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叙事詩の進行  作者: あいすに刺さる茶葉
第一章

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第11話  ディペンダー流



「ディペンダー流ってのは俺の家系で代々受け継がれてきた流派だ」


「ちなみにどれくらい受け継がれてきたの?」


「うーん、具体的な年数は知らないけど大体300年前に生まれたって言われてるぞ?」


「さ、300年も続いてるの?!」


 驚くのも無理は無い。それ程まで長い年月を受け継いできている流派は殆ど存在しないからだ。


「ああ、俺の先祖…『ジークディペンダー』がこの流派を作り出したと言われてる」


「その人はどんな人だったの?!」


「うーん、正確な情報かは知らないけど、山4つを一刀両断したり、千人の魔人を無傷で倒したらしい」


「え、それ本当に人間?なんか別の生物だったりしない?」


 魔人討伐のクエストでの難易度は星6であり、適正ランクは7以上。

 それも一体だけでだ。無傷で千人も倒したとするならば、その者がどれ程まで強いか想像もつかない。


「人間であることは確かだけど、恐らくランク10ではあると思う」


「まあそうだろうね…その人もカインと同じで片手剣だったんでしょ?!1本だけでそんなに倒せちゃうなんてすごいわね!」


「…いや、その人は多分二刀流だよ」


 少しの沈黙を置いてからカインは答えた。その姿からは少し悲しそうな雰囲気が見て取れる。


「え?二刀流だったの?カインと違うんだね」


「…いや、()()()()()()()()


「?どういう事?」


 少し話したくない様な顔だが、カインは話し始めた。


「この剣技は小さい頃から父さんに教えて貰ったんだ。だけど、俺には()()()()()()()()()()()()()


「えっ?!あんなに強いのに?!」


「…本来ディペンダー流は二刀流が基本なんだ。ディペンダー流には8つの型がある。さっき使った《黄》『ヴェールム・ハスタ』もそのひとつだ。

赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、そして奥義この8つの型を()()()()()()()()


「片方の剣って事は…」


「ああ、本来は2()()()()()()()2()()使()()流派なんだ」


「…」


 ユルンはそこから沈黙してしまった。彼が話したく無さそうな顔の理由が分かってしまったからだ。


「だが、俺には二刀流の才能が無かった。辛うじて片手剣で技を使うことができるが…本来の力を使うことは出来ていないんだ」


「オーウェン戦のときは自分の実力不足を痛感したよ。俺が二刀流を使えてれば奥義で深手を負わせられたかもしれないのに…」


「…その、奥義ってのはどういう技なの?」


 少し聞きづらそうにユルンはカインに聞いた。


「奥義は6つの型を全て連続で使って、崩したところを最大火力の《赤》で相手を屠る剣技だ。俺の場合は7連撃だったが、本来は14連撃だな」


「それってめっちゃ難しそうじゃない?さっきの剣技…《黄》ですら凄い疲れて無かった?!」


「ああ、今の俺の実力だと奥義は使えないし、他の技でも1発打ったらここまでバテちまう。オーウェンの時は一時的に力を得られていたから奥義を使えたが…今じゃ最初の一撃しか使えねぇ、ハハッ…こんなんじゃ復讐なんて出来るわけねぇよ…」


 カインは悲しそうに笑った。自分がどれ程弱いか理解しているからだ。


 そんなカインを――



「?!ユルン?」



 ユルンは抱き締めた。


「大丈夫、カインはいつか必ず二刀流も使えるようになる」


「…」


「オーウェンなんかすぐにやっつけちゃうわよ!」



 彼女の身体は何故だか冷たい様に感じ、 迷宮(ダンジョン)内に少量の雫が零れ落ちた。






◇◆◇





 休憩した後、カイン念願の第51層―下層へと向かった。

 道中の魔物はカインが難なく討伐し、息が上がるということも無かった。



ー第51層ー



「ここが…下層…」


 感慨深いようにカインは言った。


「ギルドの情報にもあったけど、下層からは景色が変わるのね…」


 そう言ったユルンの目には、いっぱいの自然が広がっており、草木の匂いや、陽光が差し込んできた。


 下層からはただの石造りでは無く、森や、山、洞窟等様々な地形となっている。

 そのため中には観光名所と言える場所もあるのだ。


 第51層は『栄光の緑』と呼ばれており、魔物の出現が少なく意外と人気がある。


「…ここを皆と見たかったな」


「カイン…」


 寂しそうにカインは言った。

 本来なら『七色のテラス』全員でこの景色を見るはずだったのだ。

 

 少しその辺を歩いているとカインは先程の様子とは変わり、穏やかな雰囲気を醸し出していた。


「…ユルン」


「何?」


 見渡す限り大自然の中、少し恥ずかしそうにカインは話した。


「その…なんだ。ユルンは今どこのクランや、パーティにも所属してないんだよな?」


「うん、そうよ?」


 カインは何故だかモジモジしていてそこから先の言葉を紡がない。

 それにイラッときたユルンは


「何よ?!早く言ってよ!!」


「…そ、その俺とここから先パーティを組まないか?」


 それは一種の告白の様にも聞こえるが、カインにそんなやましい気持ちは一切ない。

 色恋関係無く、ただ純粋にこの人と組みたいと思ったからだ。


「その、いいの?私で。もっと他に強い人はいっぱいいるわよ?」


 本当はカインと組みたいという思いを押し殺し、そう聞いた。

 彼はこの先復讐を果たそうとしている。それなのに自分みたいな足手まといがいてもいいのか、そう考えたからだ。


「ああ、君は俺と同じ様な境遇だから辛さを共有できる…そんな自分と近い位置の人と組みたいと昔から思っている。その、どうだ?俺と組んでくれないか?」


 頬を赤らめカインはもう一度聞いた。

 彼女の答えは―


「私も貴方とパーティを組みたい…その、だからこれからもよろしくね?」


 彼女も頬を赤らめそう答えた。


「あ、ああ!よ、よろしく!」





 その後2人は地上へと戻って行ったが、会話は少なかった。

 勿論羞恥心でだ!!


 ちなみに近くでカインの告白(パーティ勧誘)を見ていた者達は完全に告白と勘違いしており、近くに寄ってきた魔物を彼等に近づけさせない為に全力を尽くしていたという。




◇◆◇





ー第4層ー



「いや、6日もかかっちまったな」


「そうね」


 第51層に至るまでの時間はおよそ2日程であり、帰りは行きの2倍かかっていた事になる。

 当然2人の羞恥心が原因である。


「ん?なんか騒がしくねぇか?」


「そうね」


 2人は気になり、近くにいる冒険者に聞いてみると


「君達知らないのか?!今街は何者かに襲撃されて大被害を負っているんだ!」


「「は?」」


「だから現在この迷宮(ダンジョン)の上から数階層は避難区域になっているんだ…っておい!どこ行くんだ?!お前らもここで待ってろよ?!」


 話を聞いている途中だったが、2人は全力で駆けた。街を護りにいくために。





◇◆◇





 門番の静止を振り切り、2人は迷宮(ダンジョン)外に出て…絶句した。



 2人の目に映るのは見渡す限りの炎と死体。




 辺りには死臭が漂っていた。




最後まで読んでいただきありがとうございます。

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