83. 反撃の狼煙は上がる
圧巻の光景だった。
王都の中心街に集結したのは、国王をはじめとする王国の親衛隊、住民たち、そしてレイドたち勇者一行。
さらに、伝説の剣を創り出した『賢者ミレトス』までもが、一同に会していたのだ。
「信じ難ぇが……。どうやら本当に、ミレトスの意思がこの剣に宿ってるみてぇだな……」
頭をくしゃくしゃ掻きながら、レイドは聖剣ゼットカリバーを掲げる。
『やれやれ。やっと信じる気になったか、小僧』
聖剣に宿るのは、1000年前の賢者『ミレトス』の意思。彼は『ふぉほほ』と笑いながら、レイドを見下ろして満足げだ。
何故ミレトスの意思が聖剣に宿っているのか_____その理由は定かではないが、レイドたち人間界の者にとっては嬉しい誤算だろう。伝説の剣を創る程の魔力を持ち合わせた人物が味方となり、これ程頼もしいものはない。
そして彼の力により、行方不明となっていた王宮の兵士たちも全員復活。戦力は大幅にアップし、士気はますます高まっていく。
「国王様! どうか、我々に命を!」
「王都をこんな目に合わせたそのアドネーとやらを、許すわけにはいきません!」
「その通りです、国王様!」
打倒アドネーに燃える兵士たち。ここまで来て、尻込みするものなど皆無。それ故に少しばかり熱くなりすぎている彼らに、国王は困り顔をした。
「むう……困ったのう。これでは収集がつかん」
そう言って、国王は頬をポリポリと掻く。
兵士たちが心強いのは確かだ。だが敵の数、実力は依然として未知。熱い勢いに身を任せていては、恐らく勝つのは難しい。
それを危惧したのか、レイドは全員に聞こえるように大きな声を上げた。
「おーい! みんな、静かに!」
レイドのその声で、一先ずは落ち着く兵士たち。
「勇者……」
「勇者さん……」
ザワザワとチラつく小声の中、レイドは人差し指を立てて続けた。
「確かにみんなの言う通りだけどさ、全員で行くにしても数が多すぎる。それに人間界の守りを手薄にしたんじゃ、またアドネーと天使兵の奴らに狙われちまうぞ」
「それは、そうですが……」
「だから人間界を守ってくれる奴が必要だ。それに関しては、王都に地の利のあるお前たちが適任だろ? お前たち兵士が王都を守ってくれるんなら、こんなに心強いことはないぜ」
レイドは、兵士たちから住民たちへと視線を変える。
「住民のみんなにだって出来ることがある。力や体力のある奴は兵士を手伝って王都の防衛、それと簡易的でいい、みんなが集まって休めるような場所を作って欲しい。ほかにも人数分の食糧を手配したり、怪我人の手当てをしたり色々ある。そういうのは、料理が得意な奴や力のない奴の出番だ。みんなが力を合わせれば、なんだってない筈だぜ」
レイドの指示は的確だった。そしてそれはゆっくり伝わっていくかのように、人々の心を鼓舞していく。
「あ、あぁ……」
「確かにそうだ……。こうしちゃいられねぇ! おい! 元気な奴集合! 俺たちは兵士の手伝いだ!」
「おぉ!」
力のある者。彼らはいち早く反応し、王都の復興に向けて動き出した。
「さーて、私たちはとびきり美味しいご馳走を振舞ってやろうじゃないか!」
「食材なら任せてくれ! 幸い俺の店は無事だ、店の中にあるモンなら遠慮なく使ってくれ!」
料理の得意な者。主婦や料理人を中心に、調理器具や食材を求めてテキパキと準備をこなしていく。
「怪我してる人、いませんかー!? 応急薬をご用意しますので、並んでくださーい! 重症の方は動かないで、専門医がすぐ向かいまーす!」
医学の知識のある者。それぞれが役割を見つけ、手を取り助け合う。
全ては街の為に。
人間界の為に。
「おお……王都の者たちが団結して……」
