第27話 お話し
「おっ! ユルン!」
「カイン! 三年ぶりね!」
ユルンの姿が見えた俺はやっと全員が揃った。そう思った。
ザインとはほぼ毎日一緒だったがユルンとリアは三年も会わなかったからな。小屋には既にザインとリアもいる。
兄貴は…用があると言って少し出かけて行った。
「そういえばさっきカールと会ったわよ?」
「兄貴と?」
「ええ、皆もう小屋にいるって教えてくれたわ」
兄貴は本当にどこ行ったんだよ…でもユルンとすれ違ったってことは彼女が修行してた場所に行った…とか?
まあそんなんは置いておくとして
「全員でどんな修行してどんな成果を得たか話し合おうぜ! ユルンの事を待ってたんだよ!」
「ふふっ…見てなさい私の成果を」
目をキラーンとさせ自信満々に答える彼女には、それを言わせるほどの圧を感じられた。
修行前とは別次元に至っているような気もする。
リアもそうだ。前よりも魔力の密度がかなり違う気がした。
「じゃあお披露目会といきますか!」
ザインが開演の声を高々と上げ、俺達は自らの成果を魅せ合うのだった。
◇◆◇
「よぉ、何年ぶりだ?」
『…貴方が18の時にこの場を去ったので実に六年ぶりですね。こうして面と向かい合うのは』
俺、カール・ディペンダーの前に立つのは神龍メリギドス。
二人は気さくに話し合っていた。
「そうか…まああん時はビビったよ。急に話しかけてくるんだからな」
本来ならユルンは別の修行をつけるつもりだったのだ。だが、
「次にユルン。おめぇだが…」
「な、何をすればいいのよ…?」
『カール、彼女を私の元へ連れてきなさい』
(ッ?!)
「…お前は、とある場所に連れて行く。説明はそこでする」
『すみませんね。あの子がとても気になったので…』
「それは才能がってことか?」
『…いえ、魂の形ですね』
「魂?」
魂の形? どういう意味だ? てかこいつの目には何が見えてんだよ…
『ええ、なんだかとても変な気がしたのですが…あの子の事を知ろうとすれば知るほど分からなかったです…』
「とりあえずお前が変な実験とかしてないようで良かったよ…本当に肝が冷えたぜ?」
そう、だからカールはユルンをこの場所に連れてこさせるのが不安だったのだ。もしかしたら戻ってこないかもしれないとも思っていた。
『私がそんなタイプに見えますか?』
「久しぶりの人間! とか言って俺の身体弄りまくった奴が何言ってんだ」
『フフッ、そんな事ありましたか?』
「てめぇ…一発殴らせろや」
『殴れるならどうぞ?』
「…チッ」
そんな二人の会話はとても楽しそうで、関係柄が垣間見える。
「それはそうと…ありがとな…あいつの面倒見てくれて」
『あら? 貴方が感謝なんて珍しいですね?』
「うっせ。じゃあな。また来るわ」
『…ええ』
とりあえず一言だけ感謝を告げ、神龍の元を俺は去った。
ああ、懐かしいな。あいつの顔を見ると昔の記憶が蘇ってくる。
◇◆◇
「カール、今日は言い過ぎだったんじゃないか?」
「いや、親父が優しすぎるのがわりぃんだよ。あんなんじゃ成長しねぇぞ?」
俺に話しかけてきたのは父─へリード・ディペンダーだった。
彼は元ランク9の冒険者で何やらとんでもないクランで過ごしていたらしい。詳しくは聞いてないが。
「カインの奴泣いてたぞ?」
「泣くぐらいが丁度いいんだよ。じゃないと精神が育たない」
「…なんか俺より師匠してない?」
「いやいや、親父の教え方が悪いんだよ」
そう、親父の教え方は俺からしてみればとても非効率だった。
カインが疲れたら直ぐに休憩を取らせて、間違っても優しく教えてくれる…そんな親父に心底呆れた俺は最初のうちは教わっていたものの、時間が経つにつれて自分だけで練習をするようになった。
勿論分からない所は聞きに行くが、俺には『ディペンダー流』とかいうふざけた名前の剣技の才能があるらしく言われた事は殆ど直ぐに覚えてしまった。
そして、毎朝、毎昼、毎晩、
「カール、このディペンダー流はな!」
「ディペンダー流っていいよな!」
「さっすが初代様! ディペンダー流なんて素晴らしい響だ!」
「っ…………」
ほんっとうにイライラしていた。
正直に言おう『ディペンダー流』? ダサすぎだろ!
