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叙事詩の進行  作者: あいすに刺さる茶葉
第二章  『神聖国家セーラ』

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第21話  すっごいね



 俺とユルンが、指定していた場所に着くと遠方にザインと、リアが大急ぎで走っている姿が見えた。

 二人はネックレスを揺らし、こちらに走って来る。


 このネックレスは、ヴェル・アルゴノアと、洗脳ザインが身につけていた物であり、効果は『精神攻撃無効』。

 おそらくオーサーが、他の奴に二人が精神操作されないようにしたのだろう。

 だが、これのお陰で二人が精神操作を受ける心配が無いのは安心だ。

 ちなみにユルンは元々精神操作系のスキル、魔術が効かないらしいが、そんな体質聞いた事が無い。


 まあ、兎にも角にもこれから修行を始めるらしい。指導者本人はやはり眠そうである為、心配ではあるが…


 「んじゃ、行くか」


 そう言い、立ち上がる。いや、こいつ何時から寝てたんだ…?

 別行動になってから5時間は経過してるぞ?


 そんな事を考えながら、兄貴(カール)に一行は着いていくのであった。






◇◆◇






 『関係者以外立ち入り禁止』そう書かれている扉を容赦なく蹴飛ばし、開く。

 扉の先には山脈が見えていた。その中でも一際目立つ山がある。おそらくあれが神山―メーリスなのだろう。


 進んで行くと岩が道を何度も邪魔してくる。それに時々出てくる魔物の強さもかなり強い。ランク4程度だろうか? 中にはランク5の個体もいる。


 「おらっ!」


 「フッ!!」


 ザインと俺の声が山脈に木霊する。ここの魔物は迷宮(ダンジョン)よりもかなり硬いような感触だ。

 ザインはオーサーから与えられた力が多少残っているため推定ランク5くらいだろう。その為、ユルンと協力して魔物を狩っている。


 ユルンは流石というべきか、ザインに合わせて矢を放ちながら中級魔術の詠唱を行なっている。特級魔術も使えるやつがなんでランク3だったんだ? いやまじで。

 あいつがランク3だったらもうなんでもありだろ…


 一応言っておくと、兄貴のランクは8。最上位冒険者なので魔物は殆ど寄り付かず、兄貴より弱い俺達を狙ってくる。


 そんなことを『自己境界』で並列思考しながら考えるという異力を無駄遣いするような使い方をして、彼もまた魔物を狩っているのだった。



 「さて、ここら辺に…お、あったあった」


 そう言い、兄貴が指を刺した場所は小さな小屋だった。苔むしている様子からだいぶ年季が経っていると見える。

 周りには広場や、川が流れていた。ちなみに、この小屋から後数百メートルで神山の麓だ。


 「さてお前ら、最初の修行を()()()始める!」


 「はあっ?! 今から?!」


 「ちょっと! こんな大荷物で修行なんてできないわよ?!」


 「ここ何も無いよ?」


 「俺腹減ったんだが…」


 俺、ユルン、リアの文句が兄貴に突き刺さる。最後の発言は置いておいて、本当に今から何すんだ? 見渡す限り岩と小屋しかねえぞ?


 そうして兄貴が口を開き、最初の修行の説明を始める。



 「最初の修行はズバリ、小屋の大掃除だ!!」



 「「「「…」」」」


 四人の無言の圧力が兄貴に深く、深く突き刺さる。


 曰く、あの小屋は兄貴が家出した際に自分で作った家らしく、長年放置していた為とても汚いから掃除して欲しいそうだ。ちなみに自分は用事がある為、「掃除には参加しない!」と言い残して去って行った。

 その時の俺達の瞳がどれほど冷酷で冷たかったのかは言うまでもあるまい。


 「汚ったなぁ! 何これ? いくらなんでも汚すぎじゃない?!」


 「『七色のテラス』で一番部屋が汚かったヴェンを凌駕する程の汚さ…」


 「辞めてやれ。天国で涙流してるぜ? あいつ」


 ユルンがゴミを捨て(ファイア)、リアが箒、ザインが雑巾掛けをしていた。俺は壊れている箇所の修復である。リアの発言にあったが、ヴェンの部屋が汚かったのは事実で、毎日リアから苦情を聞いていた事を思い出す。

