十一話 先輩とナナと+α
朝のホームルーム前、隣の席のナナに話しかけられる。
「ケースケ、朝めっちゃ噂になってたんだけど、碧ちゃんと付き合ったの!?」
今朝の碧との腕組み通学は、案の定噂になっていて、ナナの耳にも届いたようだ。
「いや付き合ってないよ。俺もよくわからないんだけど、今朝碧が突然腕組みたいって言い出して、というか問答無用で碧がしがみついてきたというか。恥ずかしいんで断ったつもりなんだけど、断れなかったというか・・・」
「なにそれ。意味わかんなーい」
その通りだと思う。いや、俺も恥ずかしいから断ったんだよ。断ったつもりではあったんだよ。ただまぁ勢いに押されたというか、強くは断れなかったというか。
「ふーん。碧ちゃんの方から腕組んできたんだ。そんなに積極的だったけあの子」
あんな事は今までは無かった。元々そんなにスキンシップをするような性格でもないはずだ。今朝のことがいったい何だったのかは、本当によくわからない。
「ふーん…」
ナナは何か呟いているようだが、教室の喧騒で良く聞こえなかった。チャイムがなり朝のホームルームが始まり、おしゃべりは終了した。
「あっケースケ、今日私達と一緒に昼食べない?」
昼休み、ナナが話しかけてくる。ナナ達、というのは……名前は忘れたが、ギャル2とギャル3の高校からナナがよく一緒にいる友達のことだろう。ナナも合わせギャルトリオはうちらの学年で有名になってきている。この子達、目立つからね。
「あーごめん、俺、最近生徒会の仕事手伝いながら生徒会室で昼食べてるんだよね」
一緒に行っても九先輩は歓迎してくれるだろうけども、少なくともギャル2と3は興味ないだろう。
「えーそーなん。手伝えらーい。よければーうちらもてつだうよーぅ?」
ギャル3が間延びした声で言う。この子の声は舌っ足らずな上、妙なテンポで微妙に聞き取りづらい。というか、マジか。昼休みに仕事とか興味ない人種だと思ってた。ギャルへの偏見だな。反省。
「えー面倒そう。私は応援する係でヨロシク!」
ギャル2は想像通りだったようだ。人それぞれってことだね。
「アタシも手伝えることあるなら手伝うよー」
ナナも手伝ってくれるらしい。うーむ折角の親切心を無駄にするのはよくない気がする。手伝ってもらうことにした俺は彼女達を連れて生徒会室に向かう事にした。一応行く前にスマホでメッセージを先輩に送っておく。
鶏≫うちのクラスの女子3人が生徒会の仕事手伝いたいって言うのでこれから連れていっても良いですかね。
シナ≫お手伝いは歓迎します。待ってます。
少し返信まで間があったが、連れていっても良いようだ。騒がしくなってしまいそうで申し訳ないが、とりあえず生徒会室に向かおう。
「失礼します」
ノックをし、生徒会室へと入出する。続いてギャルトリオも入ってくるのだか、先輩は3人を見て固まってしまっている。
「ちーす。二黒 星でーす。昼飯がでらお仕事とやら手伝いに来ましたー。私は応援たんとーでーす」
ギャル2が先輩へ自己紹介を始める。そうだ、たしかアカリンって呼ばれてたわ。黒土さんというらしい。今度こそ覚えよう。
「えーとー、白金 六でー。おてつだいしまーす」
ギャル3は白金さんと言うらしい。
「アタシは赤西 七。手伝いに来たけど何するかは聞いてないんだよね」
ナナが挨拶がてら問う。最近俺と先輩で対応していた仕事について、そういえば何やっているか話していなかった。先輩を見ると、気を取り戻したのか「見た目で判断しちゃいけないよね。うん」などと、小さい声で呟いているのが聞こえた。生徒会室に金髪、茶髪のギャル3人とか、アンマッチもいいとこだものね。むしろ注意喚起で呼び出されたのかと考えた方が受け入れやすい光景である。うん、確かに見た目で偏見はよくない。二黒さんと白金さんはよく知らないけど、少なくともナナは真面目ないい子だ。
「ごほんっ。私達は今、来月末に実施予定の臨時生徒会長選挙の準備を行っています」
本年度のうちの学校では、6月中に立候補者による生徒会選挙活動が行われ、同月中に新しい生徒会長を決定する予定らしい。本来であれば生徒会選挙は12月に行われるイベントだそうだが、今年の生徒会長が急遽海外留学することになり、生徒会活動が出来なくなってしまったため退任。急ぎ新しい会長を決めなければいけない、ということらしい。本来は選挙の準備は当代の生徒会長主体で行うらしいのだが、いないので副会長の九先輩が作業を進めているのだ。他の役員も手伝ってくれているが、基本は放課後である。
余談だが、放課後だと俺はバイトがあることが多く、実は先輩以外のメンバーをまだ見たことがなかったりする。
生徒会の生役員が放課後に作業しているのに、昼休みもわざわざ作業している理由として、先輩が生徒会長に立候補するためその準備も併せて行っているためだ。
これは先輩の個人的なことになるため、現役員はノータッチ。本来は友人などの支援者が準備を手伝ったりするらしい。先輩の場合、支援者を募ると山のように殺到しカオス化するため、ギリギリまでひっそりと準備を進めた方がよい、と他役員に言われたらしい。
そんな中、先輩から何故か手伝ってくれと頼まれてしまい、断る気の無い俺は、手伝いを請負った感じである。
そんな感じの説明を俺と先輩で3人にしつつ、ひとまずず俺たちは昼食を済ませることにした。
弁当を開け、食べようとしたタイミングでスマホが震える。見ると碧からのメッセージだった。
みどり≫お昼、教室にいない?生徒会室?
珍しく昼に教室に訪ねてきたのだろうか。碧は高校に入ってからは新しく出来たクラスの友人と昼食をとっていた。何か俺に用があったのだろうか。以前に生徒会室で仕事を手伝いながら昼を食べてるって教えたことがあったからか、生徒会室に居ることは当たりがついているようだ。俺は肯定の返事を出そうとしたところ、先に碧からの追伸が入る。
みどり≫私も行く
どうやらこっちに来るらしい。みんなにはみどりが来ることをひとまず伝え、俺は昼飯を食べ始めた。