姓の名前まんま付けるとか終わってるぞ? まじで。
そんな風に毎日イライラしていた俺は遂に…
「もういい加減にしろ!! 俺は出ていく!!」
「か、カール?! どうしたんだ? 急に、とりあえず落ち着けよ」
「カール、考え直したら? とりあえず話し合いましょ?」
「…」
親父、母さんは俺を止めようとするが、カインは何も喋らない。恐らく俺に嫌気がさしてるんだろうな。
とりあえず、俺は二人の静止を振り切って家を飛び出し、西へ西へと向かっていた。
迷宮区に向かわなかった理由は、直ぐに見つけられてしまうと思ったからだ。
一番の近場だし、最初に二人が探すのはそこだろうからな。
俺は走って、走って、走り続けた。
不思議にも疲れることは無かった。
ただただ、顔に流れてくる風が心地よくずっと走っていられた。
そうして俺は【エデンの園】を通り、山にぶち当たった。
「ここは…【神山】か? 丁度いい。腕試しになるしな」
幼かった俺は直ぐに駆け出し、山を登って行った。
あの頃は自信に満ち溢れていたんだろう。若気の至りというやつか。
山を登っていた俺は─直ぐに絶望を知った。
『グルウォーー!!』
目線の先にいるのは鳥羽竜。
竜の中ではかなり下の方に位置する魔物だが、それでもランク6以上はある。
俺は必死に奴に攻撃を食らわしたが、どれも意味をなさず最終的には簡単に岩壁へと叩きつけられた。
「ぐっ?!」
『グルウォー!!!』
俺が恐怖で動けない隙を奴は見極め、飛びかかって来た。
自慢の鉤爪で俺を切り刻もうとしているのだ。
俺は死を覚悟し、目をつぶった。だが──
「えっ?」
奴は腹に大きな穴を開け、山から落ちていった。
『大丈夫でしたか?』
「っ?! 誰だ?!」
頭の中に直接声が響き、俺は混乱した。
近くに誰もいないし一体誰が…
『私は神龍。とりあえず、お話ししませんか?』
そう言い、自分の前に光が現れた。
光はどんどん延長していき、それが道標だと分かった俺はとりあえず行くところもないので、それに剃って歩いていくのだった。
辿り着いたソコは美しいオリハルコンで出来たルームだった。
ドーム状で出来ておりガラスの様なオリハルコンは今にも砕けそうな程脆く見える。
それは何故か?
目の前に最高硬度金属など塵芥にしか見えないバケモノが存在するからだ。
多分だけど、奴の鱗はオリハルコンなんかよりも全然硬い。
それは勘であり、確信めいたことでもあった。
『こんにちは、人間さん。私は神龍メリギドス。貴方の名前を教えて欲しい』
「…カール・ディペンダー」
『では、カール。なぜこんな危険地帯に? 貴方はまだ子供でしょうに』
「…なんで俺に用があるんだよ? 話はそれからだ!」
こんなにも強い奴があんな竜に負けた俺が気になる? 絶対何か理由があるはずだ! そう思い聞いてみたのだが…
『ああ、久々の人間なのでお話ししたかったんですよ。はい、おしまい。さぁ、私の質問に答えてください』
……とりあえず思った。
こいつなんかウゼェ、と。
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