しかし、この燻製肉とソーセージにハムステーキは、美味いのぅ。屋敷のウィスキーも、負けちょらんぞぃっ!
番頭さんが、呆気に取られた様に役人達を見ちょるの。
演技か?などと疑っちょる目じゃわい。
じゃがの。
あのガン決まりしちょるような目は、普通ではないでな。
明らかに自分もっ!ちゅう感じじゃてな。
まぁ、分からんでもない。
ホンマに美味いからのぅ。
「そうですね。
私、ウイスキーは余り嗜みませんでしたが、この燻製肉とは、本当に合います。
流石にストレートやロックは、私にはキツ過ぎますが、水割りは美味しいです」
まぁ、そうじゃろうな。
なにせ仕込み水で割っちょるけぇな。
こん品は市販しちょらんが、市販しちょるヤツで例えるとじゃ。
ウイスキーはモルトやグレン、他のモルトとブレンドして売るタイプも有るんじゃがな。
樽出しのモルトを、そん侭で瓶詰めするヤツもの。
まぁ、今、儂が飲んでおるタイプじゃな。
で、そんじゃとキツ過ぎるけぇ、普通は仕込み水で加水しちょる訳じゃな。
40数度のウィスキーが、こんタイプじゃて。
そん加水して売っちょるヤツを、さらに加水して薄めたのが水割りなんじゃがな。
当然、普通は仕込み水ではないでな。
で、の。
沙織さんが飲んじょるヤツぁ、仕込み水を使用しちゅる。
ウイスキーを造る時、樽出し後に加水へ、それを水割りの水と氷にじゃ。
全てに一貫して同じ水を使っちょるけぇな。
ほじゃけぇ、そん美味さが生まれちょる訳じゃな。
『むろん、屋敷地下で造られた物です。
原料となる大麦やピートだけでなく、樽や水にも拘っております。
仕込みの段階で、最初は硬水を使用しますが、段階に応じて使う水を切り替えております。
次に軟水へと切り替え仕込みを仕上げますが、この軟水も複数ですね。
この工程管理は、熟練の職人であろうて困難です。
本国にて専用に用意されたAIが、24時間365日監視して仕込みから熟成を管理しております。
特に仕込みでは、数秒のズレで台無しとなるため、非常にシビアであり、システマチックな管理が不可欠ですので。
で、今告げたように、仕込み水には複種類の水が使用されておりますが、熟成に至る際にはピュアな軟水が使用されております。
瓶詰めも本国用に行っており、その際に加水している水としても用いております。
水割りへ使用したのは、この軟水ですね。
非常に飲み易く、美味しい水らしい、とのコト。
そのため、水だけをボトリングして本国へ卸してもおりますので』
そがぁなコトまで、しちょったんじゃのぅ。
しかし、そがぁに水への拘りがなぁ。
美味い訳じゃて。
ん?
どうやら番頭さんが、葛藤ね末に頼むコトにの。
まぁ、仕方あるまいて。
熊肉は、仕留めた後の処置が良く、下処理がシッカリしちょれば美味いらしい。
じゃがの。
フォアハンド・レッドグリズリーの肉は、仕留めた際の処置や下処理が完璧でも、救いようがない程にマズいらしいわえ。
まぁ、討伐までに暴れ回り、体に血が巡り、下手したら肉に血が滲むほどらしいでな。
血抜きしてもダメらしいわえ。
ダリルさんが瞬殺したけぇ、倒した時点での品質は保たれちょる。
じゃが、普通は、そがぁな肉でも、臭うて食えんのじゃと。
それを知っちょるけぇ、番頭さんが躊躇っておった訳じゃな。
「そんなに警戒せずとも、良かろうに。
まぁ、この手のヤツは、肉食が主体故に普通肉はマズい。
だから通常は売らん」
「やはり、ですか」
「ああ。
だが、俺は臭みや灰汁を抜く秘技を得てな。
コレは放術と付与が行えねば行えんが。
それにより、臭みと灰汁を除き、さらに獣臭を薫香にて昇華させておる。
ゆえに売り物となる訳だ。
コレをな、コノように、風晶石の風にて舞わせる。
ソレへ水晶石で細かなミストを纏わせる訳だ。
そして、火晶石が発する強火の熱を、風繭とミストで肉や腸詰へ纏わせるようにし、満遍なく炙るのだよ。
この際に雷晶石にて発した微電流を使用し、状態を確認し、肉と腸詰を保水する訳だ。
うむ、焼き上がったな」
そがぁなん、儂とダリルさん以外に、出来るヤツ居らんでな。
他所では食えん逸品じゃ!
儂も、当然食うぞっ!!




