─迷宮区最強の回復士とも呼ばれている彼女が必死に治療を行っていた。



 その事実を知った僕は発狂し、その場に伏した。



 勝てるわけが無い、勝てると思っていること自体おこがましいと、心の中で自身を叱咤する。

 弱いなんてもんじゃない、僕は───弱すぎる!!!


 その事実に気(・)づ(・)い(・)た(・)少年は瞳を涙で染める。

 わかったつもりでいた。『天長の円卓』では自分は最弱で、他の有力クランの下っ端なんかよりも弱いと。

 でも、少なくともそこら辺の弱いクランのちょっと上くらいはあると、心の中では思っていた。なんてったって、自分は最強の『天長の円卓』に所属しているのだ。弱小クラン如きには負けないと、心の中で気づかない内に驕っていた。


 だが、気づいた。自分は、龍にすら近づけておらず、怖気づいている。弱小のクランですら、奴へ戦いを挑み、儚く散っていくというのに。自分はその舞台にすら、立てていなかった。



 彼等には、『覚悟』があった。『死ぬ気概』があった。


 それに、少年はやっと気づいた。


 自分に足りない物に。



 『おおおおお!!!!』


 「【儚き天の彼方。悠久の雷帝を今ここに】─ ─『天雷王の轟撃(エレクト・ゼウス)』」


 『オオオオオオオオオオオ─────?!?!』


 「疾ッ─ ─!」


 「ぬんッ!!」


 「死んじゃえッッ!!」


 アルフの英龍を覆うほどの轟雷が降り注ぎ、絶叫を上げる。その断末魔ですら、英傑達の咆哮によって打ち消される。

 刀は片翼を堕とし、両刃斧(ラブリュス)は肉を抉り、ナイフは龍鱗を次々に剥ぎ取っていく。


 そんな様子が僕の瞳には、眩しく映った。

 これが、『冒険者』なんだ。

 これが、『強者』なんだ。

 みんなみんな、『覚悟』を持って、戦いに臨んでいる。


 白髪の少女達が戦っている姿が視界の欠片に見えた。


 僕より年上とはいえ、彼女達もまだ十歳。まだまだ幼い。それなのにもう、戦場に立っている。


 ああ、そうだ。僕は─ ─


 同時に僕は何故、『冒険者』になったのかを自覚した。

 



 ……本当にいいのか?


 ……護(・)り(・)た(・)い(・)相(・)手(・)が今も尚戦っているんだぞ?


 ……僕が冒険者になったのは、彼女(サリア)を護る為だ。


 ……何を怖気付いてるんだよ。


 ……戦えよ─ ─



 ……ア(・)ル(・)バ(・)ー(・)ト(・)・ヘ(・)リ(・)オ(・)ス(・)!!!!!




 僕はいつの間にか駆け出していた。

 撒き散らす瘴気や、殺気なんて、いつの間にか微風のように感じた。走りは疾走へと昇華し、背中に背負う鞘から剣を抜き出し、銀の刀身を露わにする。ただの市販品だが、今はそれでも頼もしく感じた。



 『───オオオオオオオオ!!!』


 「う、うわぁぁぁ!!!」


 とある弱い冒険者の目の前に迫るは恐ろしい鉤爪。冒険者は死ぬかと思い、瞳を閉じたが、不思議と痛みは来なかった。何故かと思い瞳を観せると、目の前には二人の白髪の少女が魔力障壁を張っていた。


 「ぐっ……?!」


 「……お姉ちゃん……! ……まずい……!」


 「じょ、嬢ちゃん! 俺なんか置いてけっ!! ここの戦力になる奴の元に行って援護を─ ─」


 自分なんか弱いのだから、強き者の力になれと一介の冒険者は叫ぶが、全ては言わせてくれなかった。

 

 「馬鹿!! それならあんただってここの大切な戦力なのよっ!!」


 「……貴方はみんなの為に戦う『剣』……。……私達は『盾』……。……誰も死なせない……」


 「っ……!」


 もう四十にもなるのに、瞳が熱いなと、冒険者は思った。

 こんな少女に叱咤されたのだ。大人の自分が誠意をみせなくてどうする。


 「ッ……! 嬢ちゃん! 俺の魔力も全部持ってけ!!」


 「! わかった!!」


 姉と呼ばれる方が冒険者の手を握り、彼の魔力をそのまま魔力障壁へと流し込む。

 それでも、奴の鉤爪は勢いを止めなかった。


 『天長の円卓』の人々は奴が放つブレスに手一杯。この状況は自分達でどうにかしなくてはならないと白い少女達は悟る。

 でも、無理だった。

 どうしようもない壁というものが英龍と彼女達の間には存在していた。


 「っ……!」


 「……! ……お姉ちゃん! ……もう駄目……!」


 二人の少女が死を間近にし、多少の怯えが生じる。その隙を英龍は突き、ついに障壁は破られてしまった。

 鉤爪が彼女達を狙い、定め、冒険者は二人の少女を庇おうとするが、鉤爪の速度の方が圧倒的に早かった。

 少女達は壁以外はあまり特出しておらず、ただ死を待つだけだった。必死に、『天長の円卓』の団長達が彼女達を救おうとするが、そうはさないと言わんばかりの大量のブレスの壁が彼等の道を阻む。


