80話
「それでは、此度の一件について報告会を始めさせていただきます。事情聴取で聞いた話を簡易的にまとめた資料はこちらになります。ササラ様も、目を通しておいてください」
「分かりました」
小暮日永恋を宥め、彼女を追った赤坂千夏の二人を引き連れて戻った炎導ササラは今、連盟本部の会議室に居た。
慰めるつもりは無い、と口では言いながら、永恋の社会復帰に貢献したササラはそれを恩着せがましくするでもなく、用意されたお菓子を自分達で独占するかのように分配し、美味しそうに頬張っていた。ササラのお菓子を配った相手の中には、気分の沈んだ四家も含まれており、戻って来た永恋とも仲直りを果たしていた。
四家の面々はまさか永恋から謝られるとは、と表情に驚愕の色を見せながら色々と話し込んだ後に、永恋から突き放された事で最も傷付いていた御厨七星が反動で永恋から離れなくなったのは周知の事実。今もテーブルを挟んだ反対側では、七星と千夏に挟まれた永恋が深刻そうな顔を見せている。
ササラの側近である鴻野定道が司会を務める中、お菓子に夢中なササラは片手間に定道がまとめた書類に目を通す。そこには、北の倶利伽羅、四家、赤坂千夏、それから情報提供者と言う、今回の一件をおおまかにまとめた内容が記されており、今から行われる報告会ではそれらをよい深く掘り下げていく、と言った内容のものであった。
それに加えて会議室の壁面にはプロジェクターによって映し出された画面いっぱいに東の盟主である火加々美十蔵の威厳溢れる姿があって、一連の事変の責任者である彼もまた、報告会に直接顔を出していた。十蔵は今回に限って言えばササラの雇用主でもあり、ササラを含む俱利伽羅達の働き、思惑も全部含めて知る必要があった。
「――まずは、赤坂千夏、小暮日永恋両名の経緯について説明を求めます」
「はい。私達は――」
そうして語られるのは、永恋と千夏の命令無視に加えて、新型霊具の持ち出しと言う明確な規律違反。
千夏による燼月永新への刺突、共闘、人形使いの看破。永恋による四家との共闘、叢雨勇哉の裏切り。
その中でも、集った倶利伽羅に特に衝撃を与えたのは「人形使いの正体」であった。
長い間倶利伽羅内部に潜んでいて、満月の夜には死体の収集に加えて、新型霊具の奪取まで図っていたとなれば、その脅威は想像するに容易い。しかも、それを追い払ったのが、千夏の援護を受けた燼月永新ともなればどよめきは一入。レポートの文字で読む以上に、人の口からもたらされる報告は何よりも真実味を帯びている為、多くの俱利伽羅が困惑せざるを得ないのであった。
「――燼月永新、いや、宿無真宵両名の狙いは、なんだ……? まさか、人形使いの排除、などとは言わんだろうな……?」
「その可能性は十分にあるかと思われますよ、火加々美様」
「しかし、それでは……」
「その件は後で報告するとして、まずは順序立てて行きましょう。東の盟主として、火加々美様は小暮日永恋、赤坂千夏の両名に命令無視、規律違反の罰をお与え下さい。もちろん、彼女たちの今回の一件における活躍を加味した上での、罰を」
永恋が表情を険しくしていた理由、それが、今回の件に関する重大な命令無視と規律違反。
永新の事を知らなくちゃならない、と決めたは良いものの、これで倶利伽羅としての資格を剥奪されでもしたら、その夢すら叶わなくなる。かと言って、ササラの言う通り今回の一件における活躍を加味したとしても、相応の罰が下るのは目に見えていた。
しかし、十蔵が口にした罰は、彼女たちの想像を遥かに超えるものであった。
「――命令無視、規律違反。これは倶利伽羅と言う組織を保つ上で必要不可欠な規則。ルールがあるからこそ、ルールの下でのみ倶利伽羅は存在を黙認され、武力の行使を認められる。下手をすれば倶利伽羅と言う存在自体が危うきに晒されるところだった。両名共に、それを肝に銘じておけ。では罰を下そう。小暮日永恋、赤坂千夏の両名には――三日間の謹慎を言い渡す」
