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叙事詩の進行  作者: あいすに刺さる茶葉
第二章  『神聖国家セーラ』

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第29話  最終訓練



 「よぉ、お前ら」


 ものの数時間で兄貴は小屋へと帰還した。

 俺達は自分の成果を魅せあっている最中だった。


「『貴方を支える(カムフォーティング)癒し(・ヒール)』!!」


「輝け、一光! 『星光線(スター・レイ)』!!」


 「「すっげぇ!!」」


 俺とザインが見たものはとんでもない成果だった。

 リアは見たこともない魔術を使って、自らの肉体を強化していた。あれは本当に強化魔術なのだろうか? 強化魔術だけじゃあんなに強くなれない筈…

 そしてユルンはもっと凄い。上級魔術と特級魔術の詠唱を極限まで短縮しているのだ。特級魔術に関しては少し威力が弱いが、それでも上級魔術とは比にならないほどの威力だ。

 …俺なんて中級魔術でギリギリなのに…


 当然俺達も『覇断』を使用して、そこら中の山を斬り落としたりしていた。


 「何それ?!」


 「はぁっ?! 剣と斧だけであんな威力が…」


 リア、ユルン共に非常に驚いてくれた。俺とザインは裏でハイタッチをして喜ぶ。いやぁ、でもまだ兄貴みたいに日常的に使用するのは厳しい。そこまで行けたら普段の戦闘力が更に向上するのだが…経験の差かな…


 「よしっ、揃ってるな。じゃあお前らに最終試練を課してやる」


 「…なんか嫌な気がするのは気の所為かしら?」


 「大丈夫だよ。今回はお前ら四人でやるんだから!」


 兄貴の笑顔にイラッとする者が数名──否、全員。

 でも皆でできるっていうのはちょっと嬉しい。ザインとは何度か一緒に(ドラゴン)と戦ったが、彼女達とは三年間一度も一緒に戦闘なんてしなかったからな。

 なんならちょっと楽しみでもある。

 まぁでも、兄貴が四人でやる試練とか言ってる時点で不安なのだが…


 「最終試験はシンプルだ」



 そして兄貴は試練内容(その言葉)を告げる。




 「俺を───倒せ」




 「「「「は?」」」」


 そんな素っ頓狂な声が山に響いた。

 何言ってんだ? この兄貴(馬鹿)は。

 俺達が? 兄貴を?


 「「「「…は?」」」」


 考えて、考えて…もう一度素っ頓狂な声が響く。

 それほどまでに意味不明な試練だったからだ。

 

 「は? って何だよ。おら、さっさと始めるぞ」


 次の瞬間、兄貴の雰囲気が変わり彼が戦闘状態に入ると、全員が否が応でも戦闘状態に入らされる。


 ((((いやいやいや無理だって!!!))))


 全員が同じタイミングで同じ言葉を心に零す。

 兄貴──カールはランク8の冒険者だが、実際ランク9でもおかしくないと俺は思う。

 多分だけど、実績が足りなすぎて昇格できないんだ。

 それほどまでの、戦闘技術、思考、身体能力…どれにおいても他のランク8とは一線を画している。

 戦闘技術だけならメルダが追いつくくらいだろうか。



 そんな事を考えている暇があったら来いよ



 そう言わんかのごとく、兄貴は俺とザインに襲い掛かる


 「「ッ?!」」


 ギギギッ……と、金属と金属がぶつかり合い、固定される音を鳴らす。ちなみに兄貴は二刀流なので、片方を俺の剣で、もう片方をザインの斧で固定している。

 2人がかりでギリギリ?! いや、押されてる?!

 その事実に気づいた俺達は兄貴の武器を流し、彼の間合いから離脱する。


 二人を取り逃したカールの目の前に現れたのは───業火。

 後ろには氷柱の群れ。逃げ場はないかと思われた。だが──


 「へっ」


 一秒もかからず、霧散されてしまう。


 「残念。この剣じゃ危なかったな」


 「チートでしょ?!」


 そんな声を荒らげるユルンにカールは走り出す。

 魔術を発動した直後の魔術士には必ず少しの隙が出来るので、そこを狙ったのだ。



 まずいっ!!



