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十六話 デートのお誘い九先輩

「いらっしゃいませ」

 テストも終り、5月も終りが近い週末の金曜。今日はバイト先のカフェで労働に勤しんでいる。久しぶりの業務をこなし、ようやく客足が減り、一息ついていたところに九先輩がやってきた。先輩は俺のバイトの面接の日から頻繁に通ってくれる常連になっていて、バイト中、空いた時間によく話し相手になってくれている。


「今日はどうする?何時ものコーヒーだけでいい?」

「今日は……ちょっと甘いものが食べたいのでお願いするわ。ケースケさんのお勧めで」

「お勧めですと、アメリカンチェリーのタルトとかいかがです?」

「じゃあそれをお願いするわ。コーヒーはいつもので」

 注文をとり店長へ伝える。この店ではバリスタの正式資格を持っている店長かその娘がコーヒーを煎れてくれる本格派だ。ケーキなどのスイーツは一部を覗き、付き合いのある知り合いの店から仕入れているそうだ。軽食などはバイトの仕事で、俺も最近は厨房を任されている。コーヒーの準備ができると、タルトと一緒に先輩の元へ運んでいく。


「お待たせいたしました」

 彼女の席へと品物を置く。

 

「ありがとう。今はお仕事、時間少し平気そうかしら」

「はい、他の客もカウンターに一人だけなので、暫くは大丈夫ですね」

「では、少しお話ししましょう?」

 だいたい今くらいの時間になると客足が少なくなるため、暇ができたときはこうして、休憩がてら先輩と少しおしゃべりを楽しめるのだ。



 しばらく他愛も無い会話をしていると、タルトを食べ終わった先輩が、少し緊張した表情で、問いかけてくる。

「ケースケさん、先月のお礼のお話。覚えていますか?」

「先月?何かありましたっけ?」

 すぐに思い出せず聞き返してしまう。


「ほら、私が変な男性二人にナンパされてたところを格好よく助けてくれたじゃないですか」

 ああ。言われて思い出した。確かに面倒そうなのに絡まれているところを止めに入った気がする。


「思い出しました。ただそんな格好いいところなんてなかったと思いますが...」

 たしか逃がしたあとは、ただ殴られただけで、特に良いところはなかった気がする。警官がきて、ナンバ男どもは逃げていった。

 

「いえ、少なくとも私には、格好よく見えましたよ」

 そんな風に言われると、嬉恥ずかしといった感じで俺は少し照れてしまう。可愛い子に褒められると悪い気がしない。


「それで、ずっとお礼がしたかったのですが、生徒会とか勉強とかで色々忙しくて、結構時間経ってしまって...あの、突然で申し訳ないのですが、今週の...明後日の日曜日って空いてたりしませでしょうか」

 今週の日曜?多分なにもなかったと思う。


「多分空いてたと思います」

「でしたら、ここ、一緒に行きませんか」

 そう言うと彼女は鞄から封筒を取り出し、その中から一枚の紙を出してこちらに渡してきた。


「えと、これって遊園地のチケット?」

 彼女ぎ渡してきた物は、少し遠いが電車で行けなくはない程度の場所にある、わりと大型である遊園地のチケットだった。

 

「じ、実は妹と行く予定だったのですが、行けなくなりまして、一緒にどうかなーと思いましてですね」

 なんか先輩にしては言葉が変だが、これはデートのお誘いだろうか。


「俺なんかとでいいんですか?別の日に妹さんと行ってきたほうが・・・」

「う、あ、いえ!それは大丈夫で、何というか、とりあえず妹は行かないと言ってたと思うので、大丈夫!あっ、それにこのチケット日曜までが有効期限だから!」

 そ、そうなのか?なにか先輩のテンションがいつもと違う気がするが、まぁいいか。先輩が大丈夫というなら大丈夫なんだろう。


「わかりました。是非一緒に行かせてください。あ、流石に高いものなのでお金は払いますよ?」

「い、いえそれではお礼になりませんので。気にしないでください」

 む、流石に悪い気がするがここで粘っても仕方がない。当日の電車代とか食事代とかで少しづつ返そう。

 あまり長く仕事休憩しているわけにはいかないので、待ち合わせの場所や時間などの話はまた、後で連絡することにした。

 

「ではそろそろ今日は帰ろうと思います。明後日、楽しみにしていますね」

 そういって先輩は帰っていった。お礼とはいえ、先輩からのデートのお誘いである。急ではあるが非常に楽しみな予定ができてしまったようだ。

 カウンターの方でにやにやとした店長の顔が見えるが、見なかったことにする。



 その日のバイトを終え、帰宅。疲れたので寝ようと思っていたところでスマホがなる。碧とナナからのメッセージのようだ。今日はテスト終りの疲れと、バイト疲れとで既に眠くなってしまっていた俺はそのメッセージをみないで寝ることにしてしまった。このときちゃんとメッセージをみて返信していれば。日曜のデートが面倒な事にはならなかったのに。



ーーーーメッセージーーーーー


ナナ≫お母さんから遊園地のチケット貰ったんだけど。よかったら日曜一緒に行かない?

ナナ≫寝ちゃったんかな?日曜暇だーって言ってたから平気だよね?

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