気づけばそこには、活気溢れる住民たちの姿。
街並みこそ戻ってはいないものの、また全てが元通りになる事もそう遠くはないだろう。
国王は感激したのか、その眼に大粒の涙を浮かべていた。
「そんな難しいことじゃねぇさ、力をあわせることなんて」
レイドは頭の後ろに手を組み、ニッと笑う。
_____もう人間界は大丈夫だ。そんな事を思ったのか、とても嬉しそうだ。
「あの……勇者さんたちはどうするつもりですか?」
そんな中、兵士の内の1人がレイドに近寄ってきた。レイドは握りこぶしを固め、静かに言い放つ。
「決まってるさ。俺たちは……アドネーの所へ向かう」
それに対し、アルフは純粋な疑問をぶつけた。
「でも、どうやって行くんだ? 天界の場所なんて分かんねーぞ?」
「それも、あんたなら知ってんだろ? ……ミレトス」
右手に持った聖剣……レイドは聖剣を目の前に構え、中に宿るミレトスに尋ねる。ミレトスは一度溜息をついたかと思うと、面倒臭そうな口調で答えた。
『全く、礼儀のなっとらん小僧じゃ。目上の者には敬意を払わんか、バカタレ』
レイドは目を細める。
「うるせ、剣にペコペコ頭下げられっかよ。人間の姿にでも戻れるんなら、考えてやるけどな」
『口の減らぬ若造が。ふん、まあ良い。時間もない事じゃ、教えてやろう』
ミレトスは一拍置いてから続けた。
『天界へと続く道は2つある。1つは魔界にある『霧の森』の上空……そしてもう1つは、ここ中心街の上空じゃ』
「中心街? この上から天界へ行けるのか?」
レイドは空に人差し指を向ける。聖剣は頷くように刀身を揺らした。
『そうじゃ。上空へ向かい、そこで『異界の結晶』を砕け。さすれば、天界への道が現れるじゃろう』
彼らにとって思いもしなかった、天界へと通じる『道』。しかしその情報を聞いたアルフは、、腑に落ちないというように首をを傾げた。
「ちょ、ちょっと待てよ。それなら、何で天使兵は中心街じゃない別の場所から王都を襲いに来たんだ? 中心街と天界が直通で、ほかに人間界へ続く道がないってんなら、天使兵はどこからきたんだよ?」
アルフの質問に、聖剣は切っ先をくるくる回して答えた。
『ふぉほほ。それはこのワシがチョチョイと手を加えてやっただけじゃ。中心街に出ると思いきやあら不思議、全く別の遠い場所へ強制ワープさせてやったわい』
ワープ魔法というのは、非常に高度な魔法の一種。レイドやアルフですら習得していない、最高難度の魔法だ。それをいとも容易く使ってのける聖剣に、流石のレイドも驚きの意を示した。
「すげー、そんな事も出来んのかよ……」
『ふぉほほ、何てったってワシゃ賢者じゃからのう!』
自分の凄さに気づいてもらえた事による嬉しさからか、聖剣は高々に笑い出す。そこにたった今の威厳は、嘘のように感じなれなかった。
「何だこの大魔王に似た感じのノリは……」
レイドは半ば呆れ顔で、ひとり笑う聖剣を自分の目線の下辺りに持ってくるのだった。
暫くして聖剣は笑いを止める。そうして何かを思い出すかのように、真面目トーンで話を切り出した。
『それよりも、じゃ。行動するならば早くした方が良いぞ? 奴らの目的はこの世界の『破壊』……。それは人間界だけでなく、魔界も同様じゃ』
聖剣の言葉に、リリはいち早く反応する。
「!! じゃあ、今頃魔界にも……!?」
『ああ、いるじゃろう。天界から降り立った天使兵がゾロゾロとのう。魔界には強制ワープの魔法はかけとらんから、魔王城のすぐ近くの『霧の森』に現れる筈じゃ』
「そんな……だとしたら、魔界のみんなが……!」
心配そうな表情で、胸に手を当てるリリ。
「ゾン吉、マーシュ……」
魔界で留守番している者たち……。彼らが今、危機に遭っているかもしれない。レイドは考えを張り巡らせたかと思うと、予想外の行動を起こした。
