さて、ダリルさん視聴は終えたでな。移動するかえ。
沙織さんの雰囲気が変わったゆえ、首を傾げておるとの。
『マスターは、朴念仁ですからねぇ』っと。
どう言う意味じゃ!
まぁ、追求すると、藪から蛇が現れそうじゃでな。
そん後は、沙織はポッドへと。
儂は自分の部屋へじゃな。
リアルの状態に合わせんと混乱するでな。
まぁ、なるべくは、そうするようにの。
映像世界から抜け出しリアルへと。
そう、まさに、時は動きます、じゃな。
っても、儂の精神が映像世界へ分け入っておっただけじゃ。
世界は止まってはおらんがな。
そうそう。
物語りでの、時を止めるなんちゅう話しがの。
ありぁ、無謀も無謀じゃで。
その時を止める範囲は、何処までじゃな?
次元が存在する空間を含め、全てかえ?
そがぁなコトが、可能かのう?
例えば、時を止めたモンの半径百mを、止めたとするとじゃな。
その場所は、地球の自転に置いて行かれることにの。
まだじゃ。
地球は太陽の周りを回っておる。
凄まじいスピードで、のう。
さらに、太陽系も銀河にて回っており、銀河も。
さらに、さらに。
宇宙は膨張しちょるらしいて。
この速度も呆れる程らしいてな。
で、その宇宙を内包する次元も、実は高速で動いちょるそうな。
ゆえに次元間移動も、ソレに合わせて行う必要があるんじゃと。
で、様々な要素が絡むように、高速で動いておる一点を停止させるのじゃぞ。
停止状態の空間が固定され、強固であったとしてじゃな。
そん空間が存在しちょる世界は、違うでな。
地球の自転に取り残されるなれば、地球が削られるわな。
地球が太陽の周りを回る公転にも、置いて行かれるじゃろう。
地球に穴が開かぬか?
さらに、銀河の動き、銀河団の動き、宇宙の膨張、次元の動き、などなど。
様々な動きに取り残される訳じゃ。
じゃが、逆に言うと、高速で移動しちょるともの。
時が止まり、空間が固定され強固な物体と化した場所。
最早、凶器じゃてな。
そうなれば、地球どころか、様々なモノがブツかり破壊されるじゃろうて。
だからじゃ。
決して時は止めてはならん。
世界が崩壊するでな。
『マスター?』
なんじゃい。
『誰にナレーションを?』
別に良かろう。
たまに語りとうなる場合があるんじゃて。
口に出しちょらんのんじゃけぇ、誰の迷惑にもなるまいて。
『私は聞かされておりますが?』
あー
それは、仕方あるまい。
儂の思考を、アドバイザーさんが読み取っちょるんじけぇの。
ソレ禁止されたら、儂は常に、無我の境地になっちょらんとダメじゃでな。
流石に悟りは得ておらんでなぁ。
凡人の儂には無理じゃぞい。
そがぁな遣り取りしつつ、部屋から出る。
目的地は、地下のジムじゃてな。
廊下を歩き、エレベーターへと。
しかしのぅ。
日本家屋にエレベーターじゃてな。
しかも、エレベーターの扉は木製。
いや、木に似せた素材じゃな。
屋敷の内装に合わせた感じでのぅ。
全く違和感がないんじゃが?
誰がデザインしたんじゃろか?
うん、実に良いセンスじゃてな。
しかしのぅ。
毎回、思うのじゃが、エレベーター来るのが早過ぎんかえ?
階を移動する速度も異様なほどに速いんじゃが?
なのにエレベーター中は応接間みたいにの。
ソファーに座っても良いんじゃが、座ったら直ぐに立つ感じじゃて。
ソファー、必要かえ?
っか、エレベーターん中に調度品を揃える意味が分からん。
さらに、こんなに広い部屋みたいな空間は、不要じゃと思うんじゃがな。
じゃって、のう。
扉が閉まって、数秒で扉が開くんじゃぞ。
調度品を使う暇もないわい!
『実は、使用人の休憩スペースも兼ねております』
はい?
いや、休憩室は在るじゃろが?
『アチラで休むと、急な用事を告げられる場合がですね。
エレベーター内は不干渉との取り決めがあります。
働き過ぎな使用人に対しては、強制的に押し込めて休息させておりますし』
なんと!
サボりではのぅて、逆かいな!
っか、AIの目が隅々まであるからのぅ。
サボるのは、無理か?




