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十話 恋を知らない幼なじみ

今回は主人公視点ではなく、碧視点です。

 私の名前は三東 碧。今年から海波高校に通う事になった女子高生だ。私には風見鶏介という幼馴染みがいる。彼は親が家にほとんどいない私に、小学生の頃から何かと世話を焼いてくれる。同い年ではあるが、すごく頼りになる、優しい、実の兄のような人だ。私は本当の家族のようにケー君を慕っている。

 中学三年の卒業式の日、ケー君は好きだった人に告白をして、ふられてしまったらしい。それから高校の入学式が始まるまで、彼は目に見えて落ち込み、元気がなくなってしまっていた。何て声をかければよいかわからない私は、とてもケー君が心配だったが、何も出来ずにいた。ケー君はいつも私にお昼ご飯や、日によっては朝ご飯も夕ご飯も作ってくれたりしてくれている。いつもはとても美味しい彼の料理も、元気がなかった期間は何だかしょっぱかったり、辛かったりと彼の精神状態を表しているかのようだった。

 そんなケー君だが、入学式を過ぎてから、いつものケー君に戻ったようだ。クラスが別だったので友達からの又聞きだが、どうも中学生の頃に一緒だったナナちんと仲良くなって、よくクラスで楽しそうに話をしているらしい。正直、ケー君の教室で初めてナナちんとあった時、ケー君に「中学のころよく一緒にいた赤西七だよ」と、教えられなければナナチンだと気付くことは出来なかったと思う。何というか、すごく女の子らしく、可愛くなっていて、ちょっと羨ましかった。

 少し前には海波高校のミス海波といわれている、副生徒会長の九 紫南先輩とも知り合いになったらしい。最近はよく一緒にお昼を食べながら生徒会の仕事を手伝ったりしてると、この前ケー君から聞いたばかりだ。九先輩と話しているときのケー君は、なんとなく鼻の下を伸ばしている感じで、見てるとたまにイラッとくる。

 そういえば最近かずみんの家にお泊まりしたとかも聞いた。かずみんとは北白一水先生のことだ。私とケー君の勉強をよく見てくれたすごく美人なよい先生だ。


 そんな感じで、どうも高校始まってから1ヶ月も経たないうち。彼の周りには可愛い子や美人な女性が、一緒にいることが多くなったようだ。彼が元気になったのはやはりそういう可愛い子達とよく話すようになって、新しい恋をしているからかな、などと考えてしまう。失恋には新しい恋が効くとかよく言うし。

 私は今まで恋をしたことがなく、異性を好きになる、ということが実はまだよくわかっていない。ケー君のことは好きだが、兄のような家族のようなものだと思っている。昔はよく一緒にいたせいで周りからからかわれたりもしたが、その度に兄のようなものだと、あしらってきた。彼も妹みたいなもんだ、とよく言っていたのでお互いの気持ちはあっているのだろう。高校になると、中学の頃とは比較にならないほど、周りの女の子達の恋愛に対する熱量が上がっているのをひしひしと感じていた。そんな中にいると、恋愛に興味の無かった私も、なんとなく彼氏ほしいな、とか思い始める。周りの雰囲気に流されているのは否めないが、いわゆる恋に興味がでてきたのだ。

 興味がでてきて、改めて異性について考えてみたりもした。周りのように見た目が良いからとか、スポーツがすごくできる、とかで人を好きになるのは残念ながら理解できなかった。というか、ケー君の顔はイケメンというほどではないけど、整っており、優しい目付きとシンプルだが清潔な感じの髪、身長も高くルックスは良い。勉強も今ではかなりできる。スポーツも部活をしているわけではないから目立たないが、運動神経も良いし、身体も鍛えられている。昔、シャツを脱いだケー君を見たときは、引き締められていて良い筋肉だなとちょっとだけドキッとした記憶がある。

 さらにケー君について考える。彼は家で1人な私を心配して、必要以上に身の回りの世話を焼いてくれる。そんな彼に甘えてしまい、私の家事スキルは少しも伸びないのが問題ではあるが、メンドイので仕方ない。ケー君に任せると家事は完璧だし、ご飯も下手なところで食べるより美味しいのだ。だから仕方ない。私が家事を出来ないのはケー君が悪いのだ。そういうことにしておく。そんなケー君以上の相手がいるのかと考えると、正直見つかる気がしなかった。私はケー君を異性として好きなのかと言われると、やはり違うと答えるだろう。だが、せっかくの短い青春時代だ。私だって恋がしたいし、彼氏がほしくなったのだ。彼以上の存在が見つからないのであれば、私は彼を、ケー君を好きになるべきなのではないか。そんな風に最近は考えるようになっている。


 そう考えるようになると、現状は困ったものだと気付く。何せ中学までは頼られる事はあっても、あまり女の子の人気が無かったケー君だったが、高校になってモテ期が来ているとしか思えない。周りの子は私よりも可愛かったり、美人だ。私自信も卑下する程ではないと思っているけど、彼女達と比べるとイマイチだろう。口数が少なく、無愛想なのも認識している。じゃあ愛想よくしろと言われるかもしれないけど、そこはそれ。面倒なのだ。しゃべるの疲れるし。ケー君は私の言葉の意図を汲み取って会話してくれるし、気を遣わなくて良い会話は楽なのだ。多分今後もこの性格は変わらないだろう。そんな私がケー君の彼女になろうとすると、もっと努力をしないといけないのだろう。そういう努力が苦手な私はとりあえず、できることをしようと思う。


 

「碧さん?何か・・・その、今日は距離感近くないですかね」

 ケー君の腕を抱え込むように掴み、身体を寄せる感じで私は彼と腕を組み、学校への通学路を歩いている。周りからの視線を感じ、わりと恥ずかしくはあるが、我慢できないほどではない。彼の体温を感じる距離で触れあうことは。気持ちが良く、この体勢はむしろ悪くない。


「あの、恥ずかしいし、誤解されちゃいそうだから離してくれませんでしょうか」

 困ったように彼は言う。

「イヤ」

 端的に拒否する私に、彼はがっくりと肩を落とす。彼は人に何かを頼まれると、特に女の子に頼みごとをされると断れない性格なのを、私は知っている。

 

「どうしても、嫌?」

「えっと嫌ではないけど恥ずかしいと言うか、周りからの視線が怖いと言うか」

 何やら照れながらゴニョゴニョと言っているが、後半は良く聞こえなかった。照れているケー君が可愛いなとか考えつつ、私は彼の腕を離さず、学校へ彼と一緒に歩いて行くのだった。


 彼に私を好きになってもらえれば、きっと私も男の人を好きになるという気持ちがわかるようになるかもしれないと信じて。今日からは、積極的に彼にアピールをしていこうと心に決めた日。


毎日投稿は一旦ここで終了

以降は毎週火曜、日曜で投稿予定です

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