「ベゼル!」
「え……うわぁっ!?」
ベゼルに向けて託すように投げたソレは____聖剣ゼットカリバー。
ベゼルは突然の事態に少々もたつきながらも、聖剣を抱くように受け取める。
聖剣はベゼルに触れた途端に小さくなり、ナイフ程の大きさになって、小さなその手に収まった。
「それ、持ってってくれ。それでアルフやリリたちと一緒に魔界を助けに行くんだ」
レイドは穏やかに告げる。
「……ゆうしゃはどうするの?」
ベゼルがおずおず尋ねると、レイドは遥か上を見上げて答えた。
「……俺は天界へ行く。どっちにしたって、このままじゃ拉致があかねぇんだ。だから、アドネーを直接ぶっ叩いてくるよ」
真上を見ても視界に捉えることすらできない程、遠くにある『天界』という世界。
その高みへと辿り着くことが出来るのは、レイドのような選ばれた人間だけなのかもしれない。
「そんな……1人でですか!? 危険すぎますよ!」
リリがたまらず、止めに入る。
ミレトスの意思が宿った聖剣と一緒ならばまだしも、完全に1人で旅立とうとするレイド。アドネーの未知なる力に立ち向かうには、余りにも無謀と言える。
だが、『未知』なのはレイドも同じこと。
「大丈夫。なんか……力が湧いてくるんだ。今ならアドネーとも闘り合えそうな気がする」
その言葉からは感じ取れるのは、絶え間ない自信。
天使兵を退けて、人間と和解して、彼には今、得たものがある。
彼のまっすぐな顔つきは、まるで何か重いしがらみから解放されたかのように晴れやかに見えた。
「それに、1人じゃねぇさ。……アイツも闘ってる筈だ」
握りこぶしを見つめ、そう呟くレイド。
「え……?」
リリが疑問を浮かべるが、レイドはもう話を聞き入れてくれる様子ではない。こうなってはもうレイドを止められる者などいないだろう。それを悟ったのか、彼女は寂しげな表情で、それ以上の追求はしなかった。
「そんなわけで頼んだぜ、ベゼル。俺は天界、お前は魔界。場所は違うが目的は同じだ。勇者なら……一緒に世界の危機に立ち向かうぞ」
レイドは拳をベゼルへと伸ばす。
「う、うん! あ……」
それを見た ベゼルは慌てて聖剣を左手に持ち替え、余った右手で拳を作りレイドに差し出した。
「おうー!」
コツンと合わさる、2つの拳。
世界の危機に立ち向かう____その誓いを、2人は確かに交わしたのだ。
互いに誇らしげに笑みを作り、各々の向かう場所へと方向を見定める。
「アルフ。すまねぇけど、ベゼルの事……任せてもいいか?」
背中越しに伝わる言葉。アルフは頷き、ガッツポーズをした。
「あぁ、任せろ。んで、ぜってー負けんなよ!」
頼れる仲間からの『任せろ』と、激励の言葉。レイドにとって、これほど安心する言葉なないだろう。
不安要素をなくした彼に、迷いなどない。その表情は、3年前……荒野にいた時とは別人だった。
「パパー」
突然アルフの背後から聞こえたその言葉。
アルフが振り返ると、そこにはロゼの娘アルマの姿があった。
「アルマ。よしよーし、可愛いなぁお前は」
アルフはアルマを抱きとめると、ぐいーっと高い高いしたのち、頰と頬を合わせてグリグリしだす。
当たり前のように行なわれた一連の流れに、エリスはビックリして叫びがちに声を上げた。
「え……!! パパって、もしかして……アルフくんが、アルマちゃんの父親なの!?」
「ん……あぁ、そうだよ。そう言えば言ってなかったな」
アルマを抱っこしたまま、アルフはロゼの側に寄る。
「妻のロゼと、娘のアルマ。さっきまで2人が世話になってたみたいで、すまなかったな。礼を言わせてくれ」
