70. VS瘴気の男① -アルフの魔法-
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「きゃあああー! なんですか、この隕石の雨はーーー!」
リリは叫び声を上げ、頭を手で守りながら逃げ回っていた。
王都プロスパレス。
上空から迫り来る巨大な球体は破壊され、代わりに無数の隕石となって王都中に降り注ぐ。
「皆さん、私の側に! 『神癒の盾』!」
そう叫ぶロゼが手を前にかざすと、彼女を中心に半径5メートル程の光の盾が展開されていく。
その内側に逃げ込むようにリリたちが入るのと同時に隕石が盾に直撃、しかし盾は傷一つ付けることなくその隕石から彼女たちの身を護った。
「あ……ありがとうございます、ロゼさん」
「アナタ、こんな高度な魔法な使えるのね……」
ひとまず落ち着いた周囲を見て、リリはホッと胸を撫で下ろす。流石のエリスもロゼの魔法に驚きを隠せない様子だ。
そんな彼女たちの言葉を聞いてえっへんと鼻を高くしたのは、ロゼの一人娘のアルマ。
「アルマのママはねぇ、カッコいいんだよ」
のんびりとした口調で誇らしげに言うアルマに、リリは微笑みかける。
「ええ、本当ですね」
「でもね、パパのがもっとカッコいいの」
「パパ、ですか?」
「うん、パパ。あそこにいる_____」
「はいはい、アルマ。ママから離れちゃダメよ」
何かを指差そうと盾の外側に出ようとするアルマを制止させるロゼ。
「む〜」
アルマは自分の頭に置かれた手に触れて、頬を膨らませた。
「それにしても……酷いことをします。街の人たちは無事なのでしょうか……」
リリは改めて周囲を見渡す。幸い怪我人は見当たらないものの、街のあちこちが隕石によって無情にも破壊されている。先程までの楽しかった王都の街並みが、まるで嘘のようだった。
「ベル様……ウル太郎さん、レイドさん。どうか、ご無事で……」
リリは祈り、手を合わせた。
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「気を付けろ、オオカミくん。アイツ只者じゃないぞ」
ところ変わって、レイド側。瘴気の男と対峙するのは、アルフとウル太郎。
「わかってらぁ、んなこと。おい勇者。オメー疲れてんならベル様を守っててくれ」
アルフの忠告を右に流し、ウル太郎は疲れ果てたレイドを見やる。
「だい、じょうぶだ……。このくらい、……」
レイドは立ち上がろうとするも、疲労により再び膝を曲げてしまう。
「ぐ、くそ……」
「ゆ、ゆうしゃ、危ないよ! 疲れてたら休まないと……」
ベゼルの心配する声に促され、レイドは休むことを優先、闘いをアルフたちに託した。
「ぜぇ、ぜぇ……。すまねぇ、アルフ。ウル太郎。任せた……」
「おう」
「任せろ!」
2人はレイドの言葉にたくましく返し、キッと上空の男に視線を向けた。
男は一度あくびをすると、ニヤリと笑ってアルフたちを見下ろす。
「よぉ。話はまとまったかい?」
「あぁ。俺たち2人が相手だ!」
アルフの言葉に、男は呆れて後頭部を掻く。
「ちっ、なんだよ。勇者のヤローは腰抜けかよ」
それに対し、ウル太郎はガラの悪いチンピラのような口調で男を指差した。
「つーか、降りてこいよテメー! 浮いてるとか卑怯じゃねーか!」
「ボケが……。翔べねぇ方が悪ぃに決まってんだろ。恨むんなら……自分の無能さを恨むんだな!!」
この言葉を皮切りに闘いは勃発_____。
男はそう言って殺気を放ち、自らの周囲を漂う瘴気を無数の弾丸としてアルフたちに撃ち出した。
「!!」
「っぶね!」
薄気味悪い弾丸がアルフたちのいる屋根を襲う。そしてその場所にはもちろん、レイドとベゼルも。
「ベゼル!」
レイドは動かない足にムチを打ち、ベゼルを連れて屋根の反対側へと避難する。ギリギリ怪我を負う事なく回避に成功、残るはアルフとウル太郎の安否だが……。
「おいおい……まさか、これで終わりだなんて事ねーよな……?」
男は拍子抜けた声で、弾丸が撃ちこまれて砂煙る屋根を覗き込むように見る。
しかし徐々に煙が晴れていくその場所には、すでに2人の姿はなく_____。
「たりめーだ!!」
直後、男の背後に現れたウル太郎が、男の頭上目掛けて爪を振り下ろした。
だが男もまた、瞬時にそれを察知した。振り返る事なくウル太郎の腕を掴むと、直立のまま前方へと放り投げる。
「うおっ!」
間抜けに吹っ飛んでいくウル太郎。
「ふん……。っ!!」
男が無関心にその姿を見送っていると、入れ替わるようにして上方からアルフが出現し、踵落としをお見舞いした。
「だらぁ!」
「!!」
間一髪、男は腕で攻撃を防ぐ。しかし、ここで『ある異変』が男を襲った。
「っ!? なんだ……!? 身体が重ぇ……!」
攻撃を受けた途端、まるで全身に鉄の重りを付けられたかのような感覚が走る。当然そんな状態でアルフの追撃に対応出来るはずもなく_____。
「でりゃあ!」
アルフの体を捻らせた回転蹴りをモロに受け、男は後ろへと吹き飛んだ。
「!! ぐ……!!」
男は宙で態勢を立て直し、口元についた血を指で拭う。それと同時に男は気付く。身体から先ほどの『異変』が消えている事に。
「どうだ、効くだろう? 俺の『重力魔法』は」
アルフが男の脳裏によぎった事を見透かすように口を開く。そしてアルフは今……ウル太郎とは違い、フワフワと宙に『浮いて』いた。
「そうか……テメェの『魔法』だな……?」
男は厄介そうにそう呟く。
「『擬似浮遊』ってとこかな。どうだい、『俺は』浮けるぜ」
アルフの魔法……『重力』。
間違いなくこれは、この瘴気の男と渡り合う上で重大な役目を果たすだろう。
そんなアルフの魔法など露知らず、違う民家の屋根に着地したウル太郎は、彼の言葉の一部をリピートしていた。
「ん…………? 『俺は』…………?」




