第37話 月
投稿遅れてごめんなさいm(_ _)m
2回も文が全て消えたっていう言い訳だけしときます。
【大聖教会】。俺達はそれの入口まで来ていた。
辺りは不気味にも静まりながら敵兵一つ見えない。つい5分程前までは大勢が自分達を追い回していたのに。
教会の堂々しさには恐怖すら感じる。
「……でけぇな…」
「急がないと見つかっちゃうわよ。早く入りましょ」
誰にも聞こえないような声で俺達は会話をなして、教会の扉へと手をかける。
──既視感。
ソレを感じ取った瞬間、俺はユルンを抱き抱えてその場を離れた。
その瞬間、大砲が鳴り響いたかの如く、轟音が周囲を満たす。教会のガラスにはそれだけでヒビが入り──砕け散る。
まるで、弱い俺達を指し示しているかのように。
「やぁ、こんばんは。若いお二人さん。今夜は月が美しい」
俺達の目の前に現れたのは大剣を堅く握りしめる男性。
歳は20代後半だろうか。優男とも言えるような奴で意外と若く見える顔立ちをしているのにも関わらず、彼の身体から見える両腕は引き締まりながら堅実な筋肉をしている。
彼の瞳は瞼によって阻まれ、その色を見ることは出来ない。
だが、彼が見ているのは月。確かに、今日は美しい満月。誰もが見惚れてしまいそうな、可憐な輝きだった。
でもなんだろうか。
この……言い表せない気持ち。
う〜〜〜ん………
「どうした? 青年よ。何が言いたい事があるような顔をして」
そんな気持ちを簡単に奴に見透かされ、問われる。
あ、そういえば、異世界人が伝えたとされる言葉なの中にこの気持ちにピッタリなやつがある!! と、カインは思い出してしまった。
彼は意外と異世界の事が昔から大好きで、本に書いてあった『さっかぁ』や、『やきゅう』にも興味がある。
そんな中で、今回彼は一番選んではいけない言葉を選び、口から吐き出してしまう。
「チュウニビョウ?」
「……」
静寂。目の前の男は思考が停止したかのように微動だにしなかった。いや、停止したと言うよりかは処理が追いついていないのだろうか。
「か、カイン? あんまり刺激しない方がいいんじゃないかしら……?」
「え? だって本当の事じゃね? なんだよ『今夜は月が美しい』って。普通にイタ過ぎ───」
「キェェェェッッ!!!!」
絶叫とも言える奇声を上げ、男は大剣を振り回して、こちらに向かって来る。流石に適当過ぎたので、二人とも軽く避けられたが。
「ん、んん! 私の名はラウル・ブルムドア。王国騎士団の団長という肩書きを持つ、しがない剣士だ。よろしく」
カウルは喉を鳴らして、話題を変える。
奴の言葉は真実だと、俺は思った。確かに奴から放たれるプレッシャーは、先程のザインの父親よりも圧倒的だったからだ。
「なるほどね。王国騎士団の団長ともあろうお方がチュウニビョウ……世も末だな……」
「うっせぇッッ!!」
奴は声を荒らげて俺の言葉にキレる。
ただ単に、俺の発言にイラついただけなのか、元々自覚していたからなのか、俺に知る術は無い。
…………多分後者だと思う。
「ん、んんんん!!!! ……投降する気は無いかな? そうすれば、罰は減らせると思う───」
「俺の名はカイン・ディペンダーだ。よろしく」
「っ……」
さらに大きく喉を鳴らしながら、ラウルは彼に警告したが言葉を遮られ、名乗られた。
恐らく彼は逃げも投降もしないだろうと、ラウルは確信した。
なぜならこの状況で名乗る意味が無いのだ。ていうか、寧ろ不利になる。
例えば、彼がこの場から逃げ出せば先程の名前を調べて逃げ場を極限まで減らして追い詰める。まぁ、魔国か帝国に行かれたらまずいが……いや、多分あの山々を越えられる程の実力は無い。
そんな話は置いておいて、名乗るということは相手に情報を提供するということ。わざわざそんな危険を冒す必要が無い。
特に、有名な奴ほど情報は増えていく。
『カイン・ディペンダー』。その名前は私もよく知っている。
元七色のテラス団長であり、迷宮区を半壊させた襲撃者達の中の一人を殺害したと、世間では言われている。彼のことを【英雄】、そう呼ぶ者もいた。
そんな【英雄】様がこの国の城を襲撃か……場合によっては迷宮国との戦争だって有り得る。ただでさえ魔国やこの国に苦労しているのに。
仕事は嫌いなんだよなぁ…それに、アルバートと戦いたくない。
さてさて、名乗った目の前の青年───カイン・ディペンダーは、逃げも投降もせず、私を倒して先へと進むつもりなのだ。
そこには信念すら感じた。同じ剣士として繋がる所があるからなのだろうか。
「カイン・ディペンダー。なるほどね。君があの【英雄】か」
「え? 何? 俺そんな名前で呼ばれてんの? お前と同じチュウニビョウになりたくないな」
「オマエマジデユルサネェカンナ」
酷い悪寒がする。なんでだろうか。
「ん、んんんんんんん!!!!!!! とりあえず、他国の【英雄】さんならこの国も大歓迎だ。今投降すれば騎士団にいれてあげるよ?」
更に更に大きく喉を鳴らして、もう一度勧誘をかける。意味が無いと分かっていながら。
「……俺は英雄なんかじゃない。……寧ろ逆だ、逆。悪人の方だよ」
「そうかい。つまり提案は呑まないと?」
