ダリル菓子は魅惑の菓子らしゅうてなぁ。美味いと、脳内麻薬がドバドバッ、らしいんじゃが?
男爵が食いたいちゅう気持ちも分からんではない。
確かに美味いでのぅ。
ソレも数が限られ、プレミアム感が半端ないでなぁ。
ほんに、こがぁに美味いけぇ、そらぁ食いたいわなぁ。
『いや、マスターと沙織は、明らかに食べ過ぎかと』
ほぅかえ?
まぁ、映像じゃけぇの。
いくら食っても太らんし、いくらでも食えるでなぁ。
しかも、コピーするみたいに、無限に出せるけぇ、食い放題じゃて。
そうじゃとしても、普通は飽きてくるもんじゃ。
同じモンを永遠に食い続けるなんぞ、ある意味では拷問じゃてな。
じゃが、こん菓子はの。
こん茶と合わせると、いくらでも食える。
ほんに、なんちゅう美味さじゃ。
いや、変な成分とか、入っちょらんよな?
『変なとは?』
いや、麻薬みたいな中毒性とか、じゃな。
『そのようは常用中毒性のある、悪き成分はないですね。
ただ、旨み成分による脳内麻薬分泌が、促進されております。
その快楽による中毒性はあるかと』
ひょっ!?
実は、結構、危ないんかえ!!
『いえ、身体には害はありません。
ありませんが、刺激は強過ぎるやもしれませんね。
店主さんや、リコ嬢が、思い出して惚けた原因でもありますし』
なるほどのぅ。
しかし、食っちょる連中、すべてが姿勢を正し、粛々と食しちょるんは、ちと異様なもな。
っか、話し掛けられちょるのに、耳に入っちょらん感じかや。
ありゃあ、礼儀正しゅう、ちゅうかのぅ。
明らかに、味に支配されちょるわい。
例えるなれば、猫にチュールじゃな。
まさに、猫まっしぐら、ちゅうての。
『どんな例えですか?
まぁ、チュールに夢中になる猫みたい、っと言われれば、確かに』
じゃろ?
もう、釘付け状態じゃてな。
で、食べ終えたモンは、揃って食い終わり、空になった皿をジィィッと、の。
穴が空く、ちゅう位に。
まぁ、いくら見ちょっても、菓子は戻らんがの。
「そんなに美味かったのですかな?」
商人の一人が、知り合いの豪商へと。
「美味い、ですか?
美味い、ねぇ。
私は、ソレなりに美食を追求して来たと、自負しておりました。
しかし、美食とは?
斯様な菓子を食すと、今まで自分が美味いと食べていた物は、何だったのかと。
アレが美味いと思っていた自分が恥ずかしい。
私は今日、いや、今、この時点にて、本当に美味い、っと言う意味を、初めて知りましたな。
コレが、いや、コレこそが、美味。
そう、コレが、美味い、っと、言うコトだったのですなぁ〜」
力説する訳でも、嘆く訳でもなく、淡々と。
いや、逆に説得力があるんじゃが?
「そうですなぁ。
問題は、今まで美味いと思っていた料理が、なんと言うか、紛い物にでも思えてきそうでして。
今日からの食事が、味気なく感じそうで、怖いですわい」
別の豪商が、そのように。
それを聞いた食えんかったモンがな。
(食えなかったのは、悔しいが・・・
あの美食を尽くす豪商が、すべてが美味く感じなくなるなら、私達は、もっと悲惨になるのでは?)
そがぁに思っちょりそうな顔でな。
で、アッちゅう間に菓子は捌けてしもうたが、茶は、まだ残っちょるでな。
ソチラを他の面々は頼んでおるわい。
まぁ、こん茶も美味いでなぁ。
しかも、中層じゃないと得られん品じゃ。
コチラも好評じゃったぞい。
で、後の話しなんじゃがな。
実は伯爵家用に、菓子と茶は分けて確保されちょったんじゃよ。
なので、子爵と男爵が、店で食べたコトが問題にの。
ちゅうてもじゃ。
二人が食べたけぇ、他のモンも手を出した訳じゃて。
そもそも、二人が味を思い出し、惚けたんが悪い訳じゃしな。
子爵達への説明も不足しちょったで。
ちゅうても、男爵が思い出し惚けしちょったで、ま、仕方あるまいて。
呆れた子爵に、後頭部を叩かれちょったがな。
「気合いが足りん!
武人なれば、この程度は気力で抑え込まんかぁ!」
いや、脳筋?
そがぁなコト・・・沙織さん?
何故に頷いちょるんかのぅ。
マジかえ!




