第38話 強者 対 弱者
ー修正ー
『カウル・ブルファリア』から『ラウル・ブルムドア』へと名前を変更しました。カールに似ちゃってる気がしたので。
後、『マジックアイテム』から『アーティファクト』へと変更しました。マジックは『魔法』という意味ですが、こちらの世界は『魔術』が基本なので変更します。
ご了承ください。
「ぐっ……」
俺はふらつきながらも立ち上がり、もう一度奴に剣の切っ先を向ける。ユルンもまた、魔力を練っている。
「うーん、気概がある事はいいけど、無茶をし過ぎるのも良くないよね」
「あ゛ぁ?」
「そういうのを『蛮勇』って言うんだよ」
「……懐かしいな。その言葉」
俺はある光景を思い出した。
とある少女に蛮勇はいけないと伝えておきながら、自分はそれをやって、結果悪い方へと進んだ。
でも、今回は違う。譲っちゃいけない蛮勇だ。
「蛮勇だろうが、なんだろうが、俺はお前を倒して先へ進む」
「……信念というものはやはり素晴らしいね」
こいつを倒すには『覇断』を撃ち込む。それしかない。
カインはそう考えて、作戦を模索しようとするが奴に隙などほぼなく、実行できるか分からない。
「……いや、『不可能を可能にしろ』って言ったのは俺だったな」
その言葉と共に、俺は奴へと斬り掛かる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!!!」
「なっ?!」
今までに無いほどの激しい攻防。
俺は攻め続け、奴は防御する。
攻撃する隙など一瞬たりとも与えない。考える暇すらも与えない。その一心で俺は連撃を繰り出した。
甲高い金属音が周囲を満たし、50、80、100…とその戦いは何度も続くが、当然俺の体力が先に尽きるのが当たり前。
少しずつ、少しずつ俺の方も防御が増えてくる。
「おや?! もう限界かな?!」
「うっせ!!」
だが、遂に完全な防御に回ってしまい────
「意外と楽しめたよ」
「まだ終わってねぇよっ!!!」
負け犬の遠吠えのようにも聞こえるカインの咆哮は、しかし届かなかった。
なぜなら、奴が詠唱を始めるから。
「女神セルフィナよ。我に神威を授けろ」
彼の大剣がまたもや白く輝き、不可思議な緑の光につつまれる。
「女神の神槍───ッッ!!」
その瞬間、奴の剣から先刻の光の波ではなく、一閃が放なたれた。
防御しても、無駄。そもそも防御の構えを取る前に死ぬ。
ならば攻撃しかない。攻撃ならば防御なんかよりも圧倒的に速度が速い。
それで、奴の技を耐えきり────
その考えはほんの一瞬。1秒にも満たない僅かな時間。だが、彼の思考はいつもクリアな状態であり、充分な時間であった。
さぁ、魅せてやろう。
自らの真価を─────!!!!
「そこの領域にまで達していたのか──!! 君は──!!」
弱者が強者に挑む挑戦権を魅せつけ───ぶつける。
強者は新たな強者の産声に歓喜しながら瞼を開いて黄色の瞳を輝かせ、洗礼をぶつける。
カインの剣の白銀の刀身を不可思議な緑の光に包み込み、解き放つのだ。
その名を呟いて。
「ッ!! 『覇断』────!!!!!!!」
◇◆◇
「カイン───?!」
ユルンの目と鼻の先には白き閃光と緑乱が戦い、片方が砕け散っていた。
先に敗れたのは─────
「はぁ……はぁ……、流石にキツイな」
「ぐっ……、驚いたよ。まさか私に傷を負わせる剣士が彼以外にいたとは……」
白───ラウルだった。
彼の右腕は鎧が剥がれ素肌を顕にし、ゴツゴツとした筋肉から血潮が激しく啼いていた。
「ッ……、こっちもただじゃ済まないって感じか」
対する緑───カインの傷はラウルよりかは少ないが、それでも今までのダメージが蓄積しているため、重症だった。
今現状で一番軽傷なのは私。だから私がカインよりも戦わないと!!!