「…ああ。誘ってもらったのに悪いな」
「いや、そちらの事情もあるだろうし仕方ないよ」
そう、分かっていたようにカウルは言葉を零した。
ちなみにお互いかっこいい感じに済ませているが、カインの内心は違う。
うん、めっちゃくちゃいい情報を手に入れた。
ラウルはチュウニビョウ、カウルはチュウニビョウ、カウルはチュウニビョウ………これを使って、あんなことやこんなことを……へへへっ。
そんな最悪な思考をわざわざ『自己境界』を使ってまでしていた。まさに外道。【英雄】なんかよりも前、ザインが言った屑野郎と言う称号が最も似合う。
「さて、そろそろ時間稼ぎはいいか?」
「そういうつもりじゃなかったんだけど…そうだね。そろそろ始めようか」
両者共に真剣に構えを取る。後ろでちょっと眠そうにしていたユルンも直ぐに気持ちを切り替えて、魔力を練るのを再開する。
「じゃあ、いくぜ?」
「ああ、来い! 【堕ちた英雄】、カイン・ディペンダー!!!!」
「私はユルン。よろしくね。輝け、一光! 『星光線』!!」
その相棒の言葉と共に大剣を構えたカウルにカインは走り出す。
一条の光はカインすらも軽く追い越し、ラウルに命中するはずだった───が。
「フッ!」
音を立てずに光は割かれた。2つに別れた光はそれぞれが城壁を穿くが、目の前の男は傷一つ無かった。ていうか疲れてもいない。
だが、ラウルに迫ったのは閃光だけでは無い。
「おらっ!!!」
「ふむ、速さは特出していて、最上位冒険者達にも通用するが、威力がそこまでだな」
奴は俺のファトゥムを軽く大剣で受け止め、更に喋る余裕まであった。
それに何よりも、奴の大剣は重い。
それは大剣だから重量がある。という意味では無い。
重いのだ。意志の強さが。
「猛ろ、業の焔よ!! 『業の炎』!!」
その言葉と共に、奴はその場から飛び退いた。
奴が元いた場所は焦土と化していた。いやいや、ユルンさん? 俺に当てないでよね? 一応魔力障壁は展開されてたけど、ギリギリだと怖いんだよ?
という視線を彼女に送った。流石に分かってくれるだろう。
そんな思いに対して彼女は
(? ああ、なるほど! もっと威力を出してもいいって事よね!! わかったわ!!!)
めちゃくちゃ意味が伝わってなかった。
◇◆◇
「そんなものなのか? 迷宮区の【英雄】は」
「いや、だからそんなんじゃねぇって……」
俺はユルンの元へと下がり、彼女に強化魔術をかけてもらう。効果は攻撃力上昇、防御力上昇、俊敏力上昇、瞬発力上昇の四つ。
効果時間は2分。この時間で奴を倒したい。
「…そろそろマジでいくぜ?」
「いいとも。ならばこちらも、それ相応の力をお見せしよう」
その瞬間、更に奴の脅威度が増した気がする。
大剣が────いや、奴の全身から重々しいプレッシャーを俺の体に浴びせられる。
「じゃいくわ」
そんな軽い言葉と共に走り出す。そして、技を放つ。
「ディペンダー流、『赤』ルーケンス・アフェクトゥス!!」
その瞬間、彼の剣か緋色に輝き、閃緋を生み出す。
赤い閃光はカウルへと迫るが彼もこの国の王国騎士団最強。
そう簡単にはやられない。
「女神セルフィナよ。我に栄光を授けろ」
彼の大剣が白く輝き、不可思議な緑の光につつまれる。
「『女神の月輪』───!!!」
「ッッッ──!!!」
カインの本能がとんでもない警報を鳴らし、今すぐにでも攻撃を辞めて逃げろと叫んでいる。勿論、思考は冷静であるが、どうやっても逃げ切る事はできない。多少のダメージは承知の上で出来る限り相殺するしかない!!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッッッ!!!!!!!」
全身全霊の力で白い光の波を相殺していく。
だが、そう簡単には奴の濁流は止まらない。
カインの肌は所々が焼け始め、血がドクドクと流れていた。
そして、カインの体力がついに尽きてしまう。
彼は白い津波に呑まれる────────かに思われた。
「カインッ!」
「ゲッホゲッホ……、ユルン…?」
「大丈夫?! 直ぐに動けるようにするから!!」
俺の目の前には赤毛の美しい女性の顔がそこにあった。
あれ、なんか北方からすっげぇ冷たい風が流れてくる。なんで?
兎にも角にも、とりあえずは助かったらしい。
俺が死ぬ間際にユルンが攻撃魔術で俺を突き飛ばし、抱き抱えてその場に転がった。
そして彼女は俺を膝枕して今に至るというわけらしい。
あれ、更に冷たくなった? 絶対零度の圧が流れてくるんだけど?
……ちなみに、俺は数秒意識を飛ばしていたらしい。
そんな俺の前に薄紫色の長髪を揺らす優男が砂煙から姿を現す。
奴の瞳は───未だ見えない。
「おお、よく生きていたね。彼女の手助けがあったとはいえ、あそこまで耐えられるとは……驚いたよ」
先程までの技を放ったくせにほとんど汗もかいていない王国騎士団最強に俺は恐怖すら感じた。
こいつは、兄貴と同等────否、それ以上かもしれないと実感したのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!




