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叙事詩の進行  作者: あいすに刺さる茶葉
第二章  『神聖国家セーラ』

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第20話  プロローグ 真実



 「…誰か、俺を殺してくれ…」


 紅い床に大量の注射器の様な物が散らばっていた。

 壁は赤黒く染まり、15、6歳の青年が磔にされている。

 しかし、壁と相反して青年には傷一つ付いていなかった。



 少年の嘆きは暗い闇に吸い込まれていくのだった。






◇◆◇






 「ここが【都市メリス】…? 滅茶苦茶デカイ建物ばかりだな」


 そう言葉を零した俺の目の前には美しい街並みが広がっていた。

 白を基調とした建物が多く、【迷宮区グラン】とは大違いだ。


 「それで? ここで何をするわけ?」


 「ん? 生活用品とか好きに買ってこいよ。俺はその辺ぶらぶらしてるから」


 兄貴は、ふわぁと声を漏らしとても眠そうにしていた。

 何せ馬車の中で殆ど寝ていたのだ。

 ここに着くまで一週間かかったのだが、おそらく8割は寝ていた気がする…


 「なるほど…つまり…」


 何やら神妙な顔をしてユルンがザインに近づき、コソコソと彼の耳元に何かを囁く。

 ハッ! というような顔をしたザインはこっちに近づいてきて


 「なあ、カイン。俺とリアはちょっと買いたいもんがあるから行ってくるわ!」


 とても早口で告げ、リアを連れ街中へと二人は入っていった。

 俺はどうしようかなと考えていると


 「あ、あのーカイン? 一緒に買い物に行かない?」


 「ん? なんで俺まで? 一人で行けば良くないか?」


 そう言うと、彼女は弓を片手で持ち



 ガン!! と音を立てて俺の脳天を殴った。


 「いってぇ?! 何してんの?! ねぇ、何してんの?! 血出てるんすけど?!」


 暴力反対!! と抗議するが、もう一発殴られ、大人しく彼女の言うことを聞くことにしたのだった。




 一方その頃、ザインはリアと共に街を周っていた。


 「本当にすごい街…」


 「まあ、金あるからなぁ…」


 「そういえば、ザインはここ出身だったよね?」


 「ん? …ああ、そうだな…」


 歯切れが悪そうにザインは答えた。

 何せここには()がいるのだから。

 会いたくないと願う。



 だが、その望みは叶わない。



 「あぁ? おめぇザインかぁ?」


 二人が振り返ると、そこにはザインと同じ、茶髪の大男がいた。

 鋭い眼光を持ち、猛者だと感じられる程の肉体を有している。


 「親父…」


 「てんめぇ…、なんで急にいなくなりやがった?!!」


 次の瞬間、ザインの父はザインを殴ろうとする。

 しかし、ザインは恐怖で固まってしまっている。



 キィーン! と音を立て、ザインの父の拳を防ぐ魔力障壁が展開された。


 「リア…?」


 「ほら、さっさと行くよ!」


 そう言ってザインの手を引き、その場から退散するのだった。




 「悪ぃな…リア。迷惑かけちまって…」


 「いつもの事だし問題無いよ」


 さらっと侮辱されている様な気がするが、ひとまず親父から逃げられてよかった。

 もう…あんなのはごめんだからな


 「それで? これからどうする?」


 「とりあえず約束の時間までまだあるし…お前の武器でも買いに行くか?」


 「! 行く!」


 そのはしゃいでる姿は昔のリアのようで微笑ましかった。



 「この辺りで一番いい所っつったらここだな」


 ザインが指を指した先には『工房魂』と書かれた看板が置いてある、小さなお店だった。


