33. 勇者とそれらにまつわる話①
伏線を回収しながらも、ばら撒いていくスタイル。
うーん……全部拾い切れるだろうか(笑)
「だぁーっ! くそ! 全然取れねぇ、この接着剤!」
レイドの部屋にて。
彼_____レイドはいつになく、必死に何かをしていた。
というのも、伝説の剣『ゼットカリバー』を封印した忌まわしき接着剤をどうにかして引き剥がそうとしている訳なのだが、これがなかなか手強いらしく、力ずくでも爪でガリガリしてもどうにもならないようなのだ。
「はぁ……ダメだ、ビクともしねぇ」
ふう、と一息ついてから、やがてある決心をする。
「こうなったら鞘をぶっ壊すしか……」
しかしそれは、ある者の介入によって中断されるのだった。
「ほう、何やら愉快な事をしているようじゃのう」
突然聞こえたその声に、レイドはばっと振り返る。見ると、そこにいたのは大魔王_____ではなく、見知らぬ男だった。
「……だれだ、アンタ?」
胡座をかいたままレイドは問う。しかし男の声はやけに記憶に新しい声のようで、実際その男が何者なのかも薄々感づいていた。
「ふははは、知っておるだろう。ワシは大魔王サルタンじゃよ」
「ああ、そんなとこだろうと思ったよ」
先ほどの全長3メートルの姿は何処へやら。
オールバックのドレッドヘアー、立派な黒ヒゲを口周りに蓄えた、ヤンキー調な大魔王の姿がそこにあった。
「……見てくれを変えられるんだな。今さら驚きもしないが……もしかして、そっちが本当の姿か?」
「ふはは、あの巨体を維持するのは大変でのう。やはり皆に近い体格の方が丁度いいわい」
そう言って大魔王は部屋にズカズカ入ってくる。
「おい、勝手に入んな」
「もとはワシの城の部屋じゃ。それに見られて困るような物が置いてあるわけでもあるまい」
確かにレイドの部屋にあるのは、机やベッド、本棚といった必要最低限の物しかない。大抵のものは『シーカー』に収納してあるのだが、それも大魔王の知るところではなかった。
「……で、何の用だ? それ程暇じゃあないんだが」
仕方なくレイドは大魔王を部屋に迎えるが、あまり歓迎していない様子。声のトーンがそれを物語っていた。
それに構わず大魔王はレイドの目の前に座り、同じように胡座をかく。その風貌からして、実に様になっている。
「ふはは、なぁに。ちょっとした聞きたい事があってのう」
「……聞きたい事?」
その言葉にピクリと反応したレイドは、思い出すように言葉を続ける。
「ちょうど良かった。俺もアンタに聞きたい事があったんだよな」
「ほう。なんじゃ?」
大魔王はそう反応するものの、顔が少々笑っているようにも見える。まるでレイドの言葉を見越していたかのように。
レイドにとって今の大魔王の印象は「何考えてるか分からないヤツ」だろう。その白い瞳の奥に、一体何を見据えているのだろうか。
レイドが聞きたい事_____。それは恐らく、『あの事』だろう。魔界に来るときに一度リリに聞きそびれた、自分の生まれていない時代の事_____
「千年前。人間界全域に魔界の生物_____悪魔たちが現れ、その街や人を襲ったという言い伝えがある。これは……本当のことか?」
__________そう。人間界にはそんな言い伝えがある。その事件により、人間界は壊滅的なダメージを受けたともされている。
そして人間たちは悪魔が行ったその所業を決して忘れぬよう、
悪魔を憎み、
蔑み、
必ずしや討ち滅ぼそうという強い誓いを立て、現在まで生きてきたのだ。
最もここ最近では、レイドが(一応)大魔王を倒したことにより、平和な毎日が続いている。
「ふははは、千年前か! 確かに、あの時は人間界から数えきれぬほどの刺客が送られてきて大変だったのう!」
大魔王は笑いながら床をバンバン叩く。レイドはそれを見て、静かに続ける。
「……本当、なんだな? お前が、お前たち悪魔が、人間界を襲ったことは……」
レイドの静かに猛る姿を見て、大魔王は笑いを止める。そしてヒゲを触りながら口を開いた。
「うむ……そうじゃな。確かにワシら悪魔は千年前、人間界を襲った。今でもハッキリ覚えておるわい」
「そうなんだな、やはり……」
レイドは少し俯く。その反応を見て大魔王が、
「……何故、それを聞く? 主の世界では永く言い伝えられてきた事じゃ。今更疑う余地もないじゃろう?」
大魔王の言う通りだ。実際リリからも少し話は聞いている。
千年前の魔界は、争いが絶えない世界だったと。
ならば、人間界にその余波が広がってきたとしても何ら不自然ではない。
しかし、「今の」レイドにはどうしても確認しておく必要があったのだ。これだけの豊かな自然や心優しい悪魔たちに、本当にそんな事が成し得たのかを。
_____彼が今抱いている、「疑惑」を追求する為に。




