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勇者魔王の日常冒険譚  作者: ゆーひら
【三界戦争編】
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99/122

94. 大魔王、対峙する。

「アルフ! 大丈夫!?」

 ロゼは膝をつくアルフに駆け寄る。


 アルフたちの前に現れた鎧の騎士。

 その正体は、アルフの実の弟オリハだった。


「オリハ……。何でオリハが……!?」

「やっぱり……。見間違いじゃなかったのね」

 どうやら、ロゼも彼の正体に気づいていたようだ。

 立ち上がるアルフとともに、2人して思いつめた表情で俯く。


「あの……。先ほどの方は、お二人のお知り合いなのですか?」

 リリが2人に遠慮がちに問う。状況が飲み込めない悪魔たちではあるが、未知の土地に足を踏み入れた以上は、聞いておかねばならない事だろう。

 ロゼは隠す事なく____隠す必要もないが____リリたちに口を開いた。


「ええ。あの子は……オリハ。3年前に病気で亡くなった筈の、アルフの弟です」


「え_____」

 それを聞いたリリは、信じられないといった風に眉を少しひそめる。見間違いではないか_____だがリリがそれを口にする前に、アルフが先に言葉を発した。

「間違いねぇ。間違えるもんか。……オリハ。お前は、生きて……」

 拳を地面に添えるように置き、立ち上がるアルフ。

 先程、ツヴァイ_____オリハと対峙した際の動揺は収まっているかに思える。だが……。


「でもよ……。襲ってきたって事は、あの()りー神サマの仲間だって事だよな?」

 ウル太郎の言う通りだ。この先を進むのなら、必ずまたオリハはアルフの目の前に立ちはだかる。その時は今度こそ敵として闘うことになるかもしれない。

 しかし、アルフの考えは違った。

「…………。先を急ごう。今は、レイドの助太刀にいかねーと」

 そうして決意を新たに、アルフは皆の方へ振り返る。

「そうすりゃまた、あいつにも会える筈だ」


 アルフは信じていたのだ。死んでいたとされた弟が、何処かで生きているということに。

 だからこそ、それがどんな再会であろうと、覚悟はしていたのだろう。それ故に、彼は迷わなかった。迷わずに___当初の目的に目を向け直す事が出来たのだ。


 リリたちは何も言わず、アルフの言葉に頷く。そしてミレトスが、遠くそびえる浮遊島に向けて杖を向けた。

「アドネーなら恐らく、あそこじゃろう」

 そこは白い空を挟んだ先にある、一際(ひときわ)大きな孤島。そこにある半壊した宮殿を、ミレトスは差していた。

「さっきから、あの宮殿からバカげた魔力を感じよるわい。もう闘いは始まっとるのう」

「ミレトス様のワープ魔法で一気に瞬間移動できませんか?」

 リリの提案に、ミレトスは杖を左右に振る。

「無茶言わんでくれ。人間界に作っとる超巨大なワープだけで手一杯じゃ」


 どうやら人間界の王都『プロスパレス』と天界を繋ぐ、『異界の結晶』間にあるワープ……。天使兵たちを直接王都に近づけさせない為にと仕込んだあのワープは、まだ生きているようだ。

