34. 勇者とそれらにまつわる話②
「……確かに千年前、ワシら悪魔は人間界を襲った」
人間界にある言い伝え。それを事実だと証言する歴史の生き証人、大魔王サルタン。
「じゃが、それを確認してどうする? 同じようにこの魔界を破壊するか?」
レイドに対する挑発とも取れるその言葉。しかしレイドは尚も俯き、何かを考えるように顎に手を当てながら返した。
「いや……そんな事しないさ。ただちょっと疑問に思っただけだ」
「ほう……そうか」
大魔王も顎ヒゲを触り、少し上を見上げる。
ほんの一瞬の沈黙。そのあとで大魔王はゼットカリバーを指差した。
「では次はワシの質問じゃ。主の剣……他にも幾つかあるとみた。何本持っておるんじゃ?」
その質問にレイドは顔を上げる。
こちらの戦力を把握しようとしているのだろうか……? そう考えたレイド。どう答えるべきか迷った刹那、少しでも奥の手は隠しておきたいと言葉を濁した。
「あぁ、持ってるよ。色々とな」
「ふはは、興味深いのう」
大魔王が意味深に笑いを混ぜる。それこそ、レイドが言葉を濁す事など見透かしているかのように。
「因みにその剣、何処で手に入れたのじゃ?」
続けて口を開いたのも、大魔王。
「まぁ、人間界の至る所でな。全部別々の場所に祀られてあったから、探すのに苦労したぜ」
レイドは答え、目つきを尖らせる。
「それもこれも全部……アンタを倒すためにな」
レイドの3年前の冒険……。詳しくは明かされていないが、「大魔王を倒す」という目的のもとで彼は様々な経験をした。だからこそ、今目の前にその大魔王がいるということが、彼にとっては少なからず許せるべき事ではないのだろう。
即ちレイドにとって大魔王は最大の敵_____であるはずなのだが、大魔王の方は果たしてどうだろうか……?
「……『賢者ミレトス』。この名を知っておるか?」
突然、なんの脈絡も無く話をそらす大魔王。
「は? 何だいきなり」
「まァ聞け。今から千年前に、そう呼ばれる者がおった。賢者ミレトスは人間でありながら、莫大な魔力をその内に秘めておった。いわゆる『天才』という奴じゃ」
大魔王は少し前屈みになって指を組み、続ける。
「そしてその魔力で、7つの剣を創り出した。それこそが_____主の持つ剣なのじゃ」
「…………!」
レイドは平静を装いながらも大魔王の話に興味を示す。というのも、大魔王の話には妙に信憑性があるからだ。
「因みにそこにあるゼットカリバーも、7つの剣のうちのひとつじゃ。主がこれで幾つの剣を持っているかは知らぬが……ワシを倒したくば、7つ全ての剣を集めることじゃな」
大魔王は例によって「ふはは」と笑い、重い腰を上げ立ち上がる。
レイドが知らなかった事実……。そして大魔王の「なんでも知っている」とでも言いたげなその態度を若干気に食わないようで、満足して立ち去ろうとする大魔王の背に、レイドは不貞腐れた声を掛けた。
「4つだ。俺の持ってる剣は」
レイドの声に、大魔王は少しだけ顔を向ける。
「ゼットカリバーを入れて5つ。アンタの話を丸ごと信じたわけじゃあないが……残りの2つの剣も絶対に探し出してやるからな。その時がアンタの最期だ」
依然として胡座のまま啖呵を切る。それに対し大魔王は、
「ふははは。ならば待っておるぞ、勇者よ」
やはり笑いながらそう返すのだった。
結局レイドに謝ってない大魔王さま。忘れてんのかな?