少しも気付かなかった、とリリたちは唖然とする。だが言われてみれば、目元や雰囲気なんかは何処となく似ているように思える。何より『アルフ』と『アルマ』……1字違いだ。
「いえいえ! むしろ助けられたのは私たちの方ですから……」
リリははっとして、両手を振って感謝の意を伝えた。
アルフが再び娘との再会に頬ずりしていると、ロゼがやや尖った口調で口を開いた。
「アルフ。また魔界へ行くつもり?」
リリたちの前ではお淑やかで敬語だった彼女だが、やはり気を許した相手には言葉遣いも変わるようだ。
「おー。そんなとこだ」
「全く、貴方はいつも勝手に何処かへ行って……。心配するアルマの身にもなってよね?」
「お前は心配してないのかよ……」
「当たり前よ。……信じてますから。アルフもレイドも、ね」
腰に手を当て、ロゼは小さく笑う。それにアルフも同調した。
「……そうだな」
アルフとロゼ。共に大冒険をしてきた彼らは、決して切れることのない信頼の絆で結ばれているのだろう。……勿論、レイドも。
「まあ、それは別として。私も魔界に同行させて貰うわ」
ロゼはふう、と溜息をつき、片目を閉じてアルフに告げる。
「え、何でだよ?」
「魔界も人間界と同じような惨状になってたら、当然怪我人もいるでしょう? 人間界はもう私の出番は無さそうだけど、魔界には回復魔法の使い手が必要かもしれないし」
そうしてロゼはリリに視線を送り、口元に人差し指を当ててニッコリ笑った。
「ね、リリさん?」
「はい……。ロゼさんの回復魔法があれば、魔界の人たちも助けられるかもしれません。ぜひ、お願いします」
リリはペコリ、とお辞儀をする。
確かに魔界の現状は分からないが、人間界と同じ状態になっている可能性は高い。いや、レイドがいない分、もしかしたら壊滅的な状況になっている可能性もある。無論、アルフもそれを分かっていた。
だが、ロゼが同行するというならば、彼にひとつ個人的な問題が生まれる。
「あー、もう。……アルマはどうすんだ?」
額に手を当て、可愛い我が子を見やるアルフ。当のアルマは眠そうだ。
「この子は人間界に置いていくわ。その方が安全だもの」
そう言って、そっとアルマの頭を撫でるロゼ。すると話を聞いていたのか、国王が2人に近寄って答えた。
「それならば任せておけ。儂たちが責任を持って保護しよう」
背後にいる護衛の兵士も、うんうんと頷く。それを見て、アルフは決心する。
「国王様……ありがとう」
「感謝します。国王様」
2人は国王に軽く頭を下げ、眠そうなアルマに優しく告げた。
「アルマ。父さんと母さん、ちょっと出かけてくるから、いい子にして待ってるんだぞ?」
アルマは目を擦りながら、半ば寝ぼけて言葉を返す。
「んー……うん。しょーがないな。ぞんびのおにーちゃんに会ったらよろしくね」
「おー。心得た」
アルマのほっぺにキスをして、アルフは夢に落ちていく娘を国王に預けた。
「そんじゃ、魔界に行くのは俺とロゼ、リリさんエリスさんにベゼルくん、あと聖剣のじーさんでいいな?」
数を数えるように指を動かしながら、アルフは指揮をとる。
「ちょっと待て。俺もいるぞ!」
すると何処からか、勇みのある太い声が聞こえてきた。
「ウル太郎だー!」
ベゼルが歓喜して両手を振ると、その先にはズカズカと歩いてくるウル太郎の姿があった。
「おー、オオカミくん! 何処にいたんだ、心配したぞ!」
駆け寄ってくるウル太郎を、アルフは後頭部を掻きながら迎え入れる。まるで忘れてたとでも言いたげな様子に、ウル太郎は口をごもらせた。
「ぐ、噓つきやがれ。屋根上で気持ちよく寝てたのによ、テメーの変な魔法のせいで気づいたら中心街にいるじゃねーか!」
瘴気の男との闘いで民家の屋根の上に弾き飛ばされていたウル太郎。どうやら彼はそのまま昼寝をしていたようだ。
