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勇者魔王の日常冒険譚  作者: ゆーひら
【三界戦争編】
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83/122

78. 王都防衛戦①

___________


 ハイガーがマシンドライと戦闘を始める少し前____。

 時間は、そこまで遡る。


「天使兵、か……。あの数からして、この王都を跡形も無く消す気マンマンって事かい」

 王都プロスパレスにて。

 およそ1000もの軍勢を率いてやって来た『天使兵』。


「参ったな。……勝てる気がしねぇや」

 その後圧倒的な戦力差に、アルフは屋根の煙突に一撃いれて八つ当たり、絶望の感情を露わにした。

「くそっ……! 終わりだ、この世界は……」




 アルフの叫びが空に消える中、天使兵は確実に王都を目指していた。

「フォーレン隊長。人間界王都『プロスパレス』が見えてきました」

「うむ」

 軍勢の後方に構えるのは、天使兵たちを束ねる者と思われる体躯の良い男。味方にフォーレンと呼ばれたその男は、遠方に見える王都を眺めて溜息を吐いた。

「中々に美しい国だな……。破壊するには惜しいが、アドネー様の命ならば致し方あるまい」

「第6部隊、射撃準備完了しました」

 天使兵の言葉に、フォーレンは感傷の時間を打ち切る。

「……まずは小手調べだ。第6部隊! 射撃用意!」

 手のひらを王都へと向け、フォーレンは言い放った。

「目標、中心街! 放てぇっ!!」


「『魔炎弾(フラニス・アロー)』!」

 先陣を切る第6部隊____その数およそ50名が、一斉に叫ぶ。

 腕をクロスさせ、紅いオーラを見に纏う。そこから放たれた炎の弾丸が、王都に向かって牙をむいた。




「くそ、あのヤロー共、とうとう仕掛けてきやがった!」

 第6部隊の弾丸は、グルグルとうねりながら王都へ迫り来る。

 その狙いは、大きな噴水がそびえる『中心街』_____。そして、直線状に身を置くアルフたちも併せて襲い込もうとしていた。

「こうなったら、やるだけやってやろーじゃねぇか!」

 天使兵総勢1000人の一斉射撃ならば防ぎきれない。だが、目の前を通り過ぎようとするそれは、まだ捌き切れる数……。そう判断したアルフは自分の周りに重力魔法を発動させ、迎え撃つ姿勢をとる。

「『超重力(エプローガ)_____」

 しかし、アルフが魔法を放とうとしたその時。

 彼は、自分の眼を疑った。



「『水剣(アナライズ)』!!」

 声と共に遥か後方の噴水から水が逆巻き、水の弾丸となって炎の弾丸目掛けて飛んで行く。

「なっ____」

 だが、その声の主はアルフのすぐ隣から放たれた。その者が、遠隔操作で中心街の噴水を操ったのだ。

 一体誰が____。

 わかりきっている。そんな事を成し得る人物は、1人しか居なかった。


「……ふうっ、遠くの水を操るなんて初めてだから出来るか分かんなかったが……やってみりゃ出来るもんだな」

 伝説の剣『水剣アナライズ』をその手に構え安堵の息をこぼすのは、勇者レイド。

「レ、レイド!?」

 アルフは眼を丸くした。

 つい先程まで疲弊しきっていた筈のレイド。そんな彼が、いつの間にかピンピンしてその場に剣を構えていたのだから。

「もうケガは大丈夫なのか!?」

「ん……ああ。ケガっていうより、ただ疲れてただけなんだけどな。でもそれももう大分良くなった」

 レイドは(なま)っていた肩を回し、迫り来る天使兵を見据えながらアルフに促す。

「アルフ、ここは俺が引き受ける。お前は街の人たちを中心街へ集めてくれ。多分、皆まだ街の中ウロウロしてるはずだ」

「引き受けるったって……! お前1人でか!?」

 いくらなんでも無謀の策と言える。レイドは得体の知れない1000の天使兵を、1人で相手するつもりなのだ。アルフもそう易々と首を縦には振れなかった。

「ああ。もう大丈夫だ」

「んなの無茶だ! 俺も_____」

 俺も闘う、と続けようとしたアルフが不意に言葉を切る。そして、気が付いた。

 レイドの『瞳』……一点の曇りのない、覚悟と自信に満ち溢れた瞳。アルフはその瞳に見覚えがあった。

_____忘れるわけがない。

 3年前、魔王を打ち倒すため、冒険を共にした時と同じ_____その瞳にいつも惹かれ、彼はレイドの仲間となったのだから……。



「わかった。任せてくれ」

 アルフは頷き、レイドにこの場を任せる。レイドは反対側にいるベゼルに視線を向けた。

「ベゼル、お前もアルフと一緒に。ここは危ないからな」

 先程のレイドの攻撃……。その迫力にも驚いていたベゼルだが、それ以外にも彼もまた、レイドの『変化』にうっすらと気付いていたようだった。

「ゆうしゃ……。なんだか、うれしそう」

「……まーな。何か、スッキリした気分だ」

 ベゼルの言葉にレイドは微笑み、ドンと胸をたたく。

「あとは俺に任せな」

「うん……! がんばってね、ゆうしゃ!」

「おう!」

 ベゼルは笑って、レイドを送り出した。




 王都上空。

 炎の弾丸を放った第6部隊はレイドの水の弾丸に直撃し、1人残らずやられていた。

「第6部隊……全滅です! 全員、奇妙な水の弾丸にやられました!」

 なによりも驚くべきは、その『威力』……。水の弾丸は炎の弾丸をすべて打ち消した上で、ひとつの部隊を壊滅させてしまったのだ。

「ふむ。全滅か……。成る程、人間にしては手応えがありそうだ」

 フォーレンは無表情のまま前髪をいじり、その内の数本をブチリと抜く。その後でかすかに笑い、続けた。

「だが……私と、この20にも及ぶ部隊たちの攻撃に耐えられるかな……?」




 人間界VS天界。



 天使兵の軍勢、残り約950。

 迎え撃つは、勇者レイド。


「さてと……来るなら来やがれ。この世界を破壊なんてさせてたまるか!」


 レイドは剣を持ち替え、啖呵を切った。

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