「「ッ!?」」
「尚、この裁定を決定するに当たっては、規律違反者である小暮日永恋の我が娘の窮地に手を貸してくれた事、そしてその友、御厨と天炎の子を守り抜いてくれた事、それに加えて、同じく規律違反者の赤崎千夏による人形使いの排除に関する援護を加味したものであり、公平性を欠けるものではないと北の盟主による承認も受けている。故に、この決定は最終決定であり、今後一切この決定が覆る事は無いと知るように。そして両名もまた、同じ事を繰り返さぬよう、重々反省するように。以上」
「「あ、ありがとうございます……!!」」
二人して立ち上がって頭を下げる光景を前に、ササラは満足そうに頷き繰り返す。
それはまるで初めからこうなる事を知っていたかのようで、ササラは「だから言ったでしょ」とばかりに二人にだけ見えるように小さく二本の指を立ててピースサインをして見せるのだった。
その後、四家の報告が始まり、四家は規律違反ではなく火加々美十蔵の命で動いていた事を知らしめた後に、彼らの恩師であり、かつて最強と呼ばれた倶利伽羅である皇龍火の死が報告される。彼は初めの段階で自らの死期を悟っており、四家もまた、彼が戦場に赴いた時点で、今生の別れになるのだと気付いていた。
しかし、かと言って四家が恩師を殺した宿無真宵を恨んでいるかと言われたら、それは違う。当然、倶利伽羅として妖魔を忌避する事は変わらないのだが、それ以上に、皇龍火にあそこまで楽しそうな笑みを浮かべさせることが出来る彼女を羨ましくすら思っていた。恩師が最後まで笑って死ねたのなら、それはきっと皇龍火の本望でもあるし、それを叶えてくれた宿無真宵には感謝こそすれ、恨むことは無い。そう言った旨の報告をした四家の面々の顔付きは晴れやかであり、皇龍火の死を引きずる様子が無い事から、十蔵はそれ以上深堀りする事は無かった。
そして、裏切り者である叢雨勇哉に関しては、覚悟を決めた晴也から報告がなされ、彼の実家である天炎家でも大きな騒動になっていると聞かされる。叢雨勇哉に関しては、天炎家が責任を持って始末すると高らかに宣言したものの、新型霊具である小手型霊具を奪われた事に対して反省の色を見せるのだった。
「……人形使いが新型霊具を奪取する目的が判明しないのだが、これは報告書にあるように、各地での異変と結びつくものと考えてよいのか、炎導ササラ殿よ」
「そう考えて、問題無いかと。では、わたしが報告する番ですね――」
「――ササラ様の口から聞かされるなど贅沢な真似を、東の倶利伽羅に味わわせるわけにはァ、ン~、行きませんなッ!! 報告に関しましては、この下火蔵に、お任せ下されぇ!!」
「……じゃ、お願いね」
「はいィッ、任されましたぞ! 紹介に与りましては私、炎導ササラ様の右腕、とも名高い下火蔵と申します!」
ササラの声を遮って出しゃばるのは、過去の一件以来ササラにゴマを擦って尻尾を振るようになった下火蔵。盛りに盛った自己紹介を声高に叫んでみるも、ササラの右腕にしてササラが心を許す側近はこの場には定道しか連れて来ていないと言う周知の事実が蔓延っている中では誰もが「嘘だろう」と聞き流す為、下火蔵の「ササラを出しに東の有力名家と繋がりを持とう」と言う作戦は早くも頓挫した。しかし、頓挫した事に気が付かない下火蔵は、意気揚々と見せつけるかのようにササラより任された報告の任を嬉々として果たすのであった。
「――まず、火加々美十蔵様によって派遣依頼を受けた我々北の倶利伽羅は、裏切り者を炙り出す為の噂に信憑性を持たせるために派遣を決意し、火加々美様に力を貸しました。その結果、ダミーの工場には火加々美様が流布した偽の噂を聞き付けた裏切り者……恐らく人形使いと繋がっている、もしくは人形使いの手の者達による襲撃に会いました」