「わお、逆恨み。寝てたのは知らんけど、折角俺の魔法でここまで連れてきてあげたんだから、そこは感謝してくんないと」
「ちくしょー! なんか色々話聞いてたら、あの黒い男だけじゃなくて1000体の敵まで来ただとー!? 寝てる場合じゃなかったんだよ、チクショー! 俺も闘いたかったぜー!」
いかんせん会話の成り立たないウル太郎に、アルフは少し呆れながらも強引に話を進める。
「言ってること滅茶苦茶だな……。まぁいいや。そんでオオカミくんも魔界に行くんだな?」
「あたりめーだ! 次こそは大暴れしてやるぜ!」
拳を前に出し、闘気を放つウル太郎。これから魔界へ赴くにおいて、彼の力はきっと役に立つことだろう。
「よし。それじゃあ決まりだな」
こうして、遂に行動が始まる。
レイドは1人、天界へ。
アルフ、ロゼ、ベゼル(ゼットカリバー)、リリ、エリス、ウル太郎は魔界の危機を救うべく、闘いの地へ向かう。
「ゆうしゃ……気をつけてね」
ゼットカリバーを両手で大切そうに持ちながら、ベゼルはレイドに暫しの別れを告げる。
「おう。任せとけ」
レイドはグッと親指を立て、頼もしく返した。
「それじゃあ……出発だ!」
そして、各々は旅立つ。
「おお!」
これから始まる、熾烈を極めるであろう闘い____。打倒アドネーに向けて、全員がその一歩を踏み出した。
_______________
「アドネー様……! 申し訳ございません! 人間界を破壊すること叶わず、勇者の手によって阻止されてしまい_____」
ところ変わって、天界。
アドネーのいる、白の宮殿。
レイド、ハイガーによって返り討ちにあった天使兵は、片膝をつきながらアドネーに報告する。
「…………」
だがアドネーは何も言わず、玉座に座ったまま掌を前に出し、天使兵たちに向けて魔法を発動させた。
「あ……ぎゃあああああ!!」
黒く渦巻く魔法……まるでブラックホールのようなその魔法は、断末魔を置き去りにする程の速さで天使兵たちを呑み込んだ。
「まったく……使えない『失敗作』たちだ」
アドネーは眉ひとつ動かさずに、頬杖をついて声を漏らす。
側にいる鎧の騎士……ツヴァイも目を閉じながら彼の言葉に耳を傾けていた。
アドネーにとって、天使兵など数ある駒のうちに過ぎない。
彼のその態度がそれを物語っていた。
「おい。すぐに新しい兵を人間界へ送り込め。そして今度こそ、その全てを破壊するんだ」
アドネーは近くにいるであろう天使兵に出撃を命じる。しかし、そこから帰ってきたのは予想外の返答だった。
「いえ……それは出来ません」
「なに?」
アドネーの背後……宮殿の後ろの出入り口から聞こえたその声は、一定の声量を保ちながら続ける。
「貴方様のようなクソヤローの為に働く兵士は、全員捩じ伏せてしまいましたから」
アドネーが異変に気付いたのと同時に、声の主は一瞬にしてアドネーの目の前に立ち、拳をふるう。
「_____……天界に来ているとは思っていたが……随分な登場だな」
だが、アドネーは止めることも、避けることもしなかった。
何故ならその前に鎧の騎士ツヴァイが動き、その拳を剣の腹で止めていたのだから。
アドネーに拳をふるった天使兵____その男は、いつも天使兵が戦闘用に着用している兜を脱ぎ捨て、笑い出した。
「……どっこいせ。ふはは、なぁに、天使兵の『瞳』は厄介じゃからのう。先に潰させて貰ったぞ」
聞き覚えのあるその笑い声_____そう。
その声の主は、大魔王サルタンに他ならなかった。
「……1000年ぶりじゃのう、『創造神』アドネー。」
「『大魔王』、サルタン……!!」
今。
世界で最大級の闘いが、幕を開けようとしていた。




