第18話
今日はチョコレートショップの最終日。
300近いセットが用意されている。
天気も良い。無事に売り切る事が出来るだろう。
「・・・・・・。未来合ってた?」
ヨル・ヒックが低い声で言った。
「どうも、その人に缶を譲る事になるみたいです。」
アランは言った。
「・・・・・・。未来間違ってなかった。
でも、助言。勘違いだった。」
「いいえ、警戒していたおかげで今日まで無事に済んだんですよ。」
「・・・・・・。そうか。良かった。」
白いフードマントを被っているヨル。
あなたは魔族ですか?って聞いたら失礼にあたるのかな。
「あの、この前見せてもらった水晶玉は、一体何なのですか?」
「・・・・・・。これ?」
ピンポン玉くらいの水晶玉を取り出したヨル。
「それです。」
「・・・・・・。モンスターから手に入れた。」
ドロップアイテムは、食品とは限らないようだ。
不思議なアイテムを持っているから魔族と決めつけるのは良くない。
「・・・・・・。」
クルリと向きを変えたヨル。
白いマントの裾に、黒い尻尾が見えた。
「!?」
「お客様のお呼び出しをします。
アラン・ケタブリル様、アラン・ケタブリル様。
1階受付までお越し下さい。」
マリーの声がスピーカーから流れてきた。
アランはロビーに向かう。
「初めまして。」
大きな鎌を持っている人物がアランを待っていた。
「あ、あなたですね。缶が欲しいというのは。」
「私はマリッサ・リズといいます。」
「アラン・ケタブリルと申します。」
「存じ上げています。この1週間近く調べさせて頂きましたから。」
マリッサは、そう言うとゴソゴソと袋を取り出した。
「これをあなたに差し上げるので、例の缶を譲り受けたいのです。
中身は、あなたの欲しがっていた物です。」
「・・・・・・。」
「何かご不満でも?」
「いいえ。ただ、その缶をどうするのか気になって。」
アランは袋を受け取りながら言った。
「私は、魔法を研究しているのです。」
マリッサは言った。
「無限増殖魔法の仕組みを調べるため、例の缶を分解してみるつもりです。」
アランは袋を開けて中身を出してみた。
キンイロスナトカゲの彫りが入った、あの金の腕輪だった。
「なんか、勿体無い気がする!」
リンコがベガルに言う。
「なんでだ?」
「チョコレート売るだけで食べていけるんでしょ?
なんで20ゴールドくらいの物と交換するわけ!?」
「ちっちっち、わかってないなリンコは。」
ベガルが得意げに指輪を見せる。
「これはな、魔法で作られた宝石つきのアイテムなんだ。」
「だから?」
「マジックアイテムでも有り、ジェムアイテムでも有る。」
「だから何なの?」
「2つの特徴を持つんだから価値も2倍以上!」
「たいして変わらないでしょ!?」
そこへアランが腕輪を持ってやって来た。
「アランはそれ貰ったのか。」
ベガルは、腕輪を見ている。
「ジェムアイテムですね。」
「マジックアイテムでは無いのか?」
「・・・?そのような話はありませんでしたよ。」
店で前に見たときも、店の人は普通のジェムアイテムだと言っていた気がする。
「もしかして、ベガルが勝手に、そう思ってるだけなんじゃないの?」
「そうなのか!?」
「マジックアイテムは普通の人には、見分けがつかない物だからね。」
ディークが話に入ってきた。
「オレは、騙されたのか!?」
「そんなに心配なら、鑑定してもらったらどうかな?」
「いくらぐらいかかるのでしょうか。」
アランは聞いてみた。
「見てもらうだけなら、タダだと思うよ。」
ディークはそう言うと宿を出ていった。
紫の田園で、クエストをするアラン。
今日はイタチと格闘していた。
「せいやぁ!」
冒険を始めた頃と比べると、剣の扱いが上手くなったような気がする。
それなりに手際よく害獣を退治していく。
「ご苦労さん、報酬の42シルバーだよ。」
赤い帽子を被った青年が銀貨を入れた袋を持ってきた。
「いつもの髪飾りの女の子は、商人広場ですか?」
「そう、チョコレートを買いに。」
「あなたは、あの子のお兄さんですか?」
「よくわかったね。」
「似ているなと思いました。」
アランは銀貨袋を受け取った。
「では、またよろしくお願いします。」
そう言ってお辞儀をするアラン。
商人広場にて。
「やっぱり、マジック&ジェムアイテムだったんだ!」
ベガルが鑑定書を書いてもらい、小躍りしている。
「ってことは、アランよりも良い物貰ったってわけだ!」
アランのは普通のジェムアイテム。
缶の持ち主でもないのに、格上のアクセサリーを貰った事になる。
「ベガルさん、嬉しそうですね。」
アランが声をかける。
「い、いつからそこに居たんだ!?」
ベガルが慌てて鑑定書を隠す。
「私より良い物貰ったとおっしゃった時からです。」
「うわ、聞いてたのか。」
「聞いてしまいました。」
「なんか、すまんな。」
謝るベガル。
「いいえ、ベガルさんが謝る事はありませんよ。」
「そうか?」
ベガルは落ち着かないのか、モジモジしている。
「私には、ジェムアイテム1つでも、十分ですよ。」
アランは、にっこりして言った。
「みんなー!今日は大盛況だったよー!」
夜遅くになってケイトが宿に帰ってきた。
「後片付けしてたら、こんな時間になっちゃったよ。」
売れ残った箱を3セット持っている。
それをロビーのテーブルの上に置く。
「お疲れさまでした。売上の集計をしましょう。」
アランが適当な紙とペンを用意する。
「まずは初日ね。」
ランランが言った。
「最初は完売だったはずだよ。」
ディークが言う。
「1日目・・・・・・250セット・・・・・・完売。」
アランが紙に書いていく。
「2日目は300セットだな。」
ベガルが言う。
「そのうち198セット売れてるね!」
ケイトが売りながら書いたメモを見て言った。
「2日目・・・・・・300セット用意して・・・198個。」
集計作業を続ける5人。
「全部で1497セット売れたんだね。」
「5シルバーが1497セットで、7485シルバーですね。」
「箱代が全部でいくら?」
「50箱1シルバーで、1500箱使ったから・・・。」
「・・・・・・30シルバーだね。」
「7485シルバーから・・・・・・30シルバー引いて。」
「7455シルバーを5人で分けると。」
「・・・・・・。」
息を飲む一同。
「1491シルバーです。14.91ゴールドですね。」
「出店料引くと+7.91ゴールドってわけだな!」
「ちゃんと計画通りになったわね。」
「やったぁ!」
「良かったね。」
皆歓声を上げて、ハイタッチしている。
「また、機会があったら、こういうのやろうな。」
ベガルはそう言うと部屋に戻っていった。
「じゃ、皆お疲れ!」
ディークも戻っていった。
ロビーには、ランランとケイトとアラン。
「上手くいって本当に良かったわね。」
ランランが笑っている。
「ケイトさん、1週間本当にお疲れ様でした。」