 一応、当の本人にその事を伝えたのだが…「俺の部屋は綺麗ですよ?」と真顔で言われてしまった。

 結局俺が説得ができず、リアが直接オハナシ(大激怒)したらしい。いやはや恐ろしいものである。






◇◆◇






 「よぉ、お前ら。ちゃんとできたk」


 兄貴が言葉を言い終える前にユルンとリアが魔術を放った。が、一瞬で霧散した。


 「「ッ!!」」


 「おいおい、発動までが遅すぎるぜぇ?」


 そう言い、驚愕する二人を尻目にいつ取り出したかわからない剣を鞘に収めるのだった。速さに自信がある俺でも「速すぎる」と感じてしまう程の神速。


 これがランク8(最上位冒険者)。次元が違いすぎる…


 「さてと…掃除は終わったみてぇだな」


 そう言い、辺りを見渡す。

 視線の先には苔ひとつなくピカピカで新築同然の小屋と、雑草ひとつない地面が広がっていた。もはや大掃除というよりリフォームに近い。


 ちなみにそんなピカピカの小屋に対して、俺達は埃まみれであった。綺麗な服を着ている兄貴には、ほんっとうに腹が立つ。


 「じゃあ今から、本当の修行を始める」


 その言葉と同時に兄貴の雰囲気が変わった。いつものふざけた態度ではなく、最上位冒険者としての圧力を感じる。


 「まず、カイン、ザイン。お前らには新たなる技を伝授してやる。だから俺が付きっきりで、みっちりとしごいてやるから覚悟しとけ」


 その真剣な表情からとても過酷な修行だと分かる。あの表情は兄貴が父さんに稽古を受けていた時と同じだ。そのことから生半可な覚悟だと殺されると瞬時に理解した。


 「次に、リア。おめぇは基礎からだめだ。体力もねぇ、力もねぇ…」


 「で、でも! 回復士にそんなものは必要…」


 「あ?」


 「ナンデモナイデス」


 苦言を呈したが、即座に兄貴の眼光で止める。あれはやばい。目線だけで弱い魔物なら失神しそうなくらいヤバイ。


 「だから、おめぇはまず山登りを往復でやってもらう。いいな」


 「イエッサー!」


 異世界人が教えたとされる言葉…意味は『貴方様の命令を必ず遂行します!』だ。あの言葉を発するとは…相当な覚悟だな。

 否、ビビってるだけである。


 「次にユルン。おめぇだが…」


 「な、何をすればいいのよ…?」


 「お前は、()()()()()に連れて行く。説明はそこでする」


 「? わ、分かったわ」


 「じゃあ、今日は一旦休んでいいぞ。明日から始めるからな」


 とある場所とは一体どこを刺しているのか、俺には検討もつかなかった。

 だが、兄貴の様子からはとても心配そうな様子が見てとれる。


 カインはそんな一抹の不安を抱きながら、一行と共に準備に取り掛かるのであった。






◇◆◇






 「なあ、カイン。俺達このままどうなっちまうと思う?」


 「さあな。死ななけりゃいいが」


 そんな言葉を交わしながら、俺達は湯に浸かっている。

 神山の地下にはマグマが存在しているらしく、こうして自然の暖かい温泉ができている。

 お湯に浸かる文化、これもやはり異世界人が取り入れたらしい。元はどんな世界に住んでいたのだろうか? 気になる限りだ。


 「てかお前筋肉すげぇな? 男なのに見惚れちまうくらい綺麗だ」


 確かにカインの身体は素晴らしかった。腹筋は綺麗に割れていて、腕や足の筋肉もがっちりとしていて、そこら辺の女冒険者が見たら見惚れてしまう程だ。今見惚れているのは男冒険者だが。


 「え、きもぉ。いや本当に。俺そっち対象外だからね?」


 「そ、そういう意味じゃねえよ?!」


 いつかに発した言葉を再来させながら、身を震わせる。それに対してザインは必死に弁明している様子だ。

 そんなやりとりをしていて、改めてカインは思った。


 

 次は誰も失わせない。悲しませない。と




 「ユルン…その…すっごいね。ナニがとは言わないけど」


 「いやそれ言ってるようなもんでしょ?!」


 カイン達とは別の場所で、女子達は盛り上がっていた。

 リアが感じたのは「絶望感」。自分と彼女の差があまりにも大きく、項垂れていた。


 ユルンの肉体は女性で魔術士あるにも関わらず、腹筋が割れていて腕や、足の筋肉もかなりついていた。極め付けはその胸部。「でかい」その一言に限る。

 それに対して、リアの身体はかなり細身で低身長。これはカールに力が無いと言われて当然の体だった。


 ちなみに、彼女の胸部はユルンと比較にならない程小さく、まさに絶p…

 …これ以上は辞めておこう。彼女の尊厳に関わる。



 その後四人は湯から上がり、食事と休息を取るのであった。



最後まで読んでいただきありがとうございます!

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