崖山山頂の密林を行こうわえ、ダリルさんがっ!
四つ足の獣が多いが、二足歩行の獣ものぅ。
いや、六つ足や八つ足の獣もおるが、気持ち悪いのじゃが?
『平均的に、マスターの世界における白熊やベンガルタイガーと言った、肉食獣を凌駕する身体能力を誇りますね。
まぁ、ダリル殿には相手となっておりませんが』
いやいや。
儂じゃったら、即死レベルじゃわい。
コワっ!
「ほぅ?
師匠が中層レベルの獣も出ると言っておったが、本当だったか」
そがぁなことを言いながら、槍を背嚢から外す。
っか、剣で藪漕ぎみたいに、襲って来る獣を蹴散らしておったのじゃが?
獣で、薮ではないのじゃがなぁ。
っか、普通の獣?
漆黒の毛皮を纏った猫科の生き物じゃな。
天鵞絨のような艶やかな毛皮が、陽の光にて艶々と輝いておる。
特徴と言えば、尻尾が長いことかのぅ。
現れた獣はダリルさんを警戒しておるのじゃが、襲って来る様子はないの。
先程までの獣は、大概が即座に襲っておったのじゃが?
「ほぅ?
相手の力量が分かるのか。
賢く、そして強いな。
ふむ。
今日は狩りに来た訳ではない。
移動しておるだけだ。
無益な殺生は好まんゆえ、行っては貰えぬか?」
いやいや。
相手は獣ぞ?
語り掛けても、理解するハズが、なかろうに。
儂が、そう呆れておると、その獣がスッっと脇へ寄り去って行く。
はぁ?
言葉が理解できるのかや?
『おそらくですが、雰囲気にて察したものかと。
結構、賢い獣でしたね』
ううむぅ。
あがいな獣も居るんじゃのぅ。
その後、熊さんがの。
森っうか、ジャングルじゃしのぅ。
熊さんとは、森で出会うもんじゃて。
まぁ。
甲殻が鎧を纏ったように毛皮へ付いた熊じゃがのっ!
さっきの獣のとは違い、賢くは無いのじゃろうか?
ヨダレをダラダラと流しながら、ダリルさんを見ておるの。
で、即座に突進して来ておるのじゃが。
ハヤっ!
え?
瞬間移動したかと思ったわい!
『瞬間時速が100キロ近いでしょうか?
短距離にて、瞬時に最高速度へ達していますね。
熊の居た場所が爆散していますよ。
瞬時に、相当な力が掛かったのでしょう』
そがぁなコトを言っておる場合かぁっ!
ダリルさんは、どがぁなったんじゃっ!
へ?
熊さんの頭と体が分かれておらぬか?
あの一瞬に、何があったしっ!
『ダリル殿が避けざまに、首を刎ねておりましたね。
中々の早業でしたよ』
はい?
アレはを避けただけでのぅて、避けざまにかや?
いやいや。
首周りにも甲殻が存在しちょるのじゃが?
意外と甲殻が脆いのかえ?
『いえ、甲殻と甲殻の隙間を狙って斬っていますね』
そがぁな、バカなっ!
あの刹那にかっ!?
「チッ。
鎧熊は、直ぐに突っ掛かって来るからイカン。
肉や骨は、勿体ないが捨てて行くしかあるまい。
森の獣が処分するだろう。
だが、甲殻と毛皮は捨て置けん。
それなりの価値があるゆえな」
そう呟きながら、鎧熊かえ?
それを解体し始める。
慣れた手付きゆえ、始めて解体するのでは無いようじゃな。
そう言えば、賊アジトの外で倒したのも、鎧熊じゃったか?
『鎧熊の劣化種ですね。
アチラは、纏う甲殻が通常より劣っておりました』
ほうじゃったか。
しかし、普通の熊でも、人には恐ろしい存在じゃが、その熊が甲殻の甲冑を纏っておるとはのぅ。
あがいなヤツが、コチラの世界に居らなんで良かったわい。
「チッ。
無駄な荷が増えた。
邪魔だ。
まだまだ、精進が足らんな。
師匠が街へ向かう際に使う道だったらしいが、無益な殺生をすると荷が増えるゆえ、狩らずに通るのみ、っと、言っておったか。
流石に気を抜き過ぎたな。
今後は悟られぬように、気配を消して進むか」
そんな風にボヤいておる。
いや、しかしのぅ。
ここが、通用路かえ?
いや、通用路っうか、道?
何処にじゃ?
狩人の考える事が分からんわいっ!
『いえ、狩人と言うより、ダリル殿とガウランド殿のみでしょう。
通常の狩人には、無理かと』
じゃよねっ!