 確かに人間界での闘いはひとまず収束はしたものの、また何処で天使兵たちが身を潜めているかわからない。そういった意味でも、あのワープはまだ必要なのだろう。

 そしてミレトス曰く、それを保ち続ける為には、新たなワープは作れない。つまりこの場はワープ抜きで宮殿まで行かねばならないという事だ。

 それを理解したリリたちは、仕方なしと宮殿を見据えた。


「さて……。では気を取り直して、向かうとするかの。アドネーの元へ」


 一向は、レイドのいる先____宮殿へと、再びその足を動かした。



____________


 リリたちが宮殿を目指し始めたころ。

 宮殿では、この世でいちばん激しい闘いが勃発していた。


「ぬぅぅぅりゃぁあ!!」


 サルタンとアドネー。大魔王と創造神。

 それぞれその名に恥じない実力を以て、相対する。


 サルタンは叫びながら、最大級のパワーとスピードを兼ね備えた拳の乱打をアドネーに繰り出す。だがそれは、アドネーにひとつとして命中しない。


「『光槍(スピア)』」


 一瞬の隙を突き、アドネーの右手から放たれた技____。腕がギュルリと円錐形の鋭利な槍へと変化し、サルタンの顔面に向けて真っ直ぐに牙をむく。


「っ!!」

 サルタンは左腕を駆使し、迫り来るそれを左側へと受け流す。槍はサルタンの左頬を僅かに掠め、元の腕へと姿を戻した。


 互いに一歩も譲らぬ、生死を賭けた闘い……。頬の擦り傷からツゥ、と血を流すサルタンに対し、アドネーは小さく笑った。


「まったく……。折角『造った』宮殿が滅茶苦茶だよ。君のその破壊衝動は、1000年経っても変わらないみたいだね、大魔王」

「ぬかせ。貴様は『創造神』じゃろうが」


 サルタンは話半分で胸の前に拳を合わせ、氷魔法『氷結界(ノステール・セリオン)』の構えを取った。


「『氷結界(ノステール・セリオン)』!!」


 アドネーの周りに出現する、無数の氷の刃_____。だがアドネーは、その刃が自身を囲みきる前に瞬間移動の如く姿を消して回避し、上空へと飛び上がった。


「ふふ。そうだね」


 空中で一回転してサルタンを見下ろした(のち)、アドネーは大地に右手をつけて着地する。


「『光砲台(シエル)』」


 その言葉とともに大地から形成されたのは、3つの『砲台』。アドネーの目の前を覆うほどの大きさを持ったその砲台の銃口が、徐々に光り出していく。


「『光弾(バレット)』」


 そこから一斉に放たれた、『魔力の弾丸』。ガトリング砲の如く連射されていくその標的は、勿論サルタンだ。


「ぬっ!」


 だがそれは直進的で、単調な攻撃。威力だけを見れば相当なものだと予想されるが、当たらなければどうという事はない。サルタンは跳躍してヒョイと砲台を飛び越し、アドネーに向けて拳を構えながら降下する。


「おおおお!!」

「ふふ。相変わらずよく吠える」


 対してアドネーはそう呟き、砲台に向けて手をかざした。


「『光魔召喚(サモン)』」


 砲台はひとつにまとまって変形し、生物へと変貌していく。やがてそれはひとつの大きな土の魔物(ゴーレム)となり、サルタンの前に立ちはだかった。


『ガアァァァ!!』


「こざかしい!」


 しかしそれはサルタンの前では茶々(ちゃち)な小細工に過ぎない。振りかぶった拳を土の魔物(ゴーレム)へと振り下ろし、一蹴_____。そして、その眼前に映ったのは、憎きアドネーの冷笑。


「!!?」


 その意味を理解する前に、サルタンの背後を予期せぬ一撃が襲う。それは『弾丸』……。先程回避した無数の弾丸がサルタンを追尾し、その背に襲いかかったのだ。


「ぐぅっ!」

「『光槍(スピア)』」


 アドネーの追撃。変形した右腕から放たれた槍が、サルタンの脇腹を貫いた。


「!!」

 ジワリと感じる、確かな痛み____。だがそれこそ、相手に付け入る『チャンス』にもなり得る。


「っ……ふ、ははは!」


 サルタンは『スピア』を両手でがっしり掴んで自分から引き抜き、そのままアドネーを反対側へとぶん投げた。


「____!」


 そして自慢の足腰で一瞬のうちに吹っ飛ぶアドネーへと追いつき、渾身の力を込めて拳の一撃をお見舞い。アドネーは地面に叩きつけられ、凄まじい衝撃に一瞬浮遊島が振動した。


 激しい闘いの音は、2人が静止することによって一度(ひとたび)停止する。


「……やはり君は、私を楽しませてくれる」

 アドネーは大地に寝そべりながら、口元に着いた血を親指で拭った。


「その割には大して効いておらんように見えるがのう」

 サルタンが言いながら、背中に「ふん」と力を込める。それにより先程命中した弾丸が次々と排出され、形を失って消滅した。


 1000年来の再戦。互いに互いの実力を探りながら、闘いの熱はヒートアップしていく。アドネーはよろりと立ち上がり、服についた埃を払った。


「まぁ、準備体操はこのくらいにしておくとしようか。丁度『彼ら』もやって来た事だしね」

「……貴様の思い通りにはさせんぞ、アドネー」

「やっぱりフィアから聞いたんだ。私の『目的』を」


 アドネーの言葉にサルタンは目の色を変える。


 彼の『目的』は世界を破壊し、作り変えること。だが今の口ぶりから察するに、まだ何か『お楽しみ』があるようにも思える。

 それが何なのか現状では分かり得ないが、しかしサルタンはより一層の覇気を込めてアドネーに言い放った。


「その為に儂がおる。……貴様はここで倒す。儂の命に代えても、じゃ」

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