78. 王都防衛戦①
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ハイガーがマシンドライと戦闘を始める少し前____。
時間は、そこまで遡る。
「天使兵、か……。あの数からして、この王都を跡形も無く消す気マンマンって事かい」
王都プロスパレスにて。
およそ1000もの軍勢を率いてやって来た『天使兵』。
「参ったな。……勝てる気がしねぇや」
その後圧倒的な戦力差に、アルフは屋根の煙突に一撃いれて八つ当たり、絶望の感情を露わにした。
「くそっ……! 終わりだ、この世界は……」
アルフの叫びが空に消える中、天使兵は確実に王都を目指していた。
「フォーレン隊長。人間界王都『プロスパレス』が見えてきました」
「うむ」
軍勢の後方に構えるのは、天使兵たちを束ねる者と思われる体躯の良い男。味方にフォーレンと呼ばれたその男は、遠方に見える王都を眺めて溜息を吐いた。
「中々に美しい国だな……。破壊するには惜しいが、アドネー様の命ならば致し方あるまい」
「第6部隊、射撃準備完了しました」
天使兵の言葉に、フォーレンは感傷の時間を打ち切る。
「……まずは小手調べだ。第6部隊! 射撃用意!」
手のひらを王都へと向け、フォーレンは言い放った。
「目標、中心街! 放てぇっ!!」
「『魔炎弾』!」
先陣を切る第6部隊____その数およそ50名が、一斉に叫ぶ。
腕をクロスさせ、紅いオーラを見に纏う。そこから放たれた炎の弾丸が、王都に向かって牙をむいた。
「くそ、あのヤロー共、とうとう仕掛けてきやがった!」
第6部隊の弾丸は、グルグルとうねりながら王都へ迫り来る。
その狙いは、大きな噴水がそびえる『中心街』_____。そして、直線状に身を置くアルフたちも併せて襲い込もうとしていた。
「こうなったら、やるだけやってやろーじゃねぇか!」
天使兵総勢1000人の一斉射撃ならば防ぎきれない。だが、目の前を通り過ぎようとするそれは、まだ捌き切れる数……。そう判断したアルフは自分の周りに重力魔法を発動させ、迎え撃つ姿勢をとる。
「『超重力_____」
しかし、アルフが魔法を放とうとしたその時。
彼は、自分の眼を疑った。
「『水剣』!!」
声と共に遥か後方の噴水から水が逆巻き、水の弾丸となって炎の弾丸目掛けて飛んで行く。
「なっ____」
だが、その声の主はアルフのすぐ隣から放たれた。その者が、遠隔操作で中心街の噴水を操ったのだ。
一体誰が____。
わかりきっている。そんな事を成し得る人物は、1人しか居なかった。
「……ふうっ、遠くの水を操るなんて初めてだから出来るか分かんなかったが……やってみりゃ出来るもんだな」
伝説の剣『水剣アナライズ』をその手に構え安堵の息をこぼすのは、勇者レイド。
「レ、レイド!?」
アルフは眼を丸くした。
つい先程まで疲弊しきっていた筈のレイド。そんな彼が、いつの間にかピンピンしてその場に剣を構えていたのだから。
「もうケガは大丈夫なのか!?」
「ん……ああ。ケガっていうより、ただ疲れてただけなんだけどな。でもそれももう大分良くなった」
レイドは鈍っていた肩を回し、迫り来る天使兵を見据えながらアルフに促す。
「アルフ、ここは俺が引き受ける。お前は街の人たちを中心街へ集めてくれ。多分、皆まだ街の中ウロウロしてるはずだ」
「引き受けるったって……! お前1人でか!?」
いくらなんでも無謀の策と言える。レイドは得体の知れない1000の天使兵を、1人で相手するつもりなのだ。アルフもそう易々と首を縦には振れなかった。
「ああ。もう大丈夫だ」
「んなの無茶だ! 俺も_____」
俺も闘う、と続けようとしたアルフが不意に言葉を切る。そして、気が付いた。
レイドの『瞳』……一点の曇りのない、覚悟と自信に満ち溢れた瞳。アルフはその瞳に見覚えがあった。
_____忘れるわけがない。
3年前、魔王を打ち倒すため、冒険を共にした時と同じ_____その瞳にいつも惹かれ、彼はレイドの仲間となったのだから……。
「わかった。任せてくれ」
アルフは頷き、レイドにこの場を任せる。レイドは反対側にいるベゼルに視線を向けた。
「ベゼル、お前もアルフと一緒に。ここは危ないからな」
先程のレイドの攻撃……。その迫力にも驚いていたベゼルだが、それ以外にも彼もまた、レイドの『変化』にうっすらと気付いていたようだった。
「ゆうしゃ……。なんだか、うれしそう」
「……まーな。何か、スッキリした気分だ」
ベゼルの言葉にレイドは微笑み、ドンと胸をたたく。
「あとは俺に任せな」
「うん……! がんばってね、ゆうしゃ!」
「おう!」
ベゼルは笑って、レイドを送り出した。
王都上空。
炎の弾丸を放った第6部隊はレイドの水の弾丸に直撃し、1人残らずやられていた。
「第6部隊……全滅です! 全員、奇妙な水の弾丸にやられました!」
なによりも驚くべきは、その『威力』……。水の弾丸は炎の弾丸をすべて打ち消した上で、ひとつの部隊を壊滅させてしまったのだ。
「ふむ。全滅か……。成る程、人間にしては手応えがありそうだ」
フォーレンは無表情のまま前髪をいじり、その内の数本をブチリと抜く。その後でかすかに笑い、続けた。
「だが……私と、この20にも及ぶ部隊たちの攻撃に耐えられるかな……?」
人間界VS天界。
天使兵の軍勢、残り約950。
迎え撃つは、勇者レイド。
「さてと……来るなら来やがれ。この世界を破壊なんてさせてたまるか!」
レイドは剣を持ち替え、啖呵を切った。




