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叙事詩の進行  作者: あいすに刺さる茶葉
第一章

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第13話  カインvsオーサー



 カインの殺気と怒気が辺りを充満させる。


「おい、1つ聞くぞ?」


「ん?なんだい?」


 それをものともしていないオーサーは、ニヤニヤとしながら言った。


「お前はオーウェンの味方で、この世の人々の精神を支配しているのか?」


 酷く冷たい声でカインは聞いた。それはまるで、触れるだけで自分を永久に凍らせるかの如く冷たい絶対零度の声質だった。


「そうだよ? それがどうかしたかい?」


「分かった、死んでくれ」


 瞬間カインは目にも留まらぬ速度で走り出し、オーサーに剣を振りかぶった。



「…《紫》ヴェネナム・ニヒラム」



 そう言い終えた直後にザインの片腕は吹き飛んでいた。


「?!」


 オーサーは少し驚いていたが、すぐに()()()で片腕を再生する。


「残念だったね。僕は魔術に詠唱なんて必要無いんだ」


「…まさか気づいてないのか?」


「何を言って…」


 その瞬間ザインの再生したはずの腕は崩れ落ちた。


「ハハッ…まさかとんでもない魔力の奔流を僕の身体に流し込み、肩の細胞を蝕むとは…()()()()()()()()()


 そんな意味深な言葉を言った後肩から先を()()()()()()


「へぇ…肩そのものを自ら破壊したのかよ」


「そうだよ。流石に僕も片腕で斧を振るのには慣れてないしね。それにしても素晴らしいねこの技はこれでオーウェンを沈めたのか」


(確かにこの技ならオーウェン君の足の細胞を破壊し、膝をつかせることができるね)



「よく回る口だな。さっさと死んでくれ」


「嫌だね。僕は君との戦い(ショー)を楽しみたいのさ!」



 現在のカインは怒りと冷徹な思考以外の一切の感情を『自己境界』で塞ぎ込んでいた。

 その瞳には光のない深紅が映っており、躊躇等無かった。


 カインの感情に応じてか、『ファトゥム』も彼に力を与えていた。まるでオーウェンの時の様に。

 それもあり、現在のカインのランクは8と言ってもいい。

 カインはオーウェン戦の時の様な絶大な力を貸し与えてくれないファトゥムに多少の憤りを感じていた。


「…!」


「どうしたんだい?カイン君。先程より速度が落ちているよ?」



 しかし、奴はとてつもなく強かった。技量だけならオーウェンと並ぶ、否それ以上かもしれない。


『キィーン!』とファトゥムと斧が甲高い音を作り出す。

 防ぐ度に、カインの両腕には凄まじい衝撃が走り、骨がきしむ音が脳内に響く。


「……ッ!」


「おっと、防ぐだけで精一杯かな? カイン君。君のそのスキル、感情を制御するのはいいけど無茶な動きをしてるから肉体が追いついていないよ」


 オーサーは嘲笑う。


 ザインの屈強な肉体から繰り出される斧の重圧は、カインが無理やり引き出した『ランク8』の出力を凌駕していた。

 一撃、二撃と受けるたびに、カインの足元の石畳が砕け、膝が折れそうになる。


「……う、うっせぇよ…」


「君の心は今、深紅の復讐心で満たされている。だけどね、それは自分を削る程の君の身に余る力だ。長くは持たないよ?……さあ、そろそろ終演にしようか」


 オーサーが膝をついているカインに、斧を大きく振りかぶった。

 その刃には漆黒の魔力と()()()()()が集束し、空間そのものが歪んでいる。

 カインは悟った。次の攻撃は《青》でも受け流せない。


(……動け…動けよ!)


 カインは心臓を、魔力を、魂を、絞り出すように『ファトゥム』に叩きつけた。

 その時、カインの視界の端で、遠くの空に純白の閃光が走った。


(……ユルン?)


