さぁ、熊狩りじゃてな。ん?二人は、誘い出す囮かや?
ダリルさんとギーゼットの気配が消え、姿も見えんくなる。
するとの、あん熊さんは顔を上に上げ、クンクンっと辺りを伺うように匂いを嗅いでおるぞい。
姿が見えんちゅうてもの、荷車ん陰に隠れてはおるが、普通なら見付かるレベルなんじゃがな。
じゃが、異様に気配が薄うなっちょるけぇ、目で見えちょっても景色の一部にしか思えまいて。
ほんでな。
風晶石にて、己とギーゼットの香りを遥か上空へと散らしておってな。
そんため、ダリルさんとギーゼットの匂いは、全く分からん状態じゃでな。
つまりは、じゃ。
熊さんの索敵には、引っ掛からんように、なってしもうちょる訳なんじゃよ。
いやの。
ちと賢い輩なれば、状況がオカシイちゅうコトに気付くじゃろうて。
なにせ、今迄、自分が最大限にて警戒しちょった相手が、唐突に消えよったんじゃぞい。
それも、何の前振りもなしにじゃ。
そがぁなん、怪しいに決まっちょるじゃろうが。
じゃがの。
ダリルさんがな。
「あの手の熊は、余り賢くはない。
中層獣レベルなれば、気配を消すのも擬装しつつ行うが、あの程度なれば不用だろう。
俺とギーゼットの気配が消え、匂いが辿れなければ、コチラへ突っ込んで来る。
そこを仕留めれば良いだけだ。
まぁ、広場中央の方が後処理し易かろう。
ハゲルとロゼッタには悪いが、武装して向かって貰えんかね?」
「かぁ!
まぁ、立ってるだけ、てぇんならよぉい。
別に構わぬぇいがぬぅえい」
「ふぅ。
本来なら命懸けの仕事さね。
ダリルの依頼じゃなけりゃ、蹴ってるトコロさ。
まぁ、ダリルだから大丈夫だろーけどねぇ」
そがぁなコトを告げながら、二人は広場の中央へと。
すると熊が二人に気付いたようじゃぞい。
『頭が良く無いと、ダリル様が申されておりましたが、そうでも無いみたいですが?
ダリル様達の気配が消えた後も、匂いを嗅いで伺っておりますし、ハゲル様方の様子も見ております。
無闇に突撃しない程度には、知能を兼ね備えているかと』
ジェミアさんが、そがぁなコトをの。
じゃがのぅ。
儂からしたら、ダリルさんの気配を感じ取った時点で撤収せんコト自体で、頭悪いとしかの。
しかも、姿を現しちょるでな。
大馬鹿者じゃてな。
『いや、その。
そう言われましたら、確かに』
「いやいや、ご主人様?
相手は動物ですよ。
知能が劣るのは、当然では?」
沙織さんが、そがぁ風にの。
じゃが、の。
地球の野生生物も案外賢い。
人が思うちょる以上にじゃ。
何せヤツらは、生き死にが掛かっておるでな。
生存競争に関するコトじゃと、意外な知恵を発揮したりの。
ましてや、ダリルさんの世界に住まう生き物じゃ。
過去文明の影響を受けちょるに違いあるまいて。
そうじゃなけりゃあ、あがぁな四本腕な熊なんぞ産まれまいて。
そがぁな生き物の知能は、地球に住まう野生動物なんぞよりは、高かろうよ。
しかしじゃ。
中層どころか、浅層の獣と比べるなれば、単なる阿呆じゃろうて。
現に、ほれ見てみい。
我慢が効かんくなったんか、ハゲルさん達へ突撃しちょるわい。
「いや、なんで冷静に?
危なく無いんですか、あれ?」
危のぅは、無いのぅ。
っか、沙織さんには、ダリルさんが見えちょらんか。
既に矢を弓に番え、キリキリと引き絞っちょるでな。
ただのぅ。
「なんでしょう?」
いやの。
番えちょる矢が二本なんじゃがな。
どうゆうコトじゃろか?
あ、放たれたのぅ。
いやぁー速い速い。
弓で放たれた矢の速度ではないぞい。
ちゅうか、熊さんの突撃も速いわい。
前足が四本じゃでな。
強力な脚力を誇る後ろ足をサポートしつつ、さらに勢いを。
そがぁな猛進中の熊へと矢が。
矢ちゅうか、レーザー光線かえ?
普通なれば、一瞬キラッちゅう感じで光ったに過ぎんじゃろう。
じゃが、矢は的確に対象を射抜いちょるでな。
熊の両面へ深々と。
ありゃあ、完全に脳まで届いちょろう。
即死じゃな。
苦しませぬ、ちゅうよりじゃ。
素材確保のためじゃな。
あがぁな綺麗な素体は、稀じゃろ。
高値で売れそうじゃわい。