 そう思い、かけ出すのだが…


 「速すぎだろ?!」


 全く背中に追いつけない。ていうか引き伸ばされている。

 兄貴はグングンと、ユルンの元に近づいていく。

 

 (デスナイトよりも速いっ?!)


 デスナイトはランク8程度の速度だったが、それよりも圧倒的に速かった。追いつけない?!


 ユルンの目の前に来たカールはそのまま二本の剣を振り下ろすのだが…


 「?!」


 急に彼の足元が泥化する。あれは泥床(マッド・フロア)だろう。久々に見た気がする。そんなことは置いておいて、この隙を逃す訳にはいかない!

 まず最初に動いたのはリアだ。


「『貴方を支える(カムフォーティング)癒し(・ヒール)』!!」


 その強化魔術をザインへと付与する。

 これでザインの身体能力は俺に匹敵する程まで上がった。

 俺と、ザインはカールに決定打を与える為、剣に異力を伝わせる。


 「いくぞ! ザイン!」


 「任しとけっ!!」


 そして、不可思議な緑の光が舞い上がる!!



 「「『覇断』ッッ!!」」


 「チッ!」


 負けじとカールも自らの剣で受け止めるが、そこに異力はそこまで流れていなかった。

 チャンス!!


 「押し切れぇぇぇぇ!!!!」


 「ヴォォォォォ!!!!」


 俺とザインの咆哮が辺りに響く。


 もう少しだっ!


 もう少しで押し切れるっ!!!



 だが、彼等とカールの壁はまだまだあった。



 「ッ!! 開花(ブルーム)、『緑』緑乱舞い!!」


 「「ぐっ……」」


 彼の回転斬りの威力により、俺達は後方20mまで吹き飛ばされる。俺が使う緑じゃあそこまでの威力は出せない…

 次元が…違う…


 「ちょっと油断しすぎたか? そろそろ本気(マジ)でいくぜ?」


 その瞬間、彼の脅威度がグンと上がった気がする。

 そして、彼は()()()

 何よりも()()を知っているカインは警告を上げる。


 「ッ?! 全員散開して防御態勢を取れっ!!!!」


 しかし、悲しいかな。一足遅かった。



 「…開花(ブルーム)、奥義ッ!!」




 「ポンス・イリディス」



 次の瞬間、()()()()が咲き乱れた。

 まず最初に狙われたのは──リア。


 「ぐっ?!」


 魔力障壁など、為す術もなく砕け、背中を斬られる。

 それだけで、彼女は倒れた。

 あれは恐らく『紫』の効果。身体にとんでもない魔力の奔流を流されたのだ。


 次に彼が狙ったのはユルン。

 こちらもリアと同じやり方で撃破され、床に倒れる。


 「おいおい、マジか──」


 ザインが次の言葉を喋る前に、自分の眼前にカールが現れ、剣を振り下ろされる。


 ガンッッ!! と、力強い音が鳴る。それは剣()()と、斧がぶつかり合う音だった。

 

 そして、カールの()()()()が、黄色い閃光を放ち、ザインの右肩を穿った。


 「ガッ?!」


 右肩を穿たれたザインはその痛みに、斧を手放してしまう。

 そんな隙を彼は見逃さない。

 緋色が咲き、ザインの胸を斬り裂いた。


 

 「さて、もう最後か」


 兄貴は倒れたザインを見下ろして告げた。

 まさに圧倒的。あの三人をねじ伏せるまでたった約10秒…

 いくらなんでも常識外過ぎる…


 これが───最上位冒険者なのかよ…


 「カイン、お前にはちょっと痛くするぞ?」


 「なんだ、いつも通りじゃねぇかよ!!」


 俺はギラギラと光る瞳で兄貴を睨み、不敵な笑みを浮かべた。



 まだまだ勝負は終わってない!!



最後まで読んでいただきありがとうございます!

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