十四話 春の嵐と碧と先生と
先生のスーツを浴槽に干す。うちの風呂は浴室乾燥が着いている。母さんが俺の家事の負担を減らすためにと、洗濯乾燥機もそうだか取り付けてくれた。雨の日でも洗濯が出来るので非常に助かっている。
「先生、良かったら今日泊まっていって下さい。この嵐だと、鍵屋ももう呼べないですよね。」
俺は先生に提案する。まぁこの嵐のなか帰れと言うのは酷だと思うので、お泊まりの提案をするしかないと思ってのことである。この前のお泊まりもそうだか、正直最近の先生はエロいからかい方を嬉々としてやっている節があり、青少年的には非常に厳しい。主に理性と世間体が厳しさの対象だ。
「そうね、泊めてくれると助かるわ。ただ明日の服どうしようかしら」
泥にまみれたスーツは染み抜きの応急措置をしたとはいえ明日着るのは無理だろう。明日の早いうちにクリーニングに出した方が良い。
「朝早く起きて服を着替えに帰るしかないわね。起きれるかしら」
母さんの服を貸す、と言うのも頭に浮かんだのだが、俺の母さんはとても痩せている。どこがとは言わないが。先生がぼん、きゅっ、ぼんであれば、きゅっきゅっきゅっとモルモットの声のような体型が母だ。
「そうですね、それしかないかと。俺も起きるようにしますから、頑張るしかないですね。そういえば、先生はお酒飲んでたみたいですけど、夕飯は食べますか?」
元々食事の用意をしようとしていたことを思いだし、訪ねる。
「お願いしてもいいかしら。あまり食べてないからお腹はペコペコなの」
お腹を両手でさするような動作をしながら答える。それを聞き、急いで食事の支度を開始した。
◇
料理を進めていると、再びインターホンが鳴る。ドアを開けるとびっしょりと濡れた碧が立っていた。
「うわっどうしたんだ碧」
「窓、割れた」
マジか。多分この嵐で窓に何か飛んできたとかで、家の窓が割れてしまったのだろう。碧の家は2dKのアパートだ。どの部屋の窓が割れたか知らないが、この嵐だ。多分もう片方の部屋に逃げ込んでも吹き込んでくる雨と風の音で辛かったのだろう。
「部屋、両方だめ」
想像より最悪の状態だったようだ。とりあえず風邪を引いてしまうから風呂にいれなければ。と、料理が途中だったのを思い出した。そろそろ鍋を見てないとまずい。
「ちょっとまっててな」
リビングに向かい、先生に事情を話し、碧を風呂に入れて貰うようにお願いする。浴室乾燥機の切り方を教え、着替えを渡し後は任せる。キッチンに戻り、火を見に戻る。玄関の方から声が聞こえてくる。
「かずみん?なんでいるの」
「ちょっと事故でお家の鍵が壊れちゃって、ケースケちゃんの好意で泊めて貰うことになったのよ」
「むぅ、そうなんだ。」
「風邪引いちゃいけないわ。お風呂に行きましょう」
声が聞こえなくなる。無事風呂へ入ったのだろう。食事の用意を三人分に変更し、準備を進める。今日のメニューは少し季節外れだか、お鍋だ。元々数人分の料理を作る予定がなかったので、とりあえず家にある材料をぶちこんで鍋に。ぱっと数人分作るには鍋が簡単でいい。簡単とはいえ、鍋だって、つけタレや具材など簡単なネタを自作することで、個性を出すことだって出来るのだ、戻ってきた先生にも手伝って貰い、リビングで食事の準備が出来たころ、碧が風呂を上がっててきた。
「ん、お鍋美味しそう」
「本当、美味しそう。日本酒がほしいわぁ」
先生はそう言うと思って、母さんのお酒を少しお出しする。
「あら、結構いいお酒みたいだけと、いいのかしら?」
「母さんもたまにしか飲まないですし、大丈夫ですよ。手に入らない銘柄でもないので、また買えば良いですし」
酒のことはよくはわからないが、少なくともこれは近所のスーパーで買ってきた、どこにでもあるようなものだったはずだ。
「ありがとう、お母様にも今度ちゃんとお礼も言わないといけないわねぇ」
まぁ母は多分次帰ってくるのはお盆の頃だと思うので、まだ大分と先だ。
3人で食事をしながら他愛もない会話を続ける。
「そういえば、碧ちゃんもお泊まりするのよね?私たちどこで寝ればいいかしら」
「布団があるのは俺の部屋か、母さんの部屋だけだから好きな方を二人で使ってくれて大丈夫ですよ。俺はリビングで寝ますから」
「うーんお母様の部屋とかお布団を勝手に使うのは気が引けてしまうわねぇ。家主のケースケちゃんをリビングで寝かすのも」
碧も頷き同意している。
「えっ。じゃあ二人とも俺の部屋で寝ます?二人が良ければそれでいいと思いますけど。そうしたら俺が母さんの部屋で寝ますし」
「ケー君も一緒に寝ればいい」
ぶふっと、びっくりして吹き出してしまった。流石に碧と一緒に寝るのはまずい。先生とはまだ年上の大人相手だから、まぁいいか、見たいな気持ちでいれるが、流石に同年代はまずい。いくら碧を妹みたいに見ているといっても、間違いが起きないとは、とてもじゃないが言えない。
「あら、碧ちゃん。流石に教師として若い男女が一緒に寝るのは許可できないわよ」
「かずみんは一緒に寝た、ずるい」
「うっ、ほら私は大人だから、いいのよ、うん」
「教師と生徒」
「うぐっ、それはずるいわ碧ちゃん・・・」
二人は小声で話だし、良く聞こえないが、何だか険悪なムードになっている気がする、方針決めて、とっととこの話題を終わらせよう。
「よし、わかった。家主命令です。二人は俺の部屋で寝てください。俺は母さんの部屋で寝ます」
こうして面倒そうな話を切り上げ、俺たちは残りの食事を続け、時間が過ぎていく。
あぁ今日はもうテスト勉強無理そうだ。




