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叙事詩の進行  作者: あいすに刺さる茶葉
第二章  『神聖国家セーラ』

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第32話  来訪者



 「だから、その名前はやめときなよ。絶対未来で困る人がでるからさ」


 「いーじゃねーか。カッコよくね?! 『()()()()()()()』って!!」


 「それもダサいし、技名もダサいね……」


 男女が街を歩きながら口論を行っていた。

 内容はネーミングセンス。非常にどうでもいい話だ。女の意見は、その名前ば絶対ダサいからやめろ! と。男の意見は、これは最っ高にカッコイイ!! と、不毛な争いを繰り広げていた。

 見ていた周りの人間は心の中で、女の方を応援する。誰もが男のネーミングセンスがゴミだと思ったからだ。


 女は右目に眼帯を着けて、片手に高価そうな杖を握り、男は二本の剣を携えていた。一般の冒険者が見ても何とも思わないが、丁度そこに出くわしたランク9の冒険者は彼等を見て思った。「あれは人に収まる奴でもないし、化け物なんかに収まるもんでもない……」と、評価しその場から退散した。


 「…さて、()()()。私はそろそろ行くよ。まだ準備が全然終わってないからね。また後で」


 「……あぁ、頼むぜ」


 「そっちこそ」


 そう言い、女は男とは別方向に歩き始める。その瞳に涙をためて。






◇◆◇






 「……オーサーの正体?」


 「はい、そうです。貴方を待っていたんですよ? 私の名はエルナ・サルフェン。種族はエルフです」


 最後に自己紹介をしてくれたが、それ以外との事が何を言っているのか全く分からなかった。彼女がオーサーの正体を知っているのも分からないし、俺を待っていたというのも分からない。そもそもオーサーには精神に干渉するスキルがある筈で、例え奴の正体を知ったとしても、直ぐに記憶から消されるはずだからだ。

 奴の名前を覚えてるってことは……そういうスキルを持っているのか? 脳裏を過ぎるのは俺のスキル『自己境界』で精神系統のスキルを消滅させるか、メルダのスキル『絶対観測』で事象の確定を行うか。

 そういうスキルを持っているならやつの攻撃を掻い潜れる。

 そう思ったのだが、直ぐに心を見透かされ、回答を出される。


 「ああ、オーサーの精神に干渉するスキルですか? それについてはご安心を。私にはこのブレスレットがあるので大丈夫なんです」


 そう言って、エルナは右手首に着けているブレスレットを見せてくれた。それには小さな魔石が仕込まれており、そこに精神干渉を受け付けないようにする術式が組み込まれているのだという。

 ザインと、リアの奴はオーサー(術者本人)が恐らく作った物だから大丈夫なんだろうが……


 「これ、一体誰が作ったんだ?」


 「……今は()()とだけ」


 言葉を濁された。恐らく知られたくないことなんだろう。でもなんだ? その魔女ってやつは精神系統のスキルでも持ってたのか? いや、でも他の人のスキルを妨害するアーティファクトなんて作れるのか? と、様々な疑問が押し寄せてくる。そして、更に彼女から爆弾が投下された。


 「ああ、後、オーサーが持つどこにいても監視するスキルは、この洞窟内なら無効化されるんで大丈夫ですよ」


 「?!?!?!?!」


 俺はユルンが「見られていた」と言ってくれた事を思い出した。そして、彼女は神龍さんが目の前で精神操作をされたのを見たと言っていた。超遠距離でも視界にあれば干渉できるのかと驚いたものだ。だが、そんな事よりもこっちの方が驚きだ。そのスキルも妨害できるって事は魔女は二つのスキル持ち……? つまり魔人か? てか、よくよく考えたらオーサーも二つのスキルを持ってるってことになるよな?! そんな疑問を彼女は解決してくれた。


 「オーサーは……1つや、2つでは無く、大量にスキルを得ています」


 「は?!」


 それは、衝撃的な事実だった。魔人でさえもスキルは2つが限界のはずだ! その疑問を口にしようとしたのだが……


 「待ってください。私が出せる情報はここまで。これ以上先からは、交換条件となります」


 そう言い、疑問を出させなかった。更に交換条件まで提示してくる。とりあえず聞くだけ聞こうと思った俺は彼女の要求を聞く。


 「この国の【首都メリス】には城に覆われている【大聖教会】という場所があります。そこの地下、奥深くに私の友が閉じ込められているのです。彼を……救って欲しい…!」


 大聖教会、高さ20m程ある神聖国家一の教会だ。

 女神セルフィナをとても信仰しており、中には教皇帝という方が住んでいるという。ちなみに城の方にこの国の国王と王妃が住んでいる。国王と、教皇帝の立場は同等らしい。


 「なんでそんな地下に? 罪人とか?」


 「いえ、実験されているんです。彼の力を」


 俺の質問に恐ろしい答えが返ってきた。彼女が言うには彼のスキルが異常に強いらしく、それを自分達の物にしたいため、彼を幽閉し、毎日のように解剖や実験をされているという。

 もっと酷いのは、恐らくそれを国が容認しているのだ。でなければわざわざ大聖教会の地下でやったりせず、もっと辺境でやるはずだ。つまり今回の敵は───


 「はい。この国です」


 「そりゃあまたとんでもない交換条件だな? 俺に死ねと言ってるようなもんだぞ?」


 「でも貴方は、この条件を拒めない。違いますか?」


 「っ……」


 こいつ本当にどこまで知ってるんだ? やつの言い方からして俺がオーサーに恨みがあることを知っているんだろう。てか、出会った時と態度変わりすぎじゃね?! ……あぁ。と俺は納得した。恐らくあの場だとオーサーに監視されているため、ただの少女を演じないといけなかったのだ。こっちが本来の彼女の姿なんだろう。


