ハゲルさんの仕事も、中々に大変みたいじゃのぅ。
そのようにカミングアウトした後でな。
「っと、こん話しはオフレコでぬぇい。
知られっと、注文数が増えて敵わぬぇい。
俺ぁ食ってけるだけありぁ十分なんでぬぇい。
なんか知らんぬぇいがよぉい。
金は増えてからなぁ。
一生働かなくても、食えるぐれぇはよぉい。
だからよぉい。
ガツガツ仕事する気なんざぁ、ぬぇんでぇい。
下手に縛られるぐれぇならよぅい。
国ぃ、出奔すりゃあよいかんぬぇい」
ハゲルさんは、ヤルと言ったらヤル男である。
彼ほどの腕が有れば、何処へ行っても食って行けるだろう。
逆に、彼ほどの鍛治師を失うコトは、領と言うよるは、国の損失に近い。
この領は凶悪な獣が潜む、層持ち森からは離れている。
だが、侯爵領は層持ち森に近く、そのため武装の強化が必須となる。
そんな環境ゆえに、侯爵家ではハゲルさんを、優遇しちょる訳じゃな。
そんなハゲルさんが出奔なんぞしたら、侯爵領はパニックじゃて。
中には、ハゲルさんに次ぐ鍛治師が居れば良い、ちゅうじゃろな。
じゃがのぅ。
それ、ロゼッタ嬢じゃぞ?
ハゲルさんが出奔すんのに、彼女が残るハズがないでな。
むろん、ハゲルさんクラスのモンも。
じゃが、それはハゲルさん達の親方じゃて。
病に伏せっちょるでな。
鍛治仕事なんぞは、のぅ。
ハゲルさんの実父は、既に身罷っちょるでなぁ。
他の鍛治師達は、数段劣るしのぅ。
むろん、ロゼッタ嬢の義弟は論外じゃて。
まぁ、そん実態を知っちょるんは、侯爵と、その幹部のみじゃがな。
しかも、ハゲルさんクラスとなると、国内には居らん。
っか、近隣諸国にも皆無じゃて。
その希少性から、ハゲルさんに対する扱いは、実に丁寧じゃ。
侯爵家や、その寄子貴族は、の。
まぁ、肝心の、ハゲルさんが住まう領の領主は、そのコトに気付いちょらん。
っか、普通の執務を丸投げする無能じゃぞ?
そがぁなん、知るハズもない。
まぁ、お陰で、チョッカイ掛けられちょらんのじゃが。
実は侯爵家が手を回し、ハゲルさんの情報が、出回らんようにしちょるんじゃがの。
それについては、流石にハゲルさんも知らんのじゃが。
ハゲルさんのカミングアウトに、番頭さんが固まっちょったんさじゃがな。
ふと気付いたようにの。
「そのハゲル様が、なぜ鉱山へ?」っとの。
したらの。
役人さんがのぅ。
「鉱山に来ておるのだから、鉱石を得に来とるに決まっとろうに?」
そがぁ風にのぅ。
まぁ、当たり前じゃわな。
したらの。
「いやいやいや。
鉱石は我々が調達して送っておりますが?
足りなくなれば、言って頂ければ再送いたしますし」
「いやよぅい。
そげなコトしたら、侯爵家へバレるだろーがよぅい。
そしたらよぅい。
発注量が増やされなぁーな。
さっきも言ったがよぅい。
無駄に忙しいのは、御免だかんぬぇい」
ハゲルさんは、何をそがぁに、警戒しちょんじゃい?
『納品が増えれば、容易く武具が補充されると、勘違いする者が、ですね。
そうなると、武具を手荒く扱い、寿命を縮めたりするのですよ。
特に武具は道具、道具は消耗品と考える者が、ですが。
まぁ、そのような者へは、支給ではなく買取を強制しいるみたいです。
武具購入費も、バカになりませんので。
それでも、貴族の子息には、そのようなバカが、ですね。
気にせず手荒く武具を扱い、当主宛に請求が回され、当主が青くなる事態も。
流石に問題視され、当主に叱責されても反省しない輩は廃嫡されています。
現状でも、そのような感じなのです。
ハゲル様が造る量を増やせば、貴族子弟が、どのようなコトをするか』
はぁ〜
やはり、貴族は、バカばかりじゃろ?
『一部が、ですね。
大半はマトモなのですが、酷い輩は目立ちますので』
ふむ?
商人は、それを知っちょったんかのぅ。
「なるほど。
無用な注文が増えそうですからなぁ」
などと言っちょるわい。
こがな離れた場所の商人がしっちょるんかえ?
堪ったモンじゃないわなぁ。