 それは彼女が放った特級魔術の余波か。

 一瞬だけ、『自己境界』で塞ぎ込んでいた冷徹な世界に、彼女の温かい叫びが混じり込んだ気がした。



『大丈夫、カインはいつか必ず二刀流も使えるようになる』



 脳裏に再生されたその言葉が、凍りついたカインの思考を激しく揺さぶる。


「……そうだ。俺には、才能なんて無かった」


「ん? 命乞いかな?つまらないね」


 オーサーの斧が振り下ろされる。



「……だけど、死ぬ気もねぇんだよ!!」



 カインは回避を選択しなかった。

 彼は空いた左手で、腰に刺さっている『予備の短剣』を、掴み取り――



『ガキィィィィン!!』



 凄まじい衝撃。カインの左腕の筋肉が断裂し、鮮血が舞う。

 しかし、不格好な、才能のかけらもないその『二刀の構え』が、オーサーの必殺の一撃を、数センチだけ逸らした。


「なっ……?! 才能がないと嘆いていた君が、二刀を?!」


「……型なんて知るか。俺は、テメェを殺せれば何だっていいんだよ!」


 カインの瞳の深紅に、一点の青い光が宿る。

 ファトゥムが、彼の『執念』に応えるように、これまでで最も激しく、不気味なほどの輝きを放ち始めた。



「ディペンダー流……《緑》」





――『ドゥーク・アド・パラディーズム』





 (…ッ?!)


 気づいた時にはオーサーは遠くに吹き飛ばされ、数秒気を失っていた。


(なる程…あの技は回転斬りだったかな?確か。もう思い出せないくらい時が経ったってことだね)


 思考を巡らせながら自分の身体を再生する。


(でも良かった。もし今の彼が二刀流を使えていたらこの器は粉々に砕け散っていただろうね)


 今のザインの肉体は胸に横向きの大きな斬撃の痕が残っていた。

 その斬撃の深さは心臓ギリギリの所で止まっている。


「フフッ…でも君も結構やばいんじゃない?」



 オーサーの視線の先にいたのは――



「ねぇ?カイン君」



 右腕の骨が砕けたカインだった。


「…」


 彼は疲れ切っているのか何も話さずに、血塗れの左手にファトゥムを握り締めている。


「逃げないのかい?僕の傷はもう元通り、それに対して君は満身創痍ときたもんだ。逃げる以外の選択肢が無いと思うんだけど?」


 そんな余裕そうな声でオーサーは立ち上がった。

 ザインの肉体は既に再生を完了させ、カインを絶体絶命の淵に追い詰めていた。



「…そうか?よく見てみろよ」


「何を言って…」


 その瞬間オーサーは気づいた。


(まさか君は!僕を…僕の()を!!)



 そう、オーサーの斧は先程の斬撃により、砕け散っていたのだ。


「んで?斧が無くなったらお前はどうなるんだ?」


 カインは不敵な笑みを浮かべた。その瞳は先程のような濁った深紅ではなく、鮮烈な青へと変わっていた。


「まさか君は気づいて…?」


「あんだけの魔力密度を持ってて気づかないわけねぇだろ」



 そう、あの漆黒の斧には()()()()にいるオーサーと同じ魂が込められていたのだ。

 彼のスキル『並列魂』によって。



「恐らく、その魂で斧を伝ってザインを強化してたんだろ?って事は本体はとんでもなく遠い位置にいるのか?」


「ッ!!」


 ここに来て初めてオーサーはカインに()()した。

 その姿、口調はとても()()()()()()()()()()()()




『なあ、もっと楽しもうぜ?こんなんじゃ準備運動にもならねぇぞ?』




 オーサーの脳裏によぎるあの男、自分をあそこまで追い込んだ――





「フフッ…アハハッ、確かに今回は僕の負けだ!認めよう!…だがこれは僕の負け、ザイン君の負けではないよ?」


「ああ、分かってる。いつかテメェをオーウェン共々ぶち殺してやるよ」


「出来るものならやってみろって奴かな?」 




 その瞬間ザインは倒れた。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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