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叙事詩の進行  作者: あいすに刺さる茶葉
第二章  『神聖国家セーラ』

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第45話  幻霊



 『───ォォォオオオオオオオオ!!!』


 「ぐっ?!」


 「俺に任しといてさっさと行け!!」


 龍が飛ばす暴風から庇ってくれたのはザイン。

 斧で俺の前に立ち塞がってくれている。


 「助かる!」


 感謝の言葉と同時に俺とユルンは走り出す。

 龍の足へと到達して、そこをよじ登る。

 俺は身体能力が高いから楽勝だが、ユルンは低い為つらそうだ。


 「掴まれ!!」


 「分かったわ!!」


 先にたどり着いた俺が右手で彼女を思いっきり引き上げて、ついに龍の胴体を地へと変えた。

 ドクンドクンと、脈打つ音が五月蝿(うるさ)く、翼が巻き上げる風は俺達を振り払おうとする。


 「……」


 俺はずっと思考していた。どうすればこの巨体を削れるかを。

 今の俺の全力だと、『赤』を出すのが精一杯。

 せめて『奥義』さえ、使えれば……


 そう思っていたのもつかの間、俺の体が軽くなったような気がした。

 いや、本当に軽くなっていたのだ。


 龍の真下にいるのはザインと────リア。

 彼女が強化魔術を使って、俺の身体能力を底上げしてくれたのだ。


 今の俺は身体能力だけなら、ランク9クラス。

 でも、それだけじゃ、こいつを倒しきれない……

 せめて、オーウェンの時のようにもっと力があれば──────


 「?! カイン?!」


 ユルンの声が遠くで聞こえるような気がする。


 力を渇望した瞬間、俺の意識は暗転したのだった。






◇◆◇






 「っ……、ここは……?」


 目を覚ますと、そこはどこまでも純白の空間だった。

 とても広大で、端がどこにあるか見えなかった。いや、そもそも端があるのか……?

 立ち上がって周囲を見渡すが、何もない。

 音も殆ど反響しないその空間に、恐怖すら覚えた。


 『──魔の子よ。よくぞここまで来た』


 「ッ?!」


 何も居ないと周囲は確認したはずなのに、後ろから声がした。

 でも、分かる。こいつは()()()()

 顔すら見ていないのに、とんでもないプレッシャー。

 それは、あの時のオーウェンよりも恐ろしかった。


 恐る恐る後ろを振り返るとそこには────


 一人の男性がいた。

 下半身のみに衣服を着用しており、異世界人が伝えたとされる着物にも似ていた。

 目つきが鋭くて、髪は腰まで長く、美しい灰色をしていた。

 魅せつける肉体はとても鍛え抜かれており、男ですら見惚れてしまいそうなほどだ。


 「……あんたは? それにここはどこだ? ユルン達はどうなった?」


 『そう一遍に聞くな。魔の子よ。余は何人もおらん』

 

 とんでもない覇気に気圧されそうになりながら、剣を引き抜こうとしたのだが……


 「なっ?! ファトゥムが?! どこにやりやがった?!」


 引き抜く白銀の剣はどこにもなかった。鞘だけが左腰に残り、哀愁が漂い始める。


 『当然だろう? 余、そのものが剣であるのだから』


 「……、……、……?」


 ??? 何を言ってるんだ? このオッサン。

 そう考えた瞬間、俺の頭に手刀が飛んだ。

 それもとんでもない速さで。

 見ることなど叶わない、ただ痛みだけが何よりの証明だった。


 「痛ってぇ?! 何すんだ?!」


 『喚くな。非常に耳障りだ。余の話を【聴け】』


 「え、お前が叩い────ッ?!?!」


 それは命令。

 【聴け】の言葉だけで、即座に体が硬直してしまった。

 てかお前が叩いたから叫び声あげたんだろ!! と、心の中で奴を恨む。


 『それでよい。では、まずは自己紹介をしよう』

 

