ホンマに直進すなっ!崖山くらいは、迂回せいやぁっ!
ダリルさんの崖登りを例えるならば、アレじゃ。
ヤモリであろうか?
知っておる者は分かるであろうが、ヤモリは壁をスルスルと登りおる。
垂直な壁にも関わらず、結構な速さででのぅ。
で、ダリルさんなのじゃがな。
断崖絶壁へ、ヘバリ付いている感じでスルスルと。
背に背嚢と槍を背負い、腰に剣を佩いておるのにじゃぞ?
とてもでは無いが、人が行える所業では無いわい!
『まぁ、人造種ですから』
便利な言葉じゃのう。
先程の川も異常じゃった。
川幅が、中央分離帯が在る片側四車線、計八車線の道路以上の幅じゃったんじゃぞ。
アレを軽く跳び越えとったのだが、物理的に有り得るのかいな?
アレでは、人の形をした別物ではないか。
『だから先程から、別種と申し上げております。
マスターの世界の人々とは、基礎能力からして違いますから。
そうですね。
町に居た人達でさえ、マスターの世界へ住まう方々の倍は基礎能力を有しております。
ダリル殿は人造種の特殊個体ですから。
全く違う生き物なのですよ』
はい?
いや、町のおばちゃん達もかいな?
『はい。
身体能力は、マスターの世界よりも倍近く有しています』
なんと言う世界じゃ。
儂なんぞが実際に行けば、瞬殺されそうじゃな。
『いえ、おそらくは、そうはならないでしょう』
ん?
それは?
『マスターは身体変化にて、肉体が若返り身体能力も向上しております。
っと、言いますか、マスターはトチナの実を直に食した影響で、身体能力が激変しております。
既にトップアスリートを遥かに凌駕していますので。
なのにダリル殿の兵糧丸を五粒も食べたのです。
ダリル殿ほどでは無いにしても、狩人並みにはなるかもですね』
人外やん。
イヤやぁー
『自業自得です。
おや?
もう登り切りますか?』
ほっ?
いや、崖を登り始めて5分も経っておらんのじゃが?
数十、いや、100mは超える高さはあるか?
それを5分も掛からずに上がるとはのぅ。
はて?
崖登りとは、儂が思うより容易いのじゃろうか?
『そんな訳ありません。
アレはダリル殿が異常なのです』
じゃよな。
しかし、手掛かりとなる場所を探りもせずに登っておったが、儂が見付けられん箇所でもあったのかや?
『いえ、ご自分で身を支える場所を造りながら、登っていましたね』
はい?
どがぁなことをしてじゃ?
何かしておったのかや?
『この箇所ですが、穴が空いております』
確かに。
しかし、細い穴じゃな。
自然に出来たにしては、不自然じゃが?
『コレは、ダリル殿の指が埋まった穴ですね』
はい?
意味が分からんのじゃが?
『ダリル殿が指で崖を穿ち、指を埋めて身体を引き上げる場としたのです。
足掛かりと言うか、指掛かりですかね』
あー
その、なんじゃぁっ。
つまり、指を崖へ突き刺しつつ、崖を登ったと?
『そうなりますね』
・・・ ・・・ ・・・
化け物やん。
『あの感じだと、慣れた作業に見えますね。
ダリル殿には、通常作業なのでしょう』
まぁ、ダリルさんが人外なのは分かったのじゃがの。
この世界も大概じゃわな。
何で崖上に密林、ジャングルが存在しておる?
気温も上がっておるのじゃが?
標高が高くなれば、気温が多少なりとも下がるハズじゃ。
なのに、ココまで高くなるのは、異常ではなかろうか?
『この場所には、古代遺跡が残っているみたいですね。
そこの装置が稼働しており、環境へ影響を及ぼしているみたいです』
いやいや。
そがぁな長い時間、稼働するものかいな?
経年劣化もするじゃろうし。
『自己修復しつつ稼働しているみたいです。
造り直しされ続けたせいで、既に原型を止めておりませんが』
いや、それさぁ、ダメなヤツじゃ?
『元々の機能は喪失し、稼働するために稼働する機器になっていますね。
そして、その稼働影響で密林が生まれたみたいです。
機器が製造されたのとは別文明が産んだ生物が、密林を闊歩していますし』
ふむ。
ダリルさんが瞬殺しつつ進んどるが、アレかえ?
『そうなりますね』
とんだ人外魔鏡じゃが、それを寄せ付けんダリルさんって。
大概じゃなっ!




