ああ、ダリル菓子ぃ、ダリル菓子、やはり、こうなるかっ!
じゃが、効果は絶大じゃった。
まぁ、貴族位は与えられちょらん、とは言え、貴族、それも大貴族たる伯爵家の端に連なるモンじゃてな。
当然ながら、貴族としてのマナーなんぞは、叩き込まれちょるでな。
むろんリコ嬢もじゃぞ。
そんな紳士淑女としての教育を受けた二人が見せる痴態。
態と行うとは、のぅ。
特に店主の兄と弟も居る状態でじゃ。
そがぁなんしたら、叱責では済まん。
下手しら伯爵家の品位を下げたちゅうて、離縁されかねんでな。
じゃと言うのに、そがぁな知多を見せた。
こりゃあ、無意識以外に有り得んでな。
つまり、それ程の味、ちゅう訳じゃな。
ちなみに、仕入れ値として、二人が食した分はダリルさんへ支払っちょる。
まぁ、売りモンなんじゃけぇ、当然じゃわな。
そして、仕入れを終えたダリルさん達は、既に帰っちょるぞい。
当然じゃが、空を、じゃな。
いやいや。
木製の荷車へ金属インゴットを満載し、ダリルさんと、ギーゼットの背負う荷袋にも。
そがぁな満載状態に、ハゲルさんとロゼッタ嬢が荷車へ。
それが、空を。
いやいや。
現代の地球でも、こがぁなん出来んでなぁ。
科学者が見たら、頭を抱えるじゃろてな。
そんな彼らが、空を飛んで、いや、走ってか?
往んだ後、店主親子が茶店へと。
まぁ、焼き菓子とは言え、何時までも持つもんでは無いでな。
で、じゃ。
そがぁな親子に戸惑っちょる間にの。
「俺に貰えるか?
お代は先払いだったな」っと、子爵が。
「あ!
兄者!
ズリぃ!
俺も、俺も!」
男爵が、慌てたように。
それを見た貴族の一人が。
「いやいや。
得体の知れぬ品へ、良く、それ程の対価を払えますなぁ」っと。
したらの。
「確かに、物は初めて見る品だ。
だが、カドモスとリコのコトは、良く知っておる。
身内であるしな。
二人共に味を思い出し、あの始末だ。
つまり、それ程に美味かった、っと言うコト。
特にカドモスが、あの様な痴態を晒すとは。
アレは計算して行ってはおらんな。
正直、商人としてのヤツは計算高く、その素振り一つであっても考えておる。
ゆえに油断ならんトコロもな。
そんなヤツが、素で、アノ始末だぞ。
よほど美味かったに違いない。
しかも、コノ機会を逃すと、二度と食えん可能がな。
ならば、食うに決まっておろ?」
子爵が告げておる間にも、茶と茶菓子が。
「兄貴さぁ。
語るのは良いけど、先、食うぞ!
なんたるや、この香りぃ!
堪らん!」
そう言うと、即座に口へ。
周りは男爵が、ウメェ!ちゅうて、騒ぐモンじゃとな。
じゃがな。
「なんか、姿勢を正して粛々と食し始めたな。
この様なラフな場で、ナックがマナーよろしく食すとは、珍しいコトだ」
子爵が首を傾げつつ口へと。
「ぬっ!?」
そん一言だけ。
感想もなく、姿勢を正し茶と菓子を。
正直、異様である。
貴族としての茶と茶菓子は、コミュニケーションを取るツールとして使われる。
茶会などが、ソレにあたるじゃろうな。
つまり、姿勢を正し、粛々と嗜むモンじゃ無いんじゃよ。
じゃと言うに、神聖な儀式を行うが如し、じゃ。
異様と言うほかあるまいて。
そして、男爵と子爵が、茶菓子を。
食べ終えた後、ジィーっと、無くなった茶菓子が入っておった器を。
「お代わりを」
「止めておけ」
「何でだよ?」
「恨まれるぞ」
「うっ!
仕方ないかぁ」
などとな。
それを聞いた貴族の一人がの。
「どう言う意味で?」っと。
「店員の説明は、聞こえておったであろ?
数に限りがあるのだよ。
少なくとも、ココに居る全員が食す数はない。
商人達は、貴族連中に遠慮しておる。
そして、居る貴族分は残っておらん。
貴族連中は、辞退するなら告げよ。
いや、買う者は名乗れ。
居なければ、商人達へ勧める。
ソレで余るなれば、我らが食すでな」
「 」
男爵?
何か言うちょるかい?
しかし、大半の貴族は断念。
まぁ、貴族位を持つちゅうてものぅ、そがぁに金は、の。
数人の子爵と男爵が買っただけじゃて。
騎士爵や商爵、准爵なんぞは、なかなか。
じゃが、豪商クラスなれば、普通にの。
「 」
いやいや、男爵?
どんだけ食いたいんやねん!




