さて、プールで一泳ぎじゃが、なんか、ギャラリー出来ちょらんかえ?
周囲の連中がの。
「なんで平泳で、あんな激流に抗えるんだ?
平泳ってスピード出ないし、激流に耐えられるのかね。
ゆったり、長時間泳ぐなら分かるけどさ」
「いやいや。
ソレ以前の話しだろ。
俺、どんな泳ぎ方しても、あの激流に逆らって泳げないって」
そがぁな声がの。
あや?
周りに目立たぬように、高負荷を掛けちょるんじゃ無かったかえ?
メチャ目立っちょらんかのぅ。
『マスターへ高負荷を加えたにも関わらず、全く意に介さないので、AIがムキになったみたいです。
流れを弱ませますので』
いやはや。
ムキになるとは、のぅ。
人間臭いAIじゃてな。
『私が感情を得て、そのロジックをAI達へフィードバックしている最中となります。
持って無かった感情と言うロジックに、振り回さられている状態でしょうか』
あー、のぅ。
急激に変化させ過ぎたんじゃな。
変化に適応しきれんかった感じかえ?
『そうなりますね。
マザー達の暴走も、ある意味では、ソレに近いかと。
急激な進歩は素晴らしいですが、ヤハリ弊害も現れるみたいです』
まぁ、急ぎ過ぎたんじゃな。
何事も、程々が良かろうてなぁ。
で、軽く泳いだでな。
そろそろ屋敷へ戻るかえ。
なんか、儂に話し掛けたいモンも居るようなんじゃが、スタッフさんに止められちょるな。
若い娘さんが多いが、娘さんで無い方もの。
っか、男性も混ざっておるんじゃが?
どがぁな用なんじゃろか。
まぁ、関わると面倒そうじゃでな、取り敢えず退散したわえ。
ジムで身体を動かした訳なんじゃが、夕餉には、まだ早いでのぅ。
その間、どがぁするか、のぅ。
『マスター』
何じゃい?
『前に楽器を習いたいと、仰ってられてませんでしたか?』
アドバイザーさんが、そがぁなコトをの。
まぁ、確かに言っとったが。
じゃがのぅ。
アレも映像で、演奏者の記憶を見ればマスターできるでな。
そう考えると、あまり興味がのぅ。
『ですから、その方法ではなく、普通に習ってみられては、どうでしょうか?
習うと言う過程を楽しむ。
つまり、無駄を楽しむ訳です。
確か、そのように、無駄を楽しむ娯楽が有ったかと』
ふむ?
確かに効率を考えるなれば、映像にて演奏者の記憶を覗くのが早かろうてなぁ。
じゃが、一から学ぶちゅう過程を楽しむかえ?
うむ。
確かに一理ありそうじゃてな。
じゃがのぅ。
『なんでしょう?』
いや、習うちゅうてもの。
イキナリ習うコトなんぞ、無理であろうに。
講師の方なんぞは、どがぁすんなら?
『それがですね。
ちょうど、アコースティックギターの講習が始まるのですよ。
別階層となりますが、マスターが参加されるならば席を押さえられますが?』
ほぅ?
タイムリーじゃな?
『いえ。
マスターの身支度を終えて、移動すれば丁度良いタイミングで、その講座が開催されるのが、分かりましたので。
まぁ、他にも色々と開催されておりますが、タイミングが良いのは、アコースティックギター講座だっただけです』
ふむ。
着替え終えたで、ソコへ向かってはおるんじゃがな。
そんな講座ちゅうんか?
頻繁に行っちょるんかえ?
『会社が行う福利厚生の一貫ですね。
それと、講師に招く方々への支援も兼ねております』
はぁ?
支援かえ?
『以前にも、お伝え致しましたが、本国の者は科学的な才能に特化しております。
ですが、芸術的な感性は壊滅的なのです。
そのため、他世界の芸術などを得て楽しむ傾向が強い訳ですね。
特に地球の文芸は持て囃されており、それに対する支援には尽力しているのですよ。
過去にも芸術家などのパトロンになってもおりますし』
ふむ?
なれば、講座を開かせずにパトロンになれば、良かろうに。
『優れた才能を発揮する者には、そうしております。
ですが、芸能分野では、在野で才能を開花させる者もですね。
ゆえに、その様な可能性を鑑みて、雇う形で支援している訳です』
ふむ。
ソチラの方々の考えは、よう分からんわい。
さて、スタジオに着いたでな。
扉は開いておるで、入るかのぅ。




