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勇者魔王の日常冒険譚  作者: ゆーひら
【大魔王復活編】
35/122

31. 伝説の剣

作中屈指の最強キャラ、レイド。

今回でちょっと咬ませ犬っぽくなったなぁ……と思ったり。(笑)

_____時は少し戻り、城の通路にて。


「はぁ、はぁ……! レイドさん、速すぎますよ……!」


 玉座の間へと向かい、走るリリ。しかし彼女の着ているメイド服はどうも走りにくいようで、

「リリさーん。やっぱり自分に乗って行きますか?」

 途中で落ちあったウル太郎も、やれやれという表情だ。


 ウル太郎は普段、人と同じように二足歩行で暮らしている。

 だが一応はオオカミの悪魔。走るときは手を前足代わりに、四足で走った方が速いのである。


「自分が四足で走れば、一瞬で着くのに……」

「……いえ、それは止めておきましょう」

 しかしリリはその絵ヅラを気にしてか、断固として乗ろうとしない。

 まあ、メイドがオオカミに乗って走るなど、見たことないから無理はないが。


 多少時間はかかったものの、2人はやっと玉座の間前の階段へと辿り着く。

「……ふぅ。やっとここまで来ましたね」

「言うても300メートルくらいでしたけどね」

「いいじゃないですか、そんな細かい事は」

 ひと息ついたのち、階段をスタコラ駆け登る。その最中(さなか)でリリはひとつ心配事をしていた。


「……レイドさん、大丈夫でしょうか。大事なことを伝え忘れていたのですが……」

「え、なんすか、大事なことって?」

 ウル太郎が聞き返す。リリは人差し指を立てた。

「ほら、アレですよ、アレ」

「……あー、アレっすか。懐かしいすね。なるほど、確かに心配だ」

「でしょう? レイドさんならいきなりやりかねませんから……」

 2人共、しみじみと昔を振り返りながら走る。なにか大魔王と話す時の注意ごとだろうか。

 話しているうちに、階段の終わりが姿を現した。

「とにかく、レイドさんには何としてでも教えなければ……」

 そう言って最後の一段を踏みしめる。それと同時に、リリは開かれた玉座の間にいるレイドに向かって叫んだ。


「レイドさーーーん! 先代魔王様を怒らせては……」


 が、それはもう遅かったようで……。


「ワシゃ、大魔王じゃあーーーー!!!」

「ええーーーーっ!!?」

 そこには激怒した大魔王と、レイドの姿があった。更に、レイドも剣を取り出し戦闘態勢を取っている。さすがにリリもマズイと思ったのか、二人の間に割って入った。


「さ、サル様! どうぞお怒りをお鎮め下さい! レイドさんも剣を納めて!」

「リリ!? 危ねえぞ、下がれ!」

「ぬうううん!! ……ん?」

 怒りに全身を赤く染めた大魔王だが、慌てるリリたちの姿を見るや否や、すぐに冷静さを取り戻す。

「おお、リリにウル太郎! 久しいの! 元気じゃったか?」

「え、ええ……。サル様も相変わらずお元気そうで何よりです……」

 大魔王が正気を取り戻した事に、とりあえずは胸を撫で下ろすリリ。そのまま言葉を続け、

「ですが何故、唐突に復活なされたのですか?」

「うむ。まあ、なんじゃ……」

 大魔王は腕を組み、一拍ためてから答える。

「ただ死んでるだけというのも退屈でな……。生き返ってしまったわい!」

 ふははは、と高笑いする大魔王。

 あまりにも滅茶苦茶な話だが、しかしリリたちは、それを当たり前のように苦笑して済ませる。


「なん、だと……!? 生き返るって……そんなバカな事が……」

 その光景を見て一番鼻持ちならないのはレイド。

 だがその話が本当ならば、合点がいく話もある。


 何故、大魔王を倒したレイドを魔界の悪魔たちは歓迎したのか。


 当たり前だ。大魔王には、死んでも生き返る能力があるのだから。レイドに敵討ちをしよう者などいる筈もない。悪魔たちにとって、大魔王を倒した事など大した問題にはならないわけだ。

