こん番頭さん、なかなかの胆力じゃてな。しかしのぅ。
まぁ、元々が相場以上にて買い取るつもりでは、あったようじゃてな。
じゃが、ダリルさんアリきじゃて。
ダリルさんが居らんかったら、買い叩いちょったじゃろうて。
まぁ、買い値と売り値の差額で儲けちょるでな。
で、ふと気付いたようにの。
「全て買い取らせて頂くとし、値段は、コレで如何で?」
そう告げ、彼が値を提示したんじゃがの。
ダリルさんが首を捻ってな。
「相場より、カナリ高値だと思うのだが?」
そう不思議そうに。
「さようで、御座いますな。
それで、ですな」
ん?ちゅう顔で、番頭さんを。
相手は商人じゃて、油断は、のぅ。
「できましたら、ダリル様のお墨付きを頂ければと」
なるほどのぅ。
深層狩人たるダリルさんが狩った。
そうなれば、価値は上がるじゃろうて。
しかしじゃな。
ほれ、ダリルさんも、困っておるわい。
「いや、俺のお墨付き、っと言われてもだな。
証明する術が無いのだが?
昨今、深層狩人を御伽話扱いする風潮のようだ。
そんな中、俺を深層狩人と認めさせるのは、困難ではないかね?
むろん、その場へ俺が居れば良い。
だが、立ち会う程、俺も暇ではないのでな」
そうダリルさんが告げるとの。
番頭さんが、ウンウンっと頷きつつの。
「そこで、ハゲル様なのです」
「俺けぇ!?」
まさか巻き込まれるとは、思わなかったゆえ、仰天しちょるのぅ。
「そう。
ダリル様のお墨付きと、ハゲル様の保証。
ソレを、お役人様が保証して頂ければ、現実味が増すと言うもの。
ハゲル様は、侯爵家御用達の鍛治師にて、信用は絶大であり、さらに、お役人様からの保証が有れば盤石となりましょう。
さすれば、深層狩人が狩った品であり、この品質。
燻製肉や腸詰も、深層狩人の秘技にて造られたとなれば、高値が付くかと。
まぁ、高値で売れるかは、商人たる私の力量次第ではありますが、それを踏まえての値付けと、思って頂ければと」
ふむ。
なかなかにチャレンジャーじゃて。
こん提案をダリルさんが不快に思うたら、下手したら斬られるでな。
俺を利用する気か?っとなれば、タダでは済むまいて。
まぁ、結構お人好しなトコがあるけぇ、大丈夫じゃろうがの。
「ふむ。
俺が役人達へ肩入れしておる。
そう判断しての提案かね?」
番頭さんは、顔色を変えずに、ニッコリと。
背中は汗で、ビッショリじゃがな。
「お役人様への温情と言うよりは、ダリル様が狩られた品に対する思いと、感じ取りました。
己の仕事に誇りを持たれ、汚されるのを嫌う方かと。
如何ですかな?」
うむうむ。
表情はニコヤカじゃが、流石に顔は青白くなっちょるわい。
相手の機嫌一つで斬られるでな。
物事には、踏み込んで良いコトと、悪いコトがあるでな。
今回の話は、その境目ギリギリじゃろうて。
特に仕事に対する矜持なんぞ、他人が踏み込んで良い訳ないからのぅ。
まぁ、勝負に出た!ちゅう感じかや?
しかし凄い胆力じゃのぅ。
先ほど、元主であるクズが、胴一閃にて分断されたバカリじゃぞ。
それを行ったダリルさんへ、じゃでな。
そん覚悟は、ダリルさんにも伝わったようじゃな。
「フッ。
良かろう。
普通は、そのような狩りに関係せぬコトは、煩わしいゆえ行わん。
だが、その覚悟、漢気に免じてやろう。
誰か、正式書類など、あるかね?
それへ、俺が保証を記そう」
「かぁ!
アンタぁ、運が良いぬぇい。
コレがダリルの師匠たるガウランド様だったら、生きてぬぇいぜぇい」
そうハゲルさんがの。
したらな。
「ふむ。
師匠は短気なトコがあったでな。
愚弄するかっ!で、一刀両断で、あったろう」
流石に番頭さんもビビっちょるな。
「多分ですが、そのお方は、役人への肩入れなどしないかと。
狩った素材を気に掛けておられる、ダリル様だからこそ、勝負に出させて頂きましたゆえ」
「うむ。
師匠なれば、素材が台無しになったと聞いたなれば、関係者を斬って回るであろうな。
売った時点で、責任は買った物にあるが、卸した品を台無しにする行為は、狩人を愚弄するに等しいゆえ」
つまり、ダリルさんも、最初は?
こえっ!




