素通りしたみたいにしか見えんが、シッカリと斬り棄てちょるわい!
儂の目には、鮮やかに居合斬るダリルさんの身姿がの。
じゃが、余りの早業にて、他の者達には見えんかったみたいじゃて。
「また通り過ぎましたが、まさか?」
「ほうじゃぞ。
今回は居合じゃったわい。
いやぁ、見事なもんじゃてな」
儂が、ぞがぁ風に告げるとの。
『あの速度で動けるのも異常ですが、それを当たり前に見れているマスターも異常かと。
一般の方々には、認識不可能でしょう』
そがぁなモンかえ?
賊を斬ったダリルさんが、荷車へとの。
「う〜ん。
速過ぎて、斬った気配しか分からなかったんだがぬぇい。
使った感じは、どうでぇい?」
ハゲルさんが、そがぁなコトをの。
「はい?
ただ通り過ぎたようにしか、見えなかったんだけどさ。
本当に斬ったんさね?」
ロゼッタ嬢が、驚いたように。
「ああ、斬ったな。
軽く扱い易くく、しかも斬れ味が良い。
人みたいに脆い物を斬るなれば、十分であろうな。
だが、狩に使うとなれば、少々危うい。
先ほど狩った熊なれば、問題あるまい。
鎧熊も甲殻を避ければ狩れるだろうが、甲殻を斬れば斬れるが、得物もダメージを受けるだろう。
ましてや、アーマードベアのレベルだと、最早、使い物になるまい」
ダリルさんが、困ったようにの。
「いやいや。
深層を基準にすんじゃぬぇいよぅい。
まぁ、狩りに特化した得物じゃぬぇからぬぇい」
そがぁな話しをしとるとな。
「あの〜」っと。
役人を率いていた者が、恐る恐る、ダリルさんへの。
「どうかしたかね?」
そう促すと。
「あの者達が、人を、それも幼児を拐ったとか?
マコトで?」
まぁ、寝耳に水、状態じゃったじゃろうでなぁ。
「ふむ。
アソコで雷にて新たに拘束しとるが、アヤツが隠蔽しとったみたいだな。
隠蔽しとったのに、ヘマしおって、などと、言っておったが?
さらに、斬った役人宅へ、証拠になる品があるらしい。
証拠隠滅に動くため、ココを離れようとしておったでな。
ゆえに拘束しておる訳だ。
コヤツの自宅を調べてみては、如何?」
ダリルさんが、そがぁに言うとな。
「はぁ?
い、いや、あの距離で発した言葉を、ですかな?
何やら呟いたのは、私も気付いてはおりました。
ですが、流石に小声ゆえ、聞き取れなんだのですが」
そう告げるとの。
「ん?
その程度も出来んと、浅層でさえ生きて移動すら出来んが?
見習い狩人でも行えるのだが」
困ったように。
っか、いやいや。
儂は聞き取れたがの、沙織さんには無理じゃったでな。
『当たり前です。
素のスペックが違い過ぎますから。
ダリル様の里、いえ、森に住まう方々、っと、言った方が良いでしょうか。
あの方々は、人造種の末裔となります。
ゆえに、外の方々とは、基礎能力が違いますので』
なるほどのぅ。
「ん?
俺にも聞こえたんだが、ぬぇい。
ロゼッタは、どうでぇい?」
「アタイもさね。
普通に聞こえると思うんだけどねぇ?」
首を捻っておるの。
っか、二人も人造種末裔じゃでなぁ。
本人達に自覚がないけぇ、困ったモンじゃて。
「ソナタらは?」
役人さんが、不思議そうにの。
それへハゲルさんがな。
「ん?
俺ぁ、ハゲルてぇもんさね。
鍛治師なんてぇのをしてんぬぇい」っと。
それを聞いた役人がな。
「はて?
鍛治師のハゲル?
聞いたコトが」
「メッサーム様。
確か侯爵家御用達の鍛治師が、ハゲルと言う名であったかと」
部下が耳打ちしちょるな。
「かぁ。
別に御用達てぇ訳じゃぬぇんだけどぬぇい。
アチラさんが、常に依頼して来っからよぅい。
なんか、御用達扱いされてんでぇい」
ハゲルさんクラスになれば、自由に打った品であろうと、高値で売れる。
ロゼッタ嬢もハゲルさんクラスの鍛治師であり、腕は良い。
良いが、女性、っと言うだけで、評価されていないのが、現状である。
まぁ、女性騎士や女性狩人などからは、絶大な人気を得ておるようじゃがな。
一般的に知られちょるんは、やはりハゲルさんの方じゃて。




