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叙事詩の進行  作者: あいすに刺さる茶葉
第三章  『迷宮区内乱編』

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第48話 プロローグ オーサー



 『どうですか? 現状は』


 「とても順調ですよ、第二剣(だいにけん)殿。王は殺りましたし、街に甚大な損失も与えた。そろそろですね」

 

 『そうですか、実に素晴らしい。貴方を第十剣(だいじゅっけん)へと入れた時は陛下も少し不安そうでしたが、今の貴方の功績を見ればお喜びになるでしょう』


 「それは嬉しいことです」


 暗闇の中、アーティファクト『通信石』を左手に、筆記具を右手に。魔鋼筆(ペン)を紙に走らせながら、虚空へと話を続ける。


 『それで? 例のご家族は?』


 「あぁ、ちゃんと確保しました。後ほどそちらへと輸送をお願いします」


 『もちろん、それが貴方との契約ですからね』


 話し相手は嬉しそうに言葉を返していく。

 だが、声色からは自分の様子をかなり伺っているようにも聞こえた。


 「ではそろそろ、まだまだ仕事が山ほどあるので」


 『そうですか、こちらとしてはもう少しお話したかったのですが……』


 「……悪いんですけど、俺は貴方の事が苦手なんですよ。切りますね」


 『残念です。ですが、分かっていますよね?』


 「ええ、()()()()()()()()()


 『ふふっ、では』


 石からプツンと何かが切れる音が鳴って以降、声は部屋に響かなくなり、魔鋼筆(ペン)を走らせる音のみが周囲を満たしていた。


 その男は室内でも鎧を装着し、大剣を背負っているせいで椅子がとても窮屈そうであった。

 彼の薄紫色の髪は開放された窓からの夜風に揺られ、閉じられた瞳が静寂を纏っていた。






◇◆◇






 「奴────オーサーは、何百というスキルを手にしています」


 「……前も言ったが、人のスキル所持の限度は一つ。魔人でも二つが限界のはずだ」


 かなり遠いはずなのに冒険者達の野太い声が響き、笑いと酒が飛び交う。

 建物は少しずつだが修復していき、おそらく2ヶ月後には全ての家々が戻るだろう。城はどうなるか分からないが。


 俺の目の前にいるのは潔癖なエルフ───エイナ・サルフェン。

 遂に彼女がオーサーについて知りうる情報の全てを解禁すると言われた為、洞穴へと足を運んだ。


 うん。早速だが意味がわからない。

 前はここで話が終わったが、今回は最後まで聞けるのだ。

 その興奮が冷めぬまま、カインは彼女の言葉に耳を傾けた。


 「そうですね。人間、エルフ、ドワーフ、鬼人、魔人……そして、()()()()ですらスキルをそんなには持てません」


 「竜人と、人狼って、あの戦争で絶滅した種族だよな?」


 『竜狼(りゅうろう)戦争』


 今から二百年前、竜人と人狼は戦争を始めた。

 発端は一人の竜人が人狼の里へと単独で立ち入り、彼等の固有能力『竜化』で竜の姿へと変わり、何百人と食い殺した。

 それで人狼達は激怒して竜人の国へ攻め入り、対する竜人も「そんなことをするはずがない」と、嘘をつき、人狼達と交戦を始めた。


 それは五年続いたらしく、結果両者全滅。


 生き残った者も重症を負い、全て病気や魔物等によって殺されたらしい。


 「そうですね。いや、そんなことはいいんです」


 「カインさん」


 「ん?」


 「『()()』って聞いた事ありますか?」


 「『神人』? 聞いたことないな?」


 誰かの名前なのだろうか。そう思っていたが、次の彼女の言葉によって即否定される。


 「……『神人』というのは種族名。そして今その名を冠するものはただ一人」



 「オーサー。奴はただの『人』ではありません。『神』の領域にいる者なのです」


 「っ─────?!」


 衝撃的な事実と共に。



 「『神人』……その新しい種族は、……その種族ならスキルを大量に持てるってことか?」


 「ええ、その認識で構いません」


 新種族『神人』。オーサーはその種族であり、スキルを何百と持っているという。

 更に神人とは身体能力が極限まで高められているらしく、速度は光速の一歩手前ほど速いらしい。……バケモンじゃん。


 「……どうやって勝つんだよ……」 


 「……」


 俺が零した呟きに彼女は何も答えない。

 少し葛藤しているようにも思える。


 「オーサー……、奴には本当の名前があります」


 「まあ、そうだろうな。名前独特過ぎたし」


 一拍置いて、彼女はオーサーの真名を口にした。


 「■■■ ■■。それが奴の()()です」


 「な、何? 聞き取れなかった。てかそれ本当に名前か?」


 彼女が発したのは聞き慣れない『ことば』だった。だが、俺はどこかで同じ様なことばを聞いたことがあるような気がした。

 そうだ、彼───アラシだ。

 彼は()()()、俺が分からない言語を発していた。それにとても酷似しているような気がする


 「あぁ、すみません。こっちの言語じゃなくて、これは『()()()()』という言語でした」


 「ニホン語?」


 聞いた事のない言語だ。どこの言語だ? ガナムンド大帝国とか?