 だが、レイドは依然として、目の前の事実を受け止められないでいた。


「くそ……! 大魔王め、こんなのは認めないぞ……!」

 リリの仲介で一度は剣を下げたレイドだが、気づけば、まるで自分をコケにでもするような笑い声に我を忘れ、大魔王の眼前へと飛び上がっていた。

「大魔王ぉぉぉ!!」

「!? レイドさん!?」

 リリが叫ぶも、もう遅い。彼の振り上げた右手に握られた剣が、大魔王目掛けて振り下ろされる。その怒りを込めた一撃が大魔王の顔に触れた時_____


「やれやれ、勇者よ。どんな理由であれ、悪魔に刃を向けることは許さんぞ」

「っ!! なっ……!?」


_____もう一度気づいた時には、レイドは床につき天井を見上げていた。一瞬遅れてから、レイドは大魔王に気圧されて吹き飛ばされた事に気が付く。慌てて起き上がるが、大魔王の顔には傷ひとつ付いていなかった。


「なに……!?」

 レイドが一番はじめに思うことは、大魔王に対する疑問。

_____コイツ、3年前の時とは明らかに違う……!_____

 その実力の変貌ぶりに、ほんの少し恐怖を覚える。しかしそれは、すぐに思い直した。

_____いや、違う……! 今は『あの剣』がないから遅れをとったんだ……!_____


「あの剣さえ、ゼットカリバーさえあれば3年前のように……!」


 その時、ベゼルがおもむろにレイドに近づき、声をかけた。

「勇者、この剣を使って!」

「ベゼル……?」

 そう言って差し出したのは、ベゼルが普段遊ぶ時に使う「おもちゃの剣」。昔、ベゼルの誕生日にリリがプレゼントしたものだ。

「この伝説の剣で、パパをやっつけてよ!」

「伝説の剣……? これが、か?」


 その剣は、ベゼルの小さな体格に丁度見合うくらいの、小さな短剣と言った方が正しいだろうか。とてもじゃないが、伝説の剣には見えはしないシロモノだ。

 そして、レイドがまじまじとその剣を見つめている間、心中穏やかではないものがいた。


「マズイ……あの剣は……!!」

 汗をどっと吹き出して動揺するのは、リリ。その表情も、どことなく青ざめている。


 と言うのも、ベゼルの剣は、先程も言ったがリリがプレゼントしたもの。実はその時に、ベゼルにはこうお願いされていたのだ。



『パパを倒した勇者の剣が欲しいな、リリ!』



 そう。勇者が使っていた剣。即ち「本物」が欲しいと。

 しかし実際問題そう行く筈もなく、仕方なくリリは人間界で拾った訳の分からぬ剣をベゼルにプレゼントしたのだ。勿論、勇者の剣だと偽って。


「何とかベル様にバレずに今まで済んでいましたが……レイドさんが見れば一発で「偽物」だと分かってしまいます……!」


 しかしもうこうなってしまってはどうしようもなく、リリはただ事の成り行きを神にでも祈るかのように、キュッと指を組んでいるのだった。



 だがそれは、やはりというかなんと言うか。

 ベゼルの剣をじっと見つめたレイドは、やがてわなわな震え出したかと思うと、芯から驚いて叫んだ。


「お前コレ……!! 伝説の剣! 『ゼットカリバー』じゃねぇかぁぁぁぁ!!!」


 レイドの目に狂いはない。何故ならその剣を持っていた張本人なのだから。紛れもなくそれは____『伝説の剣ゼットカリバー』。


 それが何故、此処にあるのか。

 何故、こんなにも小さいのか。


 それらの問題はひとまず置いておいて、リリが声も出ないほど驚愕している、という事は言うまでもない……。

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