あるぅ日、鉱山でぇ、熊さんにぃ、出会ぁったぁ。四本腕の赤熊じゃっ!
手にした金を見て惜しそうな顔に。
買い叩かれてはいるが、久々に纏まった金となる。
その金を手放し、さらなる出費。
考え込むのを見て、ダリルさんがの。
「買い付けが終わったのであれば、帰るぞ。
ココへ居ても得る物はあるまい?」
そがぁなコトをな。
したらハゲルさんがの。
「そうだぬぇい。
鉱石は、もっと買い付けても良いがぬぇい。
無理に金出して買うほどじゃぬぇいしなぁ。
よし!
帰るか!」
そのようにの。
「そうさね。
鉱山は、ココだけじゃ無いわさ。
ダリルに頼めるなら、直ぐに来れそうさね。
アンタが良けりゃあ、頼みたいわさ」
なかなかに、チャッカリしちょるわい。
三人は既に帰るつもりであり、熊のコトは頭に無いみたいじゃの。
で、シビレを切らした熊が、林の方に姿を。
それに気付いたハゲルさんがの。
「げっ!
フォアハンド・レッドグリズリーじゃぬぇいけぇ!
ありゃあ、俺とロゼッタならギリギリだぜぇい!?」
などとの。
それを聞いたダリルさんがの。
「ん?
熊であろ?
何を騒ぐコトがある?」
不思議そうに首を傾げちょるな。
そんなダリルさんへハゲルさんがの。
「んな訳あるかぁ!
熊っうても、あがなヤツを普通の熊扱いぬぃ、すんじゃねぇいっ!」
そのように主張する。
しかしダリルさんはな。
「別に鎧熊やアーマードベアではあるまいに。
せめて猪熊あたりなれば、楽しめようが、たかが熊だぞ。
騒ぐほどではあるまいに。
現に、俺とギーゼットを恐れて、近寄って来ぬではないか。
まぁ、飢えているようだから、我慢出来ずに姿を現したみたいだがな。
コチラを見て、ギョッとして固まっておろう?
その程度だ」
なるほどの。
なんか、コチラへ来るのを躊躇っちょったが、我慢できんように顔を出しての。
で、ギーゼットと目が合ってギョッとし、ダリルさんを目視して硬直しておるわ。
この熊さんなんじゃがな。
結構ゴツい感じでな。
儂が出会ったら、即座に逃げておるぞい。
真っ赤な血のような毛皮に身を包んじょるんじゃがな。
特に異様なのは、その四本腕!
じゃ、のぅてな。
そん腕が生えちょる肩じゃて。
アメリカンフットボールなんぞでは、肩パッドが目立つがの。
あがぁな肩パッドみたいな肩なんじゃわ。
そがぁなゴツい肩から腕が伸びちょる感じじゃて。
良く背中から腕が出るタイプがの。
ラグラクスなんぞも、そのタイプじゃったなぁ。
じゃが、アレじゃと補助にしか、腕が使えんでな。
可動域が狭くなるでのぅ。
広く頑丈な肩から、ブッ太い腕が伸びちょれば、歩みや走りだけじゃのぅて、普通に腕として使えるじゃろうて。
『あの熊ですが、地球へ現存する猛獣は瞬殺されますね。
過去に存在した生き物でも、勝てる存在は皆無でしょう。
その様な生き物であるため、普通の狩人は、見掛けたら速攻で逃げ出します。
普通ならば勝てないのですが、ハゲルさんとロゼッタ嬢ならば、辛うじて勝てるかと。
ただ、頭は良くないため、罠を使えば勝率は上がるでしょう。
ですが、大概の罠は効きませんが』
いやいや、罠の意味が無かろうが?
ん?
「さて、荷は積んだコトだし、撤収だな」
ダリルさんが、当たり前のように。
「待て!
いや、待って頂けないか?」
「なんだね?」
ダリルさんが、声を掛けて来た役人を、不思議そうに。
「まさか、この状況を放置したりしない、ですよね?」
「?
意味が分からんが?
依頼を受けておらん。
狩る意味も無い。
だから去るだけだが、何か問題が?」
本気で不思議そうに。
役人は駆け引きと思っておったみたいじゃな。
じゃが、ダリルさんにとっては些事に過ぎん。
ゆえに、本気で役人が、何を言いたいか理解しちょらんじゃろうて。
おそらくじゃが、こん熊が浅層へ赴けば、狩る側から狩られる側になるじゃろうて。
そんな浅層獣未満の生き物を歯牙に掛けるハズもないでなぁ。