「そちらにも、送っていたと言う事か。神来戸の方にも接触を図った倶利伽羅を捕らえたと報告があった。しかし、それも全てではなく、中には死傷者も出ていたようだが、そちらは無事だったのか?」
「……いえ、襲撃に会った際、三割ほどのメンバーが手傷を負いました。幸い、数で勝っていた我々に死者は出ませんでしたが、同じ倶利伽羅を手にかけた、と言う事実は相当精神に負担が掛かりました」
「そうか……。悪かったな、北の盟主よ」
「火加々美様が謝る事ではありません。これは倶利伽羅の裏切り者と戦う上では避けられないものと認知していながら、心構えを説かなかったわたしの責任です。その上で、襲撃者の倶利伽羅に起こった異変を、お伝えします」
報告書に書かれた文言には目を通しているが、文字で読むのと人の口から聞かされるのでは説得力がまるで違う。故に、誰もが耳を傾け、息を飲む中、ササラよりバトンを受け取った下火蔵が、物々しい雰囲気を纏って報告を口にする。
「――我々と接敵した直後、襲撃者は突如として凶暴化し、倶利伽羅ではなく、妖魔としての力を振るい始めたのです」
「妖魔と、しての……?」
「はい。赤坂千夏殿、この報告書にある、磐田陸人と言う男性。彼もまた、妖魔としての力を振るっていたのではないですか?」
「は、はい……。でも、それは燼月君が片手間に片付けてくれて……」
「倶利伽羅の技は、使ってきましたか?」
「いいえ。むしろ、燼月君が纏炎を使った事に驚いている様子でした」
「じ、燼月永新が、纏炎を……? それは倶利伽羅の霊技であって、妖魔化した倶利伽羅は使えなくなるはずで――」
「下火蔵、話を逸らすな。まずは報告が先だ」
「む、そうでしたね。失礼いたしました。その磐田陸人と同じように、全ての襲撃者が妖魔と化して襲い掛かって来たのです。外法を用いない、倶利伽羅としての力を失ってでも襲い来る最悪の邪法。そしてこれが……。襲撃者の持ち物から回収したものでして、恐らくこの薬品によって倶利伽羅は妖魔に堕ちて行ったのかと……思われます」
報告を終えた下火蔵の顔は、普段の人の顔色ばかりを伺うような軽薄さなど欠片も無く、自らが体験した恐怖や悍ましさからくる冷や汗を滲ませて険しい様子を見せていて、そんな下火蔵の手によって会議室のテーブルに置かれた、厳重に袋に保管された注射器の中に満ちる薬品からは、禁忌の香りが漂ってくるのであった。
「倶利伽羅が、自ら力を捨てるだと……? まさかそれも、人形使いによる支配だった、とでも言うのか……」
「力の伸び悩みは良く聞きますが、まさかこんなものに踊らされる程に深刻な物だったとは、思いもしませんでしたね。そして、こんな薬品は今まで見た事もありません。とすると、これは人形使いが独自で開発した薬品……その可能性が非常に高いと思われます。どうでしょうか、火加々美様」
「新型の霊具を奪取しようとしたのは、どう説明付ける?」
「……これは推測に過ぎないのですが」
「構わない。話してくれ」
「人形使いにゼロから薬を生み出す程の才能があると仮定した場合、新型霊具を分解、解析をすれば、量産、とまではいかなくとも複製は可能かと。その場合、死霊使いとして倶利伽羅の死体に持たせるだけでも我々にとってはかなりの脅威になります。そう考えただけでも、我々が後手に回らざるを得なくなるのが理解できますよね」
ササラの危惧に、十蔵を含む倶利伽羅の多くが最悪を想定して唸る。
もしもササラの言っている事が現実に起こるとしたら、人形使いの駒一つを倒すのにこちらは二つ三つの駒を送らざるを得ない。それも、優秀な駒を。一つでも欠けてしまえばそれは即座に人形使いの手に渡ると考えなければならず、それだけでも危険な綱渡りになる。だと言うのに、人形使いの手札が全て明かされている訳では無い以上、送り出した駒達と顔見知りの倶利伽羅が出されるかもしれないと言う人道的に認められない行為を踏まえねばならない。その点だけでも不利だと言うのに、奴には叢雨勇哉と言う守護者が付いている。更には、他の妖魔の仲間が居ないとも限らない現状、下手に死者を出すことは非常に危険だと言えた。