 カランカランと音を立て、二人は中へと入る。

 中にはとんでもない量の武器、防具が置いてあった。

 中には滅多に見られない『オリハルコン』を使っている武具も存在している。


 「凄い…」


 「だろ? 自慢の店なんだぜ」


 「ん? もしかして、お前さんザインか?」


 店の奥から店長らしき人が顔を出す。

 見た目から察するに彼もドワーフなのだろう。


「久しぶりだな! おやっさん」


「でかい男になったなぁ…ザイン」


 二人は久しぶりの再会の様で談笑している。

 なんかいたたまれない感じになってしまったリアは一人で自分用の武器を探していた。

 リアが使用する武器は杖、魔力を集中させるための物だ。


 確かに欲しいものはある。あるのだが…


 「た、高い…」


 どれもこれも一級品の武具であり、高すぎた。

 普通の冒険者が使用する武器の値段は平均10万ボルガ。だが、この店に並ぶ品は、1000万ボルガ、5000万ボルガ……中には億単位の武器も存在する。


 「ん、買わねぇのか?」


 「買えるわけないでしょ!」


 ザインの問いかけに、リアが答える。今の持ち金で買えるわけないでしょ!!


 「ああ、そうだな。おやっさんなんか武器くれよ」


 「おうよ。どれがいい? 嬢ちゃん」


 ??? ふぇ?

 こんな高級品を……?


 「おい、急にこんな高価なもん貰うって聞いてリアの頭が混乱してるぜ?」


 「お前が言ったんだろ? なぁ嬢ちゃん。俺はな昔こいつに命を救われたんだよ」


 「命を?」


 「いや、んな大層なことしてねぇよ」


 「ああ、俺が自殺しようとしてた時にこいつは傍に寄り添ってくれたんだ。そして、俺の鍛治の腕前を知ると目を輝かせてな。それが嬉しくて武器屋を始めたんだよ。あの日こいつが俺の腕を褒めてくれなきゃ今のところ……」


 「おい、やめろよおやっさん。俺はなんもしてねぇよ」


 「ハハッ、感謝してんだぜ? お前にはいーっぱいよ。だから、嬢ちゃん。好きなもん取ってってくれよ。そして、こいつを……護ってやってくれ」


 その瞳からはザインに対する親心のようなものが感じられた。


 そうして二人は武器を選び始めるのだった。






◇◆◇






 「これ欲しい!」


 「へいへい」


 お金あんま無いんだけどなぁ…と思いながらもユルンが欲しがっていた髪飾りを購入する。

 値段はなんと8万ボルガ…高い。

 まあ、色々頑張ってくれたしねという心情をひた隠し、彼女にプレゼントするのだった。


 「ありがと!!」


 「ああ、これからも頑張ろうな」


 それにしても、色々と頭が纏まらない。

 あの戦争(じゃんけん)の後、メルダから知っていること全てを教えてもらったのだ。






◇◆◇






 「カイン。貴方は自分の故郷を覚えてる?」


 「? ああ、俺の故郷はランディ村だ。そこで育った」


 まったく質問の意図が分からず、困惑する。そんなカインを他所にメルダは話を続ける。


 「そうだね。じゃあ、村が大量の魔物に襲われて生き残ったのは誰?」


 「なんで知ってんだ? まぁ、生き残ったのは――俺だけ、だ」


 若干の間を空け、答える。多分彼女が自分の事を知っていることに驚きを隠せなかったからだろう。



 「……貴方は…私と逃げたんだよ? カイン」


 「ッ?!」


 酷く、悲しそうな表情の彼女の言葉に、カインは激しく動揺した。

 まるで心の穴が急に埋まってしまったかのような表情を、彼は隠せない。

 それが正しいという確証は無いが、魂が告げていた。

 それは真実だ。と


 「……、証拠は……? 俺が覚えてないんだぞ?」


 動揺を隠せ無いまま、証明を求める。そんな記憶は存在しないからだ。

 

