番頭さんがの、燻製肉に懐疑的なんじゃわ。こがぁに美味いんじゃがのぅ。ウマウマ。
番頭さんは、話しを盛っておるのか?っと、懐疑的じゃな。
元来、匂いがキツいとされちょるようじゃ。
まぁ、それは適切な下処理が成されちょらん、からじゃがな。
適切な下処理をした熊肉はの。
イヤな雑味や臭みはないんじゃと。
仄かな良い香りがするそうな。
焼くと牛肉にも劣らん、香ばしく芳しい香りがの。
まぁ、リアルでは食うたこたぁ無いけぇ、ハッキリとはの。
じゃが、こんフォアハンド・レッドグリズリーの肉は、間違え無く美味かったでなぁ。
映像で、幾ら摘み食いしても、アチラの荷は減らん。
ほじゃけぇ、儂と沙織さんは、さっきから摘み食いをの。
なにせ映像世界じゃけぇの。
幾ら食っても、腹はクチくならんでなぁ。
しかし、旨みが濃い。
正に凝縮された感じかや?
燻製肉もじゃが、ソーセージやハムも燻しちょるでな。
この燻したチップも良かったんじゃろてなぁ。
香りが唆る、唆る。
マル芋湯にて灰汁抜きしちょるけぇ、全く雑味がない。
しかも薫香にて、旨みが増しちょるな。
『マスター』
なんじゃい。
『フォアハンド・レッドグリズリーは、肉食寄りの熊であるため、普通の熊よりも獣香が強いのです。
そのため臭みが強く、普通は食べれません』
はい?
こがぁに美味いんじゃが?
『マル芋湯にて灰汁抜きしてあるため、ある程度は臭みが抜けております。
ですが、肉本来の臭みであるため、完全には臭みを取り去れないのです。
ですが、特殊なチップで燻すコトで、その臭みが芳香へと昇華され、旨味も増すらしいのです。
そのため、その燻製肉や腸詰類は、美味しいのかと。
ですが、生の肉は、そうは行きません。
故にダリル様はステーキにせず、揚げ物にし、さらにタレを付けて焼いた訳ですね。
あの油下へマル芋湯を張った状態で揚げたのは、揚げる際に衣を通してマル芋湯を浸透させ、灰汁を緩和させたものかと。
とは言え、普通は行えない調理技法ですが』
まぁ、のぅ。
普通は大爆発じゃてな。
高温の油の下へ湯が。
常識的に考えられんわなぁ。
しかし、噛めば噛むほどに味が滲み出て来よるわい。
脂が驚くほどに甘く、クドサが全くないんじゃ。
旨味の余韻が持続してな、ソコへ更に追加で。
永遠に食えるぞい!
コレにはスコッチじゃな。
しかもスモーキーフレーバーが強いのが良い。
しかも加水前の樽出しにて、な。
シングルモルト、ちゅうヤツじゃて。
タリスカーやクライヌリッシュ辺りが良いか。
グレンフレディリックとかラフロイグか。
ん?
ウチの地下産?
様々な泥炭をブレンドし、それで燻して発芽を止めちょる?
麦は大麦。
しかも栽培が難しく、今では絶滅しちょる品種らしい。
収穫量が少なく、育てるのが難しいらしいわえ。
じゃが、それで造る酒、ウイスキーは絶品らしゅうてな。
本国の愛飲家垂涎の品らしいぞい。
これを百年。
はい?
百年!?
そがぁに寝かせちょるんかいなっ!
蒸発して無くならんかえ!?
ん?
前年の酒を継ぎ足しながら熟成?
で、同年代の酒も、途中で合わせるんかい。
で、数千以上の樽が、百年で数十樽に?
なんとも希少な酒なんじゃな。
一般には出回らんじゃろな。
え?
地球には出してない?
本国のお偉方用?
儂が飲んでエえんかいな!?
『マスターは、本国上層部より、遥かに上とされています。
それに、映像空間ですので、幾らでも飲めますよ』
あー、確かにの。
しかし、この酒と燻製肉が合う!
旨し!
っと。
ダリルさんがの。
「金を出すなれば、俺が一つづつ炙ってやろう」
そして値を告げるとの。
「高過ぎませんか?」っと、番頭が。
じゃがの。
「旦那ぁ。
そりゃあ、安過ぎますぜぇ。
それなら、俺が」
「ズルいぞ!
俺も食いたい!」
役人達がの。
「バカ者!
試供品価格だ!
キサマらには売らん!」
ほ〜れぇ、ダリルさんに怒られちょるわい。