 「……俺の名は───」


 『くどい、【聴け】と言っているだろう』


 「?!」


 指先1つ動かなくなり、口すらも動かなくなった。

 唯一できるのは鼻で息をするくらいだ。


 『ふむ、静かになったな。余の真名はファトゥム』


 「────?!?!」


 『お前の……(つるぎ)だ』


 こいつが……ファトゥム?! 俺の剣?! こいつは何を言って……


 『……信じておらんようだな。では』


 しゅうう……と白い煙を奴は出して、完全に姿が見えなくなる。

 次第に煙は晴れていき、そこには────


 俺がいつも握っている白銀の剣が存在していた。


 『これで信じたか?』


 「?!」


 剣のまま、俺の脳内に奴の声が響く。

 それは神聖さも感じた。


 また煙を出して、奴────ファトゥムは元の人型の姿へと戻った。


 『先程の質問に答えよう。この場は星域……の、亜種のような場所だな』


 「……?」


 『星域』という聞きなれない単語に頭を傾げながら、話を聞き続ける。


 『余はお主達人の『願い』から産まれた存在。確か『幻霊(げんれい)』と呼ばれているな』


 幻霊……聞いたことない単語がまたでてきた。

 歴史書にもそんなのなかったぞ……? 

 以外と歴史オタクであるカインが知らない事などほぼ無いはずなのに、知らない単語が既に2つも出ていた。


 「───」


 『ファトゥムを打った人物は知らぬが、恐らく純粋な力を求めていたのだろうな』


 「……?」


 『お主の横におる女子(おなご)が所持していた『ユグドラシル』もそうだぞ』


 「────」


 『さて、お主を呼んだのは他でもない。というか、お主が余を呼んだのだ』


 「……?」


 『力を欲したであろう? だから一度対面してみたくてな。お前が『願った』瞬間に意識を引っ張ったのだ』


 「!!!」


 確かに俺はあの瞬間、龍を殺せるだけの力が欲しいと渇望した。

 だからここに呼ばれたのかと納得する。

 

 『安心しろ。向こうでは一秒も経っていない。彼女達は無傷だ』


 「……」


 『さて、力が欲しいのだろう? あぁ、今喋れるようにしてやる』


 「プハッ……」


 この野郎、長い間喋れなくしやがって……

 そう思いながら、俺は願いを伝える。


 「あぁ、力が欲しい。あいつを屠ることができる力を」


 『自分の力じゃないのにか?』


 「……確かに、前までの俺は自分だけで、全て解決しようとしていた……」


 『……今は違うと?』


 そんな問いに、俺は当たり前のように答える


 「あぁ……親友に叩き起されたからな。()()に助けて貰うのが当たり前だと思ってる」


 『……』


 「『不可能を可能にする』……。それが俺の信念であり、()()だ!」


 


 『フッ……よかろう。今回は寿命は要らぬ』


 「……そーいえば、前回どんくらい寿命払ったの? 俺」


 確かオーウェンとの戦闘時に寿命を払って力を得たなと思い出して、恐る恐る聞いてみる。


 『ふむ……、確か20年程だったな』


 「に、20年……」


 泣きそうな顔で震えているカインに対して、それでも表情を変えないファトゥムに少しイラッとするが、とりあえず今回は対価を出さなくていいということに安堵する。


 『余がお主に与えられる力は、これが限界だ。使いこなして見せろよ?』


 


 ────────魔の子よ


 

 その言葉を最後に、俺の意識はまたもや暗転したのであった。 






◇◆◇






 「カイン!」


 「ハッ……!」


 目を開くと、そこは黒い龍鱗が足場となり、体制をとるのが不安定な場所であった。

 周囲を見渡すと、心配そうにしているユルンの顔が目に映る。


 「大丈夫?」


 そんな問いかけに、カインは────


 「……あぁ、万全だ!!」


 元気に咆哮をあげる。


 (ファトゥム)を強く握り締め、その熱を確かめるのであった。



最後まで読んでいただきありがとうございます!

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