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幼妻は大人になりたい ~年上旦那様との溺愛生活を守るために大切な10のこと~  作者: 三羽高明


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幼妻、プレゼントを買う(1/2)

 団内親睦会の翌日。わたしは大人リストを眺めていた。


『大人になるためのリスト』※期限は三カ月!

 NO.3 上品な趣味を持つ

 NO.6 フェルナンド様を支える

 NO.8 秘密を持つ

 NO.10 周りの人といい関係を築く


 色々なことがあった親睦会だけれど、リストの項目を二つも達成できたのはかなりの成果だった。これで、残りは四つ。つまり、リストももう半分を切ったってことだ。


 とはいえ、あんまりのんびりと構えているわけにもいかなかった。わたしはランジャック博士からもらった時計を眺める。


『爆発まで、あと43日』


 リストを完成させないと、あと一カ月ほどでこのお屋敷が吹き飛んじゃう。ここから先は、ガンガンとペースを上げて、張り切って残りの項目を消化していかないと!


 次に何をするかは、もう決まっていた。『NO.6 フェルナンド様を支える』だ。


 だって、あの団内親睦会で、フェルナンド様が副騎士団長に昇進するっていうワクワクするような話を聞いてしまったんだもん! 妻として何もしないわけにはいかないでしょう? 


 素晴らしいプレゼントを用意して、フェルナンド様を祝ってあげないと! 


 もちろん、わたしは昇進の話なんて知らないことになってるから、プレゼントをあらかじめ入手していたことも黙っておく必要はあるけれど。


 最高の贈り物を求めて、わたしは街に出た。フェルナンド様は目が肥えているだろうから、そんじょそこらの品じゃダメだ。高級感があって、品がよくて、知的な品物。プレゼントに選ぶなら、そういうものじゃないと!


 そんなことを考えながら近所をぶらぶらと歩いていると、広場のほうから賑やかな声が聞こえてくる。そういえば、今日は不定期に開催される市場が立つ日だったっけ。


 簡単なテントの下では、色々なお店が商品をずらっと並べている。掘り出し物を探すお客さんで、辺りはごった返していた。その光景を見ているうちに、わたしはここでなら何かいいものが見つかるかもしれないと思いつく。


 様々なお店を物色していると、骨董品屋さんを発見した。


 骨董品かあ……。いかにも大人の趣味って感じだ。


 わたしはハート型のポシェットから手帳を出して、大人リストを眺める。『NO.3 上品な趣味を持つ』はまだ達成できていない。


 もしここで素晴らしい品物を入手できたら、『NO.6 フェルナンド様を支える』だけじゃなくて、このNO.3にも一緒にチェックが入れられるんじゃない?


 この最高の思いつきにわたしの心は沸き立った。早速、絨毯の上に広げられたツボやら置物やらを眺める。


 でも、正直に言ってわたしには鑑定眼なんてないから、どれもこれも「古くて価値がありそう」ということしか分からなかった。ここは素直にお店の人に協力してもらったほうがいいかもしれない。


「すみません、夫の昇進祝いの品を探しているんですけど」


 店番をしているのは、先がピンと上を向いた口ひげを生やしている男性だった。黒髪をぴっちりと七三に分けて、いかにもやり手って感じの顔をしている。この人なら信用できそう!


「おお、おめでとうございます。旦那様はどのようなご職業に就かれておいでで?」


「騎士をしています。今度、すごく偉い人になるんですよ」


 副騎士団長への任命はまだ正式な発表の前なのでぼかした言い方をするしかなかったけど、誇らしい気持ちで報告した。店番さんは「それはようございました」とにこやかな顔になる。


「では、こちらの食器などいかがでしょうか?」


 店番さんが手袋をはめた手で差し出してきたのは、両手のひらに載るくらいのお椀だった。青っぽい色で、内側には花のような模様がついている。


「この器は、今から四百年ほど前に外国で作られたものです。国王が所有していたこともあるのですよ」


 王様が使っていた食器!? すごい! これならフェルナンド様のプレゼントにしても恥ずかしくないよ!


「おいくらですか?」


 わたしはポシェットからお小遣いの入った巾着袋を取り出す。けれど、店番さんが教えてくれた金額に、もう少しでその袋を落とすところだった。


 た……高い……。親友たちとのお茶会何十回……いや、何百回分くらいになるだろう?


「ええと……もう少し安くなりませんか?」


 こんなことをするのは未来の副騎士団長夫人としてどうかと思ったけど、わたしは値下げの交渉をすることにした。すると、店番さんは肩を竦める。


「これでも随分と勉強させていただいたほうですよ。よその店に行けば、この五倍は取られるでしょうな。無理にとは申しません。今回はご縁がなかったと思うことにいたしましょう」


 店番さんは、お椀を引っ込めようとした。ああっ! せっかくの王様の食器が! わたしは思わず叫んだ。


「か、買います!」


 その後、わたしは一旦屋敷に帰ってお金を工面したあと、大急ぎで市場に戻ってお椀を購入した。


「お買い上げ、ありがとうございます」


 店番さんが丁寧に頭を下げる。


 高級感のある木の箱に入れてもらったお椀を片手に帰路についたわたしは、高価な買い物をしたあとに特有の妙に興奮した気分だった。


 今回の出来事はかなり手痛い出費で、当分のお茶会ではお店の中で一番安いメニューを頼むことしかできなくなってしまうだろう。でも、フェルナンド様に喜んでもらうためだと思えば、少しも苦にならなかった。


 このお椀を渡して、「昇進おめでとうございます。これからもフェルナンド様をお支えしますね」って言ったら、わたしの愛しい旦那様はどんな反応を見せてくれるだろう?


『とても素晴らしい器だ。こんなものをくれるなんて、キャンディスは本当に大人だな。愛してる』


 フェルナンド様が褒めてくれるところを想像して、わたしの気分はますます高まっていった。

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