いや、落ちちょらんけぇなっ!ほれ、目を開けてみなされや。
鉱山では、役人達が見上げて見送っておる。
じゃが、動揺はしちょるが、騒いではおらんの。
まぁ、ダリルさんが空を駆けて移動する、ちゅうとったしなぁ。
しかも、現れた時は、上空からじゃて。
っても、気付いたのは、見張りをしちょった役人だけじゃ。
ゆえに、大半の役人は、来た瞬間は見ちょらんがの。
ほんでもの。
こん短時間にて様々な騒ぎを起こした元凶じゃてな。
ダリルさんなれば、あがいなコトも、出来るじゃろうて、ちゅうてな。
そがな役人達とは違い、商隊の面々は全く免疫がないでのぅ。
度肝を抜かれて、最初は固まっちょったわい。
じゃが、時間が経つと、大騒ぎに、の。
丁稚の数人、いや、一端の商人にもかえ?
腰を抜かしてのぅ。
まぁ、刺激が強過ぎたんじゃろな。
そんな地上組もなんじゃがな。
説明を受けずに荷台へと誘われた少女がのぅ。
「えっ!
いや、ちょっ!?
そっち、崖ぇぇぇっ!?」
大慌てでなぁ。
まぁ、荷台へと乗り込んだ荷車が、断崖絶壁な崖端へと走れば、そがぁなるじゃろうて。
完全に無理心中、一直線じゃてな。
「いーやぁー!」
まぁ、叫ぶのも、仕方ないじゃろて。
(落ちるぅ〜)っとでも思ったんじゃろな。
目を瞑って、体を両手で抱え縮こまっちょるわい。
そがぁな彼女へロゼッタ嬢がの。
「大丈夫さね。
目を開けて、辺りを見てごらん。
絶景さねぇ」
ロゼッタ嬢も、来た時は気絶しちょったけぇな。
景色は見ちょらん。
改めて見る景色は、確かに素晴らしかったぞい。
じゃが、ロゼッタ嬢も大丈夫、ではない。
少女が居らんかったら、流石に怯えを見せちょったじゃろうてな。
ハゲルさんが、優しく後ろから支えちょるでなぁ。
こんオヤジ。
こがぁなトコが紳士じゃけぇなぁ。
そがなトコにも、ロゼッタ嬢が惹かれたんじゃろて。
微に震える身体を悟られんように、少女へ辺りを見るように。
こん短時間に、少女から信頼を得たんじゃろうな。
少女が、恐る恐る、目を開ける。
っと、言うかじゃな。
違和感を感じた感じかのぅ。
何せ落下しちょる感じがせんのじゃ。
崖へ飛び込むなれば、当然、下へと落下するもんじゃて。
そがぁなって、落下しちょる感覚がないちゅうんは、のぅ。
しかも風切り音も、風が身を切る感覚もない。
ちゅうかの。
全く動いちょる、っうか、揺れ一つ無いんじゃわい。
(落ちて、ない?)
恐る恐る、目を開けるとじゃ。
広大なパノラマが、目に飛び込んで来たようじゃて。
「えっ!?
ここぉ、どこぉぉっ!?」
まぁ、普通にビックリ仰天するわなぁ。
「何処らへんかねぇ?」
「いや、そうじゃぬぇいだろーよぅい」
「ん?」
「嬢ちゃん、よぅい。
ココはぁ、空ん上だねぇい。
ダリルが荷車牽いて、空を駆けてんでぇい」
そうハゲルさんがの。
したらの。
「空を飛んでる、の?」
唖然としたように。
したらの。
「ふむ。
飛んではおらんな。
宙を走っておるぞ」
ダリルさんが、その様に。
「え?
飛ぶのとは、違うんです?」
不思議そうじゃのぅ。
「うむ。
風晶石などの晶石で、風の道を造ってな。
その上を駆けておる。
風繭にて、荷車を含み包んでおる。
ゆえに、揺れや風の影響もない訳だ。
っと、町らしき物が見えたが?」
「ありゃあ、よぅい。
鉱山に一番チケぇ町だぬぇい。
あん町じゃ、ぬぇいぜぇい」
ハゲルさんが、否定を。
「そうさね。
街道沿いに、鉱山から三番目に近い町だよ。
ココから見えるかねぇ?」
「あん湖があんだろ?
確か、アッチの方だぬぇい」
ロゼッタ嬢とハゲルさんのフォローに、ダリルさんが頷きつつの。
「なるほど。
あの湖方面で、街道沿いの町だな。
では、行ってみるかね」
そう告げ、荷車が多少、走る方向を。
「あわわわわっ。
私ぃ、飛んじゃってるぅ〜
スゴぉ〜い!」
ふむ。
泣いたカラスが、なんとやら、じゃな。
まぁ、元気になったのは、良いコトじゃて。




