屋敷から出発したみたいじゃな。ん?いや、ダリルさん?
結構な距離を移動しちょるんじゃがの。
時間的には、さほど掛かってはおらん。
ゆえにハゲルさん達は、出発間際と思うておるの。
まぁ、ダリルさんがの、風晶石にて風圧を散らしておるでなぁ。
荷車の荷台には、全く風圧が。
しかも路面の状態を見て、荷車へ影響が少ない場所を。
さらにじゃ。
風晶石にて、軽く車体を浮かせちょるし、車輪の軸へ水晶石にて水ちゅうか、油を纏わせちょる。
車輪はスムーズに動くは、風のクッションが車体の振動を吸収するはで、下手な自動車より乗り心地が良かったりな。
そがなけぇ、ハゲルさん達は、出発後に高速移動しちょるコトに気付いておらんかった訳じゃ。
じゃが。
「ん?
なんか。
はい?」
「ハゲル?
どうしたんだい?」
ロゼッタ嬢が訝し気に。
ちなみに荷物を確認しちょるでな、荷台の外は見ちょらんぞい。
で、ハゲルさんがの。
「い、いや。
周りが。
景色がな」
「?
なんさね?」
「千切れ飛んで行くんだが?」
唖然、ちゅう感じでの。
まぁ、徒歩が基本であり、早い乗り物が馬じゃ。
しかも馬なんぞは、金持ちか貴族しか乗らんでなぁ。
馬車に乗るコトもあるんじゃが、馬車にのるなれば乗り合い馬車じゃて。
そがなんが、疾走するコトなんぞ、まずは有りゃせんでな。
そうなるとじゃ。
自動車に乗って、乗車席から外を見るような景色でさえ、まずは見るコトがなかろうて。
ほんじゃのに、今は新幹線を凌駕する速度で走っておる。
まぁ、音速は超えてはおらんがの。
ただ、辺りへ与える風圧がの。
普通なれば、じゃが。
そこら辺は、ほれ、ダリルさんじゃてな。
風晶石にて、キッチリ対処しちょるわい。
風を制御しての、風圧は上空へと散らしておるぞ。
まぁ、全く影響ないか?ちゅうたらの。
衝撃波は上空へ流しておるが、空気が上空へ流れるでな。
気圧の変化なんぞもの。
そこら辺も、風晶石にてある程度は空気を埋めて押さえておるが、ちとばかり強い風が吹くのは、仕方あるまいてな。
しかし、じゃなぁ。
よくも、まぁ、こがぁな荷車で、こがぁな速度を。
これ、ダリルさんが、風晶石と水晶石にて補強保護しちょらんかったら、瓦解しちょるじゃろ。
明らかに、この速度の移動に、車体強度が持つとは、の。
っか、いや。
持つモンなんかえ?
『アレ、エアカーと化してますが?』
はい?
どう言う意味じゃ?
『完全に浮いていますね。
風の板に乗って滑るように移動しております。
つまり、荷車としてではなく、単なる荷台としてしか機能しておりません』
なん、じゃ、とぉ!?
あ!
ホンマじゃ!
荷車が数十センチほど浮いておるわい。
つまり、風の繭に包まれた荷車が、風の板に乗って移動しちょる。
そんな感じかや。
『眉と言うかカプセルでしょうか。
まぁ、乗客に被害はないでしょう』
で、そんな乗客であるハゲルさん達なんじゃがな。
「え?
いや、え?
景色って、千切れるモノなの??」
「俺へ聞かれても、分かんぬぇいかんよぉい。
っか、もしかしてなんだが」
「なんさね?」
「コレ、異様に速く動いてぬぇいけぇ?
遠くを見ると、移動してるってぇ、感じぬぁんだがよぉい」
ハゲルさんが指摘し、ロゼッタ嬢が近場でなく遠くを。
「ん?
どうしたんでぇい?」
うや、ロゼッタ嬢が震えて、ハゲルさんにピトっとの。
うん。
怖かったみたいじゃな。
まぁ、そりゃそうじゃわな。
こがぁな速さでの移動は初めてじゃろうしのぅ。
「いえ、ご主人様。
アレだと、私でも怖いですが?」
沙織さんが、そがなコトをの。
そんなモンじゃろか?
『あの強度の荷車で、あの速度にて移動となれば、普通は走行中分解しているでしょう。
二人ともが鍛治師であり、物作りのプロです。
なれば、荷車が持つとは、思えないでしょう』
それにしては、ハゲルさんは冷静じゃが?
『荷車が壊れるならば、既に壊れています。
ですが、荷車は無事。
そのコトから、ダリル様が何かしていると悟ったのでしょう』
むぅ。
意外と遣りおるわい!




