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勇者魔王の日常冒険譚  作者: ゆーひら
【人間界と魔界編】
45/122

41. お調子者は風のように

「な、何事ですか!?」

 食堂にて、騒ぎを聞きつけて慌ててやって来たのはリリ。散乱した机を見て、大層お怒りだ。

「レイドさん! あれ程ここでケンカしないでくださいって、言ったじゃないですか!」


 どうやら先ほどのレイドの大声と、机に倒れこんでしまった事から、リリはケンカでもしているのかと勘違いしている様子だ。


「ち、ちょっと待ってくれリリ! これはアイツがだなぁ……」

「お! ケンカいいねぇ! 久しぶりにやるか、レイド!」

「お前もそうやって悪ノリすんな!」

「ほら、やっぱりケンカじゃないですかー!」

「ちがーう!」

 弁解しようとするレイドを、アルフが余計にややこしくする。ここにもしウル太郎が居ようものなら、朝っぱらから大騒ぎになっていたことだろう。


__________


「もう、ケンカじゃないなら初めからそう言ってくださいよ……」

「言ったろうが! 割と初めに!」

「はは、すいませんねウチのレイドが」

「テメー、反省してねーだろ……」

 しばらくして事態も沈静し、いつもの食堂の風景が訪れる。

 そこで改めて、リリはお調子者のアルフに訪ねた。

「あの、貴方(あなた)は『巨体お好み焼き』の挑戦者の方ですよね……? レイドさんのお知り合いなんですか?」

「おっと、俺としたことが申し遅れました」

 アルフは姿勢を正し、ワイシャツの襟をぐりぐり直す。

「アルフ・トワイライトです。レイドとは3年前冒険を共にした、ガキの頃からの旧知の仲です」

 アルフはさっと、リリに名刺を手渡した。

「あ、これはご丁寧にどうも……。私はリリと申します。この魔王城のメイドとして、魔王ベル様のお世話役についています」

 リリはペコリとお辞儀をする。そしてメイド服のポケットから封筒を取り出し、アルフに差し出した。

「こちらは先程の早食いお好み焼きの賞金になります。どうぞお受け取りください」

「あ、どうも! いやぁ、味付けも絶妙でとても美味しかったです、ありがとうございます」

 アルフは封筒を両手で受け取る。その時一瞬、目の色が変わったように見えた気がした。


「ところで、今日はどうして魔界に? 何かご用でしたらお伺いしますが……」

 リリが首を傾げ、そう尋ねる。

「ええ、まあちょっとした野暮用(やぼよう)で……」

 ところがアルフは誤魔化すように目を逸らしそう告げると、

「あ、コイツ借りてきますね。ちょっと話があるんで」

 レイドの襟首をつかみ、

「おい、テメーこのやろ、離せ! まだ朝メシが……!!」

 否応なしに、そそくさと食堂の外へと連れ出していった。


「……なんだか、風のような方ですねー……」

 その去りゆく背中に、リリはポツリと呟いたのだった。



_______________


「なんのつもりだアルフ。俺まだ朝メシ食ってねーんだぞ」

 ところ変わってレイドの部屋。

 食堂を出た後で、仕方なくレイドはアルフをそこに案内した。


「まあまあ、いーじゃねーか、積もる話もあるだろうしよ」

 不機嫌になるレイドに、アルフはおもむろに先程の封筒から賞金5000D(ダク)を取り出す。

「しかしラッキーだったぜ、魔界の通貨なんて持ってなかったからなぁ。儲け儲け!」

 その1枚のお札をニヤニヤと眺めるアルフ。

「……相変わらず、金に目がないんだなお前は」

 レイドは目を細めた。

「何を言うか。俺は物事を効率的に考えてるだけだ」

 アルフは口を尖らせる。金を封筒にしまい、言葉を続けた。

「金っていうのはな、正に俺のその考えを具現化したかのような……」

 嬉々として語り始めるアルフ。どうやら彼は、顔に似合わず案外貪欲な性格なのかもしれない。

 そんなアルフの話を遮り、レイドは強引に本題へ入る。

「はいはいわかったよ、で? 話があんだろ?」

「おー、そうだった。そうだよ、レイド!」

 アルフは思い出したかのように、唐突にレイドを指差した。

「な、なんだよ」

「なんだよじゃねーって! すげー驚いたよ、さっきのメイド……リリさん? の話聞いててさ!」

 いきなり声を大きくしたかと思うと、辺りをキョロキョロ見回す。すると、今度は確認するように声を小さくした。

「……魔王、生きてんの?」



 そう。アルフが_____いや、レイド以外の人間界の者全ては、知る由もなかっただろう。

 レイドが倒した魔王が大魔王として復活し、その大魔王の息子が今、魔王になった事など。


「あー、なんて説明すればいいのか……」

__________


 レイドは、その辺りのややこしい事実をかいつまんで、出来るだけ分かりやすくアルフに説明した_____。


__________


「_____なるほど。俺たちがいるこの城は、魔王が住む魔王城だと」

「そうだ」

「そして魔王は復活して、今や大魔王になったと」

「そーだ」

 アルフの確認の言葉に、逐一相づちをうつレイド。

「まあ、そこらへんの事は置いといて……。俺がいっちばん驚いたのはだなぁー……!」

 アルフは拳をわなわな震わせ、一拍置いてから続けた。

「……さっきの子供が、今の魔王だってことだよぉぉ!」



「……まぁ、それもそうだよなぁ……」

 レイドも小さく、それには同意した。

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