本来剣士と魔術士の1体1では圧倒的に剣士の方が強いのだが─────一瞬で間合いを詰められて即死終了なのだが─────彼女はそれでも前へ出ようという意志があった。
「フフッ…、アハハハハハッ!!! 面白い! 面白いよっ!! 君はまだ身体も精神も未熟な筈なのに、そこまでの信念を抱くのかっ!!! ハハハッ!!! これりゃああいつにほんっっっとうにそっくりじゃねぇかっ!!!」
「?!」
奴の豹変ぶりに俺は驚愕した。それに何よりも言葉を崩していたのだ。あの紳士的だった奴が。
「やっぱりチュウニビョウじゃねぇかっ!!」
「ハハッ、今はそれも許してやるよっ!」
「あれ、精神攻撃が効いていないッ?!」
ラウルは本当に嬉しそうに言葉を吐いていく。オーサーとはまた違う異質さ。奴には邪悪が宿っていたが、彼は違う。ただ単に本当に嬉しいだけなのだ。また友のような人物が現れて。
「最上位冒険者達でも半分以上が使えないその技をランク7が成し遂げるかっ!!」
「……え?」
その言葉にカインはぽかんとしてしまった。
なぜならカールが言っていたことと違うからだ。
あいつが言っていた言葉は──
『覇断っつうのはな、最上位冒険者達が息をするように当たり前に使える技なんだよ。だから使えないお前らはゴミってことだ』
『『だからの使い所がおかしいと思いますっっ!!』』
「…覇断って最上位冒険者ならみんな使うって兄貴……、カールが言ってたんだが…?」
「カール…? あぁ、『剣豪』か! 懐かしいな! そうか、お前があいつの弟なのかよ!! ん? そういや報告に来た騎士が、城門付近に総髪の目つきの悪い男が襲撃しているって聞いたが、なるほどな。あいつなら誰も敵わねぇ」
奴は崩れた言葉遣いを隠さずにひけらかす。それは俺をちゃんとした相手─────否、敵として認めてくれたのだと、そう感じた。
「…知り合いなのか?」
「あぁ、昔ちょっとな」
「そんな知り合いの可愛い、可愛い弟を虐めていいの?」
「………お前あいつと全っ然似てねぇ程うぜぇな、いやウザさだけは似てるな。かなり。てか、いくら知り合いだからって王の命には逆らえないしな」
奴が話す兄貴との仲は随分と良さそうで、それを壊してしまった俺に嫌気が指していた。
「んでだ、多分カールは世間知らず過ぎるから知らねぇだけで、本来なら『覇断』という技は使える者がほんのひと握り。この国だけなら俺を含めて3人しかいねぇ」
「3人のうちの一人って騎士団の副団長とか?」
「いや、あの人はギリギリ届いてないな。…多分何かしらの負い目があるんだと思ってるよ。俺は」
「てことは後の2人は冒険者か」
「ああ、そうだ。アイツらも相当強えな。カールと同等の奴が1人と、ちょっと劣る奴が1人だ」
「……じゃああんたは?」
「『剣豪』カールと同等……いや、上回っていると自負しているぜ」
「ッ……」
確かに強さで言ったらこいつの方が上だが、戦いやすさで言ったら奴の方が確実にやりにくいと俺は感じていた。
兄貴は技の数が多いのだ。流したり、弾いたり、ぶつけたりと。
それに対してこいつは、殆どが力。だから耐えられている。これに手数が増えたら終わってたな。
「さて、そろそろ動けるよな?」
「律儀に待ってくれたのかよ」
「お前を敵として。ちゃんと相対してぇと思ってよ」
両者互いに切っ先を向ける。
カインは両手で握っているが、対するラウルは左手で大剣をがっちりと握りしめている。
先程は奴の右腕を潰す勢いで覇断を放った為、流石に回復しきれなかったのだろう。その証拠に右腕はピクリとも動かない。
「3発だな、撃てても。お前もだろ?」
「……怖ぇよ。なんで分かるんだよ」
奴の言葉にドキッとするが、傍から見ても分かる。
両者限界なのだ。ラウルは全身のダメージは少ないが、右が利き腕なのに使い物にならないため、左で握らないといけない。
だが、大剣を左で持つのは非常にキツイのだ。持つだけでもきついのに、更に技まで放つとなると、出せて三発。彼はそう判断したのだ。
対するカインは腕の損傷は少なくとも、全身は激しい傷を受けている。先に体力が無くなるだろう。
それはユルンですら見るだけで分かっていた。
「さて、三発ときたらとっておきを見せてやるよ」
「……遠慮したいんすけど」
「そう言うなって。お前も出せよ。出して打ち勝って見せろ」
それを望んでいるかのように、奴は言葉を口にした。
その表情から俺は、奴が嫌々命にしたがっていると確信する。
「そうじゃないと、ここは通せない。だからといって負けてもやらない」
それは強者の威圧。眼光だけで、カインですら少しだけ萎縮してしまうが、直ぐに元の状態を取り戻す。
「そうか、ならお前のチュウニビョウを治してからぶっ倒して先に進んでやるよ」
「……………!!! ……ふぅぅぅぅぅーーー」
多分激怒しようとしたのだろうが、奴は言葉を喉の奥に封じ込めて、剣に緑を伝わせる。
「こいよ、異国の【英雄】。カイン・ディペンダー!!!!」
「王国騎士団団長、ラウル・ブルムドア。お前を倒して俺の目的を遂行する───!!!」
両者は互いに猛り、吼え、ぶつかり合う────!!!
最後まで読んでいただきありがとうございます!