 

 そのまま白は赤へと染まり、断末魔を上げる────





 ────かに思われたが、断末魔を上げたのは蒼だった。




 『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ───────────ッッ?!?!?!?!』


 「……? ……誰……?」


 「大丈夫!? ライラ! ……サリア!!!」


 二人の少女がおそるおそる美しい銀の瞳を露わにする。


 彼女達の瞳が写したのは一人の少年。


 最強の旗なんて背負う資格も無く、ちっぽけで、弱くて、惨めで、意気地無しで─────『死ぬ気概』はある少年。



 名を─ ─アルバート・ヘリオス。


 『天長の円卓』最弱の少年であり────



 ────後に頂点へと昇る男の名だ。


  



 「?! アルバートか?!」


 「ガッハッハ!! あの坊主!! やりおった!!!」


 「異力封殺(スキル)を剣に纏(・)う(・)ことによって、擬似的な『覇断』で奴の鉤爪を斬断したのですか……!」 


 「うふふ。まだまだ荒いけど……それでも─ ─」


 「なぁ? 言ったろぉ? 『覚悟』さえありゃ、あいつは見違えるってよぉ」


 「……使える。……悪くない」 


 巧みで、器用で、『妙碗(みょうわん)』と呼ばれる小人。

 小人とは真逆で、大雑把だが、膂力は随一を誇る『轟傑(ごうけつ)』と呼ばれるドワーフ。

 幾千万の魔術を超短文詠唱で使いこなし、戦況を一転させる『賢者』と呼ばれるエルフ。

 一人で数千人に強化魔術をかけられ、1ランク以上もの強化効果(バフ)を与えられる『普天(ふてん)』と呼ばれるエルフ。

 右目を喪い、尚も一太刀で万物を斬る『侍』と呼ばれる鬼人。

 一瞬で何十人もの傷をいとも簡単に癒し、不可能とされていた部位欠損すら再生させた最強の回復士で『聖女』と呼ばれるも毒舌な人間。


 「……あいつは大成するぜ?」

 

 そして、二本の剣を使いこなし、その二振りの連撃で敵に一切の攻撃を許さない、世界最速の剣─ ─『剣王』と呼ばれる人間。 


 各々が、期待の星(アルバート)の一振りに感想を上げ、口角をも上げる。


 遂に少年は蕾を開き、産声を上げたのだ。

 彼の師匠とも呼べる者達はその事実に笑みを隠しきれなかった。


 ランク3が、ランク10を凌駕する化け物の鉤爪を斬断する。このようなふざけた偉業は今まで存在しない。

 近くにいた冒険者達も、少年が弱いことは周知の事実のため、顔を驚愕で染めていた。




 「……アルバート……?」


 「あたし達を、助けた……? ? あのアルバートが? あの、弱っちい?」


 「……いちいち言わなくていいよ」


 泣きそうになるが、我慢だ我慢! 

 ウィンが好きな女には泣き顔を見せるな(本人が恋人にダサいと言われ、振られた為)って言ってた!!


 「……ありがと……」


 「う、うん……サリアが無事で良かったよ……」


 「……」


 どんな顔で彼等のやり取りを見ればいいのかと、ライラは苦悩した。



 


 その後、少年の産声に感化された冒険者達は鼓舞された肉体で、英龍を討伐した。

 少年は鉤爪を絶った後、出番は無かったが、ずっと二人の少女の傍に、『剣』として立っていた。



 「それにしてもすっげえなぁ! あのバケモンの爪を落とすなんてよ!!」


 「……団長が速くサリア達のとこ行ってればあんな真似しなくて済んだ」


 「さーせんした」


 不貞腐れるアルバートを団長は笑顔で見ていた。

 後ろのソファに座っていた第一部隊の皆も、その様子に苦笑する。

  

 アルフ兄、ユクル、ウィン、メイスト姉さん、 ガアル、メトラさん。みんな、僕によくしてくれている。

 

 昔、貧民街─ ─【ミスト通り】で野垂れ死にかけていた僕を、彼等は救ってくれ、衣食住まで与えてくれた。

 彼等には感謝してもしきれない。


 でも、一つだけ、彼等が必ず喜ぶであろう感謝の仕方なら分かる。


 僕が、このクランの団長へと登り詰める。これだ。


 彼等は、次代の不安要素をどうにかしたいのだ。


 なら、僕が次代の頂天へと至り、まとめあげる。 


 必ず─ ─成し遂げるんだ!!!




 ……ああ、でも、そうだな。



 ……それを全員に見て貰えなかったのは残念だ。




 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 




 「アルバート団(・)長(・)? 入りますよー?」


 「うぅ……ん? う、うん、いいよ」


 やべ、寝てた、と心の中で呟きながら即座に寝癖を整え、扉の先にいる団員の少女に声を掛ける。


 「資料を持ってきました」


 「ありがとう。行っていいよ」


 彼女が部屋から出ていった後、ふと棚にいつも入れてある一枚の紙を取り出す。

 それは、アーティファクト『投影機』で作った『投影画』と呼ばれる物で、異世界人達が『しゃしん』と呼ぶ物でもあった。


 そこには彼等と─ ─今はもう亡き人の顔も写っていた。


 一枚だけ残る、『在りし日』の投影画を少し見た後、直ぐに棚に戻した。

 今日も仕事がたくさん残っている。数日後にはカールが弟を連れて来るとメルダが言った。


 (─ ─アルフ兄、ユクル、ウィン、メイスト姉さん、ガアル。そして……団長。安心してくれ、貴方達が築き上げた時代は決して無駄では無かった)


 アルバートは心の中で黙祷を捧げ、瞼を閉じる。

 目を瞑った暗闇の先には、見慣れた者達の姿がはっきりと浮かんだが、彼等はもうこの世にはいない。ただの妄想だ。でも、なぜだか、彼等はいつも自分を見守ってくれるような気がした。


 (……? あれ、何故だろう)


 しかし、アルバートはあることに気づく。

 ……いや、気(・)づ(・)い(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)。


 (団長の顔と名(・)前(・)が思い出せな─ ─)


 (……いや、そんなこと、ど(・)う(・)で(・)も(・)い(・)い(・)か(・))


 一度動きを止めたアルバートは自分に多少違和感を覚えながらも、仕事を進めていくのであった。






※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※






 「おおっと! 危ない、危ない。思い出されるところだった」


 死の大地とも呼べるような場所で座り込む狂著者(オーサー)はそう呟いた。



最後まで読んでいただきありがとうございます!



補足です!

・『天雷王の轟撃(エレクト・ゼウス)』とかアルフが使う魔術は、ユルンや、ベーラですら、半分を軽く超える魔力を消費して、更に短文化しても詠唱が馬鹿長くなるほど強い特級魔術達です。

ちなみに『天雷王の轟撃(エレクト・ゼウス)』を創ったのは術者本人(アルフさん)。


・メイストが使う強化魔術は大体1.2ランクぐらい上げて、更に数十時間持って、5000人くらいまでなら強化させられます。なんと後遺症も残らない!!

リアの強化魔術は約2ランク(具体的には1.8とか1.9とか)もあげますが、二人が限度で、更に数十分しか持ちません。残念。



ここからあとがき(?)



時代は西暦1594年。カイン達は産まれておらず、アルバートですら8歳。

ちなみにカイン達が産まれたのは1600年です。


迷宮区はこの時期が一番強かったです。

ランク9が大量にいて、ランク8ですら足手まといと言われる事もありました。

ですが、格差は酷かったです。上と下の差がかなり激しく、上さえ消えてしまえば一巻の終わりレベルで下が弱すぎました。


しかし、この時代の英傑達が若い世代に発破をかけ、現代ではあれ程まで成長しています。

アルバートは14年の月日を経て、ランク9へと至り、今では『世界最強』とまで言われる程強くなりました。


『暴虐』─ ─クリステラ・アスクは今や『猛火の花びら』を結成し、団長の座を得ています。

きかん坊─ ─メルテス・キラミーはアルバートに下され、傘下に入りました。

ラウルだって、今や【神聖国家セーラ】の王国騎士団、団長です。


蕾は確かに育ちました。

これからは若人(彼ら)達の時代です。

二位とまで言われていた『青龍団』を追い越し、新米の『猛火の花びら』が躍り出たり、『犯罪クラン』の動きが活発になったりと、時代は彼らのせいで動いていきます。


それは時に、刃を向ける事もあるでしょう。


─ ─冒険者達が動かす時代の濁流は、面白くも、恐ろしくも、残酷でもあります。



それらの、『冒険』を乗り越えてこそ、人は────



【英雄】と呼ばれます



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