熊、フォアハンド・レッドグリズリーの素材を売り込もう。
役人達が運んで来た品を見て、番頭さんが軽く首を傾げちょるな。
「はて?
熊でも出ましたかな?
この辺りでは、珍しいのでは」
そがぁ風にの。
したらの。
「うむ。
確かに熊なのだがな。
フォアハンド・レッドグリズリーなのだよ」
役人が深刻そうな顔で。
ほしたら番頭さんがの。
「お戯れを。
その様な存在が現れたのなら、この鉱山は壊滅しているかと。
もし事実だとして、どのよ、あっ!」
番頭さんが、バッとダリルさんをの。
「気付いたようだな。
そう、ソコに居られる、深層狩人のダリル様が討伐なされた。
しかも2矢にて、一度に両目を射抜き瞬殺であったぞ。
まさに神業と言えよう。
その御業にて倒されたゆえ、傷も無い極上品となっておる。
解体も、ダリル様方が成されてな。
簡単な鞣しも成された皮は、業者へ引き渡すまで品質は下がるまい。
明日、我々が街へ捌きに行く予定であったが、付き合いが長く、憚りが消えた今、ソチラへ卸しても良いかとな」
そう役人が告げると。
「俺とハゲルが立ち会う。
俺たちが処置した素材だ。
下手な値付けは、見過ごせんのでな」
何気ない感じで、シレッと告げちょるんじゃがのっ!
怖いわっ!
何せ、先ほど悪行店主と取り巻きを、一刀両断にて胴にて上半身と下半身を、泣き別れにしちょるでな。
しかも、態々、即死せんように生かし、数分苦しんでから身罷るように。
あがな目には合いとうないわい!
流石に番頭さんの顔も引き攣っておる。
まぁ、無理もないわなぁ。
(下手な駆け引きは危険ですね。
しかも相手は狩人と鍛治師。
さらに深層狩人ですか?
ハゲル様も侯爵家お抱え。
下手を打つと、私の命だけでなく、商会が潰れますね。
相場より低い値付けは論外。
相場通り?
いや、ココは相場より高めでしょう。
アノ、穀潰しを消して貰っただけで、商会としてはプラス。
そう考えるならば、下手な欲は身を滅ぼしましょう。
顔繋ぎも兼ね、多少の損は目を瞑るべき!)
瞬時と言える間に、そのように考え判断を。
っか、番頭さんの思考、ホンマにソレで合っちょんかいな?
『脳波パターンを解析したモノですので、おそらく、としか。
最近研究が認められたバカリの技術ですので、保証はできかねます。
まぁ、データが欲しいので試して貰いたい、とのコトでした』
いやいや。
現実世界なれば分かるが、ココ、映像世界じゃぞい。
そがぁな実験しても、意味なかろうに。
「いえ。
映像世界での再現率は100%となります。
ゆえにコチラにて実験した結果を、現実へフィードバックするコトは可能ですね。
本国研究者の中には、コチラで研究し、現実へフィードバックしたい、と申請する者もおります。
ですがマザーから、プライベート空間にて許可されていない状態ですね」
そらぁ、マザーに礼を言っておいてくれるかや?
しかしのぅ。
他人が創った空間へ、何故入れると?
しかも儂への確認も無しでしゃ。
っと。
番頭さんが、素材を確認しちょるな。
(これはっ!
傷がないのもだが、なんと的確な下処理を。
解体の仕方も良かったのだろう。
コチラは、肉?
いや、傷むだろうに。
ん?
待て!
コレは、加工してある。
燻製?腸詰もか。
確か、この様な技法にて、保存性を増すと、聞いたコトがありますな)
「済みません。
この肉もですかな?」
そう彼が尋ねると。
「ああ、ソチラもだな。
まぁ、余れば我々で食べるがな。
むしろ、余って欲しいくらいだ」
役人が告げるとの。
「こらこら。
売り物として加工した品を出し渋らない」
ダリルさんが苦笑しながらの。
したら。
「いやぁ〜
ダリル様が造った加工肉が、美味すぎるからです。
売りに出す、って知らなかったヤツらが、悲鳴上げてましたから。
特に鉱夫連中ですが」
その話を聞いていた番頭さんがの。
「それほどまでに?」っと。
すると、全役人が頷いておるの。
ちなみに鉱夫連中は、坑道へ潜っちょるぞい。