誰もがその絶望的状況と思える中で俯きがちになる中で、ササラは「だからこそ」と手を叩く。
「――だからこそ、人形使いに時間を与えてはならないのです。今回の事もそうです。人形使いと言う、悠久の時を生きる妖魔だからこそ今回の作戦には念には念を込めた準備がされていたが為に、我々が後手に回らざるを得なかったのですから、次は我々が攻めに転じる時なのです。今回の一件は、あの人形使いであっても準備をしなければならなかった。そう考えれば、わたし達にも光明が見えてくるはずです」
「炎導様、ですが攻めに転じるにしても、人形使いに通じる手掛かりはどこにも――」
「それが、わたし達の最後の報告にある、妖魔側の内通者である、辰巳虎鐘の役割です」
「ぴぇ……っ!?」
多くの倶利伽羅に囲まれ、肩身の狭い思いをしながら報告に耳を傾けていた虎鐘は、突如として話を振られて体を強張らせる。彼もまた、人形使い同様に長い間倶利伽羅内部に潜入して真宵達に情報を流したり、真宵達に繋がるような情報を削除したりと暗躍しており、その過程において倶利伽羅として生きる為の極意でもある「上には逆らわない」と言う心情を掲げているせいか二人の盟主を前にして息を殺していたのであった。
倶利伽羅のあらゆる情報を網羅するアーカイブズの管理者である虎鐘は、その地位と妖魔の情報を糧に自らを倶利伽羅に売り込んだ。本来であれば炎導ササラが連盟本部一階に姿を現す予定は無かったのだが、ひたすら隠れ続けていた虎鐘によるタレコミで炎導ササラは襲来した、という経緯があった。その際、ササラの個人用携帯に非通知で連絡をかけ、信用されるためにあらゆる情報を搾り取られたのだが、虎鐘が妖魔である、と言う事実をひっくり返すには至らない。
「その男……いや、妖魔からの情報が炎導ササラ殿が持ち場を離れる理由だったのか。しかし、その男が人形使いの居場所を知っているとは到底思えないが――」
「はい、わたしも思っていません。ですが、あの宿無真宵が手ずから始末、もしくは奪取しようとした存在です。何も知らない、と言う訳では無いでしょう。もしくは、宿無真宵でさえも知らない何かを、掴んでいるのかもしれません」
「……であれば、その男は北に一任しようと思う」
「手始めに聞き出しておいた、人形使いが扮していた連盟員の男の情報を報告書の最後のページに纏めてあります。棲家からその候補に至るまで。管理者の名は伊達では無いのかもしれませんね。この情報を基に人形使いを捜索するのも悪くは無いかと思います」
「うむ、そうしてみよう。人形使いは、我々倶利伽羅の脅威だ。優先して事に当たるとしよう。何か、新しい情報を手に入れたらすぐに教えてくれ。ササラ殿には甘奈を付けさせる。よく使ってやってくれ」
体の良い監視役か、とササラは勘繰ったものの、この状況下で隠し事など出来るはずも無い。
何せ、一手でも間違ってしまえば倶利伽羅はさらに窮地に追いやられてしまう。人形使いと言う妖魔は、燼月永新や妖魔の王、それに並ぶだけの脅威として捉えられるのであった。
その後、細々とした連絡事項を挟んだ後、報告会は解散となる。
永恋と千夏、四家は先に退出し、ササラは北の倶利伽羅達に虎鐘の警護を頼んで先に出て行かせ、最後に残ったのはササラと十蔵の二人のみとなる。片方は映像とは言え、一度画面を暗くさせてからの復活に、困ったように眉を顰めて現れるのであった。
「……燼月永新と、宿無真宵の目的について話したい、とな」
「はい。それだけでなく、先日そちらで観測を迎えた雷の力を操る上級妖魔についてもです」