 「ちょっとは気づいたんじゃない? 貴方が()()()()をされてるって」


 「……」


 「貴方が常時そのスキルを使えるようになるまで毎回使用時に頭痛がしなかった?」


 「ああ…」


 「それが何よりの証拠。スキルが自分の脳の異常を検知してるの。貴方のスキルは外からの精神攻撃は防ぐけど、()()内側に存在するものはどうしようも出来ない」


 「……」


 反論する言葉が見当たらなかった。確かにスキルの説明にはそう書いてあったからだ。

 何故彼女が自分のスキルに詳しいのか。それはもう明確だろう。


 「メルダ…君は…」



 そうして、出会った当初思った言葉を告げる。


 「俺の……幼馴染…なのか…?」


 メルダは嬉しそうな、悲しそうな、泣きそうな顔をして答えた。


 「…うん。貴方の幼馴染メルダ・ディンス。貴方をずっと待ってたの」


 凄く泣きたい気分になるこの気持ちは何だろう。

 彼女がいかに大切だったか魂は分かっていても俺は分からないこのもどかしさ。


 「あの日…私と貴方は一緒に逃げていたけど、途中で魔物に追いつかれちゃって…。足を怪我してる私を庇って、貴方は「先に行け!」って言ったの。実際、貴方は剣の才能が無かった。それを分かっていながら私を庇ってくれた!」


 「……」


 彼女はこんなに自分に訴えかけてくれているのに、何も覚えていない自分に反吐がでる。


 魂は分かっているんだ。

 これが真実だと。証拠も何も無いが、彼女の言葉が何よりも真実だと。


 「そして、私は走った。そこで、アルバートさんに拾われたの。その後、彼率いる『天頂の円卓』第一部隊で貴方の所に急いで向かったんだけど…」


 「貴方はそこには居なくて、ただ魔物の死体だけが存在していたの」


 「魔物の死体?」


 「うん。それも推定ランク8クラスの化け物が」


 そんな敵をあの頃の俺が? 絶対に有り得ない。今でさえ勝てないのに。


 「その後私達は近場を探し回った。それでも貴方を見つけられなかったの」


 「ねぇ、覚えてない? あの日の事」


 そう言われ、思い出そうとするが…出来ない。

 自分の記憶には、父さんが己を犠牲にして道を開けてくれてそのままずっと走って、迷宮区に来た覚えしかない。


 でも何だろう


 「……覚えてないんだけど、薄ら閃光が記憶に残ってる」


 「閃光? そんな冒険者聞いた事ない…」


 「それが冒険者だったかも覚えてないんだ。ごめん」


 そう、謝罪を述べる。全てを込めた謝罪を


 「! 違うよカインは悪くないの! 全部、奴が仕組んだことなんだから」


 「奴?」


 「そりゃあ、あれだ。お前が戦った『オーサー』って奴だ」


 そう言い、入ってきたのは兄貴―カールだった。

 俺の戦いをずっと見てたのか?


 「あいつが…」


 オーウェンを動かし、クランの皆を殺した元凶。自分の復讐相手だ。


 「恐らく、全ての元凶はあいつだろう」


 「でも、目的は一体…」


 カールの言葉にメルダは奴が何をしたいのかを考えるが―一向に答えは出ない。


 「まぁ、とりあえずこいつが強くなくちゃお話になんねぇけどな」


 そう言い、兄貴は俺の頭を殴る。地味に痛い。

 でも、言っていることは正しい。俺が弱いからあの日オーウェンに勝てなかった。俺が弱いからオーサーを取り逃がしてしまった。それだけの話なのだ。


 「つーわけで、こいつは連れてくからな」


 「むぅー!」


 そうして、メルダの猛攻を二人で食い止めたのだった。






◇◆◇






 髪飾りを嬉しそうに受け取る彼女を見ながら改めて意志を固める。

 自分の記憶を絶対に取り戻す。そして、絶対に奴らを――





 殺してやる。



最後まで読んでいただきありがとうございます!

2章スタートです! 今回は神聖国家セーラがメインの章です!!

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