 「……まず、そいつの事について教えろ。話はそれからだ」


 「…いいでしょう。どうせ貴方はこの提案を呑むのだから…」


 「……」


 本当に掴めない。今どんな心情なのかも何も分からない。しかも、彼女には底知れぬ()()を感じる。それは、力というわけではないのだが……こう…言葉に出せないな……

 そして彼女は話し始めた。その男について。

 



 「…その人は、()()()()()()()()()()()()()()




 「…………はぁっ?!」




 とっておきの爆弾付きで。






◇◆◇






 「彼の名は■■■・■■■。異世界から来たと言っていました。それも他大勢と」


 「待て待て、まず()()が分からない。来訪者が来たってのは知ってるが、それは()()()()じゃ無かったのか?!」


 そう、歴史書にも来訪者が来たとは記されているが、それは大昔で既に故人となっているはず。今も尚、地下に幽閉されていることなんてありえないのだ。


 「そうですね。彼は───今、何年ですか?」


 「は? 覚えてないの?」


 「……ともかく! 教えて!!」


 「ああ、はいはい! 今は1621年だ」


 年を覚えていないことに不信感を抱いたが、急かされたので答える。ていうか、俺が迷宮区に逃げてから、もう11年も経ったのか。その事に俺はあまり実感が無かった。あの街に来た当初、住む場所が無かったため、色々なクランを転々としていたのだ。最終的にフリーのとき、ザインを見つけ、共に過ごしたわけだが。


 「じゃあ、丁度300年前ね。彼等が来たのは」


 「てことは、1321年か」


 「ええ、彼等は女神様と直接会話をして、スキルを得たと言っていました」


 「は?! 女神様って実在すんのか?!」


 もう今日は驚くことが多過ぎる……。女神様───女神セルフィナは空想上の存在だと思ってたが……本当にいたのか……。

 

 「実在します。でも、今はそんな話どうでもいいんです。彼等はその後、この国神聖国家セーラで魔王討伐の依頼を受けたらしいです」


 「まてまて、一回魔王倒してるのか?!」


 「だ、か、らっ! 関係ない話は今はいいの!!!」


 「ア、ハイ」


 怒られてしまった。敬語すら使わずに。急いでいるのかなぜか彼女から焦燥感も感じる。何に焦ってるんだ? まさか、オーサーの手先が来てるとか?! 

 ……いや、流石にそれは無いな。それだったら流石に焦らなすぎるし。そう思った俺は話を聞く事を再開する。


 「そして彼等は様々な事を経て、その時代の魔王討伐を本当に成し遂げました。彼等を祝福しようとたくさんの民衆が待っていた。…………でもその後、()()()()が反乱を起こして、生き残った来訪者達をほぼ全員殺害したんです」


 「は?! たった一人で?! 40人くらいいたはずじゃなかった?!」


 「ええ、まぁ、数人はその前に死んでいたんですけど、その場にいた全員を殺害したんです…………たった一人を除いて」


 「それが……?」


 「その彼です」


 「彼のスキルは『()()()()』で、流石の反乱を起こした奴も、彼を殺害できなかったんです」


 「不老……不死……」


 そのとんでもないスキルに驚愕する。そのスキルはどんな怪我も治し、死ぬことはなく、更に老いることもないのだそうだ。……強すぎるだろっ……


 「そう、彼を殺害できなかった奴は、数日で解ける封印を施して、神聖国家のその時代の教皇帝───ギルミスに預けた。そして、こう告げたんです「この国は壊さないでやる。だから、そいつのスキルを解明して、殺せるようにしろ」と」


 「……」


 「だから、この国は最初の方は彼を殺すためにあらゆる手を試したんです。全身を一気に焼失させたり、魔物に食わせたり、回復阻害の魔術をかけたりと……あらゆる手を試した。何世紀にも渡って。それでも……殺せなかった」


 「そんなの……地獄じゃねぇか…」


 「ええ、地獄。なんて生温いのかもしれないですね。毎日彼は苦痛に悶えていた」


 想像するだけで吐き気がする。スキルという物は自分の意思でオンオフできるものもあれば、当然、できない物もある。『不老不死』のように。彼にとってスキルは呪いのような物だったのだろう。毎日毎日、激痛に悶えるのに、死の希望が見えない……そんなの、生き地獄じゃないか……


 「でも、ある時国はその力を応用できないか。と考えたんです」


 「……既にそれが呪いだと分かってるやつが目の前にいてか?」


 「そんなこと考えもしなかったんじゃないんですかね。国はその力を、応用に使い始めた。そのせいで、彼は今も尚苦痛に悶えてるんです」


 「……」


 とんでもない話を聞いてしまった……来訪者、女神セルフィナ、スキル『不老不死』、神聖国家の闇……どれか一つだけでもお腹いっぱいだ。でも、そいつを救わなければオーサーの情報は得られない……

 ユルン達も居ないのに、勝手に決めていいのか……?


 「あ、今ここで決めてくださいね。絶対に」


 ……逃げ道を塞がれた。

 まぁ、どの道決まっていたがな。彼女の思惑通りってのが癪だが。

 俺は椅子から立ち上がり、一人のエルフ、エルナ・サルフェンに応えた。


 「分かった。その交換条件を呑もう。お互いよろしく」


 「! ……。はい! よろしくお願いします!」


 彼女は少しだけ、目に涙を溜め、そう答えた。






◇◆◇






 「んで、そいつをどうやって助けるかだな」


 「()()()()()()()。彼を助ける方法は用意してます」


 「シゴデキって奴だね」













 「…誰か、俺を殺してくれ…」



 暗い闇に呑まれた青年を助ける時は────近い。



最後まで読んでいただきありがとうございます!

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