 「えーと、確かこっちの言語だと……」


 目線を俺の斜め上に上げ、少し考えているような表情をし、数秒経つと、こちらに真っ直ぐ目を向けた。


 「……神楽坂 隼人(かぐらざか はやと)。それが、奴の()()です」






◇◆◇






 「うーん、なんでだろう。カイン君に嵐を助ける理由が無いよね?」


 その言葉は自分の足元にズタズタになって絶命している英龍への問いかけだった。


 「……それに嵐の横にいたエルフ……確かエイナだったよね。いやー、『完全記憶』様々だね」


 「……おかしいよね? いくらエルフとは言えど三百年も生きられるわけがない。エルフの平均寿命は二百五十年。ありえないんだ」


 オーサー─────否、神楽坂 隼人は首を傾げ、困惑した表情をしていた。

 右手に握る剣を英龍に何度も突き刺し、暇つぶしかのように弄んでいる。


 「嵐は元から思考が読めないけど、エイナはなんでだ……? 何かに妨害されてる……?」


 少し苛立ちを見せるその様子は、横で黙って見ていたオーウェンにとって不思議な光景だった。


 「……タイムワープとか? いや、彼女はそういうスキルじゃない。じゃあ、別の人のスキル……? 一体誰が……?」


 考えた思考の末、彼の頭には二人の悪魔の顔が浮かんだ。




 『……ごめんね、ジーク……道を探せなくて……』


 『そんな顔すんなって! 分かってるからよ……』


 右目に眼帯をつけた女は悲しそうな瞳を男に向けて直ぐに洞窟の入口へと視線を戻し、全力で走る。後ろは振り向かない。振り向きたくないのだ。


 ────でも、これだけは

 


 彼女は入口手前で振り返り、敵へと鋭い視線を当てた。





 『お前は()()必ず倒す!! だから私は()()に賭けるよ!!』


 息を吐くように簡単に異次元の魔術と()()を馬鹿みたいに連射してくる【魔女】。


 『お前をこの先へは行かせねぇっつってんだ。黙って斬られとけや』


 自分の身体能力をもってしても追いつけず、僕をあそこまで追い詰めた最強の【剣神】。


 




 自分の心臓がうるさく鳴り響き、頭痛と目眩が襲う。


 「……まさか……ね」


 隼人は少し身震いしながらゆっくりと剣を引き抜き、その場を後にするのであった。






◇◆◇






 「……カグラザカ・ハヤト……?」


 「……奴はこの世界の者ではありません。アラシと共に異世界から来たんです」


 やばいやばい、頭が追いつかない。

 まず、オーサーは神人って言う種族で、スキルを何百と持っているし、身体能力がバケモン。本名がカグラザカ・ハヤト。んで、更にアラシと同じ世界から来た、異世界人。


 「ふぅ……。……てことは昔アラシと友達だった……とか?」


 「いえ、正反対ですかね。アラシさんにとっていじめの対象だったそうです」


 いじめ……あのアラシが……。

 もしかして、それでハヤトは怒って世界をめちゃくちゃにしようとしたってことか?


 「隼人は魔王討伐直後に、その場にいた者達全員を皆殺しにしました。それもほんの一瞬で」 


 「っ───」


 確かにその話は聞いていた。とある奴が反乱を起こしてアラシを除く全員を殺害したと。まさかそれがオー……ハヤトだったとは……


 「私もその場にいたのですが、アラシさんが必死に護ってくれて生き延びました」


 「そう、だったのか……それでアラシはその後あそこに……」


 ハヤトの真実、それを知ったカインは奴の気持ちが分からなかった。

 

 「奴がなぜあんな事をしたのか分かりません……。ですが、『邪悪』……奴の雰囲気はまさにそれでした」


 「邪悪……」


 思えば俺が初めて奴と話した時もまるで道化のような口調だった。

 精神が幼い子供のような……


 「……奴に弱点はありません。勝ち目なんて見えません」


 「……」


 「……でも、貴方なら……いえ、なんでもありません」


 彼女は少し煌めく瞳を俺に見せたが直ぐに闇が覆い、言葉を中断した。

 瞳は俺を見れておらず、逸らしていた。


 「色々助かったよ」


 「いえ、私は……」


 悲しそうな雰囲気を醸し出しながら、彼女はコップに入ったミルクを飲みこむ。

 横で穴の空いた水晶のような物に一瞥をくれ、直ぐに俺に向き直す。


 「……カインさん、この紙に私が知りうる隼人のスキルを全て書き記しました」


 「!」


 「でも、私が知っているのは奴のほんの一部。他にもたくさんスキルを所持しています……」


 「……いや、充分過ぎる。ありがとうな」


 俺は紙を受け取り、入口へと足を進める。

 彼女はそんな俺を呼び止め、声をかけた。


 「カインさん!」


 「ん?」 


 言葉を選ぶかのように少し彼女は思考する様子を見せ、直ぐに口を開く。


 「……闇が訪れても諦めないでください!! 奴は必ず地獄へと落ちます!! だからっ……」


 「お、おいおい?! 大丈夫か?」


 彼女はその言葉と共に目に涙を溜めた。そのため俺は慰めようと近づく。

 だが、自分の掌を俺に向け、こっちへ来てはいけないというサインをした。


 「……私は……貴方を……いえ、さようなら。カインさん」


 「おう! また馬車で会おうな!」


 「……はい」


 俺はその言葉を最後に洞窟を後にした。

 彼女はまだ、涙を瞳に残していた。



最後まで読んでいただきありがとうございます!


三章『迷宮区内乱編』スタートです!

遂にこの話でオーサーの正体について迫りましたね!!

大体の人は分かってたと思いますが笑


神楽坂隼人……? 神人……? と、なってしまった人は『異世界転移した俺は大量の最強スキルを手に入れたので無双します~叙事詩0~』を見ていただければ殆ど分かります!! 読んでねー。


三章は『天頂の円卓』や、他のクランとの関わりが増えてきます!

白恋鬼(メルダ)さんもたくさん登場します!


ただ、この章は自分のモチベが一番低い章です笑

そのせいで投稿遅れたらごめんなさい!


では、第三章スタートです!!

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