第54話 古代兵器
『………人間ハ、ヤハリトテモ恐ロシイデス……。話シテイル最中ナノニ……』
「いや、だから、聞き飽きたんだよ」
アルバートさんは他の人達より一歩前へと前進し、目の前の敵に刃を向ける。それに応えるように古代兵器も剣を彼に傾ける。
「まあ、他の形態は皆がやってくれたからね。僕一人で事足りる─ ─!」
『─ ─ホザクナ、デス。人間───『森の英雄』』
古代兵器の剣から無数の樹木が生え、アルバートさんへと襲いかかる。絡めようとしてくる木々はそのどれもが、彼に近づけずに、斬り刻まれる。
だが、それを分かっていたように古代兵器はアルバートへと接近する。あくまでも先程の技は陽動。本命は彼の意識をそちらに向け、背後から奇襲すること一択。
『モウ終ワリデスカ─ ─?』
「いいや? かっこ悪いとこを見せたくないからね。直ぐに片をつけてあげるよ」
『───────ッ?!』
背を斬ったと思った瞬間、いつの間にか古代兵器の剣には、アルバートさんの剣がぶつかり合っていた。
そんな彼の身体能力に俺達は驚く。恐らく俺と兄貴以外は何が起きたか分かっていない。それほどまでの速度だ。
『ッ! マダ終ワッテマセンヨ!! 『神龍王朝の騎士』!!』
「─ ─『女神の擬神槍』」
古代兵器が剣を持ち、まるで龍のようにアルバートさんへと噛みつこうとするが、見覚えのある、『緑の一閃』によって、簡単に吹き飛ばされる。
更には、奴の左腕までも穿っていた。
「………うーん、今回の個体は弱い方だね。ちょっと残念」
『ッ………。イイデショウ。ソコマデ言ウナラ我モ本気ヲ出シマス』
アルバートさんがめちゃくちゃ煽っているせいで、なぜだか古代兵器が静かにキレていると思うのは自分だけだろうか。いや、彼は煽ってはいないのかもしれない。ただ、本心を告げているだけのような気もする。まあ、それが分かるから、奴は余計イラついているんだろうけど。
古代兵器は剣を黄金の杖へと変貌させ、見た事のない魔法陣が幾つも描かれているローブを着用した。
その杖と、ローブからは果てしないほどの魔力を感じた。
ヤバいんじゃないかと俺は思い、アルバートさんの方を見るが、彼は対照的に、その力にウズウズしていた。
戦闘狂………コワイ。
『サヨウナラ。我ヲ怒ラセタ事ガ、貴方ノ敗因デス─ ─『魔導王国の異端』』
「僕達の旅は無限だよ─ ─『女神の擬日輪』─ ─!!」
奴の杖から現れたのはこの場を覆い尽くさんとする、強大な魔力球。あれがもし、迷宮区に放たれたらそのことごとくが消し飛ぶであろう威力。
対するアルバートさんはまるで色違いの太陽かと錯覚するような極光の緑の光を剣から輝かせている。その刃に秘める力はどれ程のものなのか想像もつかない。
やがて、巨大な魔球と、緑の太陽がぶつかり合う。
その衝撃波はどこまでも響き、迷宮内の所々に大きな亀裂が出来ていた。
俺ですら、その大規模な爆発に目を塞いでしまう。
煙が去った後、二つの人影が見えた。
ボロボロのローブに折れた杖を握る古代兵器と、服の所々が少し破れ、素肌を露わにしているアルバートさん。
前者は立っているのがやっとであった。
対する後者はまだまだ戦えそうだ。これが─ ─【世界最強】。迷宮内最強の敵ですら、相手になり得ない。
『フッ………、ハハハハハハハハ!!!!! 素晴ラシイ!! コノ時代ニモコレ程ノ強者ガ!!!』
「…………??」
急に高らかに笑う古代兵器に、皆が驚く。アルバートさんですら瞠目し、そのことから、こんな発言は聞いたことがないのだろうと推測できる。
『コノ時代ニモ』……か。昔はアルバートさんみたいな人が何人もいた、とか? ………いや、ないな。あんなのがたくさんいたら世界が壊れかねない。
『フフフ。スミマセンネ、心ガ高揚シテシマッテ………。次デ最後ニシマショウカ』
「そうだね。まだ本来の目的は終わってないから」
古代兵器は新たな剣を二本、生成─ ─ ─否、顕現させ、左腕を再生する。
奴の両手にはそれぞれ赤と、青の剣が握られていた。
アルバートさんもそれに応えるように、自分の異力を剣へと伝播させていく。
『終ワリデス!!! ─ ─ ─『剣の異端』』
「─ ─?! ………終わりを決めるのは自分だよ─ ─ ─『女神の擬祝福』!」
「「?!」」
アルバートさんが放ったのは、緑の極覇。対する古代兵器が放ったのは─ ─ ─ ─
ディペンダー流 奥義に似たナニか。
両者の剣がぶつかり合い、直後に周囲を白が満たす。
一瞬、迷宮に甲高い音が迸り、直ぐに爆発音へと変貌させる。
彼等のぶつかり合った衝撃波は恐ろしく、俺達ですらまともな防御をしないと、傷を負いそうなほどだ(アルバートさんはできるだけこちらに当たらないようにしてくれてはいるが)。
白が消えると、立っているのは一人の男性。
彼の周囲には蒼く輝くオリハルコンの欠片と、古代兵器の頭だけが転がっていた。
奴の瞳は既に光を失っており、起きる気配も見えなくて─ ─
『─ ─カイン───ディペンダー?』
「……は?」
『?!?!』
死んだ、と思っていたのだが、頭だけで喋りだした。そのことに全員が驚きを隠せなくなる。
『─ ─遂二………遂二、コノ日ガ………』
「何を………言って………」
『…………マッテイル。下デ───────』
「!? ちょっ────」
声をかけた時には既に、奴は何も喋らなかった。
暫く周囲は混乱を極め、一時的に沈黙を選択する。
なぜ、古代兵器の技が、ポンス・イリディスに似ていて、更に技名が『ジーク』なのか。
─ ─なぜ、最期に俺の名を当てて、期待を見せたのか。
それは、この場にいる誰も理解することは出来なかった。
◇◆◇
「よし、イレギュラーが無い限り、この場に古代兵器は産まれない! 直ぐにテントを張って休憩をとるよ!!」
アルバートさんの声に皆が即座にテントの設営を始めて行く。
俺も手伝おうとしたのだが、「客人に雑務はさせません!!」と言われてしまい、断られた。
「なぁ、さっきのって………」
「ああ。同じだった」
兄貴ですら、同じ感想を抱いていたことから勘違いでは無かったと安心した。
所々違う箇所はあったが、大体はポンス・イリディスにそっくりだったのだ。更に、技名が『ジーク』。ディペンダー流の開祖であり、俺達の先祖、『ジーク・ディペンダー』と名が同じなのは果たして偶然なのだろうか
「どうだった? 古代兵器は」
「アルバートさん! ………現状では勝ち目が無いと思いましたね………」
「まあ、初めてあんなものを見たら挫折しちゃうのも無理は無いよ」
とても優しくしてくれる彼と、兄貴を見比べると………なんか、うん。となってしまう。
やめてください! 視線が痛いです! 冗談ですやん、兄貴ぃ!
「それにしても、初めてだね。あんな事は。最期は必ず同じ台詞を言って、終わるんだが………」
「はい……名乗ってもいないのに、俺の名前を……」
俺達は疑念を抱き続けたまま休憩を取り、第二部隊以降の後続をこの場に残して、次の層─ ─ ─【深層】へと進み始めるのであった。
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