「耳聡いな。確かに、彼奴らの目的は不明のままだ。北に現れては、異界の穴を閉じ、東に現れては、これもまた異界の穴を閉じていた。そして、此度は倶利伽羅の脅威と認定された妖魔の撃退まで……」
「下手をすれば、赤坂千夏さん。彼女は殺されていてもおかしくありませんでした。それを、燼月永新は救った。彼らの目的は何か、そちらではつかめていないのですか?」
「残念ながら、そちらが持っている情報以上のものは上がってきていない。照らし合わせてみると、あのアーカイブズの管理者による妨害があった証拠とも言えるがな」
「……彼らに関して、一つ伝えたい事があります」
「言ってみろ」
「……わたしが倒したとされる、北に出現した妖魔。氷の能力を持った上級妖魔、彼が宿無真宵の手によって逃がされている可能性が高い、と言う情報です」
「……隠していたのか?」
「結果的には、そうなります。申し訳ございません」
「炎導ササラと、上級妖魔の関係は、私と耀之介、それから前北の盟主、つまりササラ殿の御父上だけが知る秘密であったが……何処から漏れたのか。……つまりは、そいつもまた、燼月永新らと共に行動している、と?」
「……はい。現状、彼らの存在は敵ではありますが、人形使いに関しては味方にも成り得る可能性がある、という話です。恐らく、宿無真宵がフブキの存在を報せたのは、それを通達したかっただけなのかもしれませんが……」
「であるならば、奴らも利用できると考えてよいものか……」
「いえ、信用しすぎるのは悪手かと。奴らを懐に入れたが最後、内側から全て食われてしまうかもしれません。虎鐘と言う寄生虫のように」
「それもそうだな。となると、我々の倶利伽羅。人形使い。そして謎の妖魔集団。この三つの勢力が今後大きく交わっていく事になるのか」
「そうなるでしょう。謎の妖魔集団の目的がはっきりとしない今、わたし達が優先するべきは人形使いの阻止で良いかと……」
「……しかし、耀之介が居ないだけでこうも円滑なコミュニケーションが図れるとはな。それにしても、大きくなったな……ササラよ」
「そ、それは――」
「――た、大変です、ササラ様ッ!!!!!!!」
「さ、定道ッ!? 一体、何があったの!?」
「しゅ、襲撃です……! 虎鐘と、下火蔵が攫われました!!!! 怪我人は多数!!」
「なんと……! 急ぎ、救護班を向かわせる! 敵は、何者だ?」
「はっ、敵は、仮面とスーツに覆われた謎の人物としか……。虎鐘を護送車に運ぶ過程で襲撃に逢って……。そこで、何故か下火蔵も共に攫われてしまいました」
「虎鐘はまだしも、どうして下火蔵までが――ッ、薬……!!! 追跡部隊を整えたらすぐに追わせて! 深追いは禁物! それと並行して、わたし達を襲った襲撃者達から薬を回収! 割れててもいいから、それらしいものを全て回収して!! 急いで――」
感慨に耽ったのも束の間、会議室に飛び込んできた定道によって襲撃の事実が伝えられ、ササラと十蔵はすぐに行動に移したものの、追跡は失敗に終わる。薬品の回収も、下火蔵が手にしていたような完璧な形で残っているものは無く、回収できたのは注射器の破片ばかりであった。
全てが終わった後の解放感による気の緩みを狙って行われた襲撃は多くの負傷者を出したものの、不幸中の幸いか、死者はゼロ名。
結果、虎鐘と薬品の二つが人形使いにとって不利になるものであった事だけを示唆するかのように、最後の襲撃は爪痕を残していった。
その後、間もなくして、一定の力量を認められた倶利伽羅には適性に合った新型霊具が支給される事が決定。倶利伽羅全体の底上げが図られ、虎鐘が残した人形使いへのヒントを頼りに、北と東の連合部隊によって捜索を開始。広範囲を効率的かつ安全に捜索できるようになったお陰で、着々と人形使いへと続く道を進んで行